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犬をなでるだけの簡単なお仕事です  作者: maochoko
第二章 犬をなでるだけの簡単なお仕事
15/94

15 夢か現実か


本日2話目です。


 



 自宅の居間。

 布団を掛けてコタツになっているテーブルの上。

 二枚の千円札を並べて、私は纏まるはずもない思考に耽っている。


 確かに私の目の前には二千円が並んでいる。

 これが無ければ全ては妄想、都合良すぎる夢だった、と考えるだろう。


 でも、現実に私はお金を手にしている。


「どうなってるんだろう……」




 ◇




 現金を手にしたことで浮かれた私は、まるを抱いてホクホクと事務所の自動ドアを抜け外に出た。


 まるを追い掛けて走った一本道を逆に進み、突き当たりの扉を前にし、そこまできて、ふと、この不思議な場所への疑問が再び頭に蘇った。


 辺りを見回す。

 見知らぬ景色だ。

 外の風景にしか見えない。


 おそるおそる、目の前の扉を開き、中を覗く。


 ぼんやりと薄暗い十メートル四方くらいの地下室のような部屋が広がり、奥には階段が見えている。


 急にゾッと背筋が冷えて頭が冴えた。


 急いで中に入り、扉の内側に付いていた閂のような鍵を閉める。


 無言のまま階段へと進み、震える足で一段ずつ上がっていく。

 上の穴から顔を出すと、そこはやはり自宅の居間、テレビの裏だった。


 急激に襲いかかってくる違和感。

 頭の中はパニック状態。

 意味がわからない。理解できない。説明がつかない。


 とりあえず、無かったことにしたい。


 半べそかきながら、当初の予定通り穴にはマットを被せて見えなくし、テレビの位置を戻して、ベッドに飛び込んだ。


 異常過ぎる事態は私の頭にストッパーを掛ける。

 いつもそうだ。

 抱えきれない問題に直面すると、自動防御が働くように、私の思考は停止する。

 そうしないと弱い心を守れないから。


 震えながら頭まで布団を被り、現実逃避して何も考えないように体を丸めてじっとしてると、疲れていたのかいつの間にか眠っていた。




 ◇




 まるが枕元をカリカリと控えめに掘っては、「くうん」とか「わふっ」とか言ってる。


 もう、朝か。ご飯の催促だね。


「変な夢、見たなあ……」


 寝ぼけ眼で台所へ行き、まるのお皿にドッグフードとお水を入れてあげる。


 フラフラと居間に向かって、テーブルの上にどさっと置いた請求書の山を見る。


「お金が無さ過ぎて、切羽詰まって訳わかんない都合の良い夢見ちゃったんだな……」


 妙にリアルで、夢なのにしっかり覚えている。


 手持ち無沙汰に請求書を開封していくと、電気代を払わないと明後日にも電気が止まるらしい。ガスは一週間後くらい。水道も月末には止まりそう。


 財布の中身を確認。

 小銭しか無いけど、数えたら千円ちょっとはあった。全財産。


 電気代は督促の分だけでも三千円と少し。全然足りない。


 電気が止まったら、そのうち凍死するかなぁ。冷蔵庫は元々空っぽだし、テレビも見れなくても仕方ないけど。あ、でも、ご飯が炊けない。食べ物、米しか無いのに。鍋で煮ればいいか。でも、すぐにガスと水道も止まるもんなぁ。


 終わりだな……。


 追い詰められ過ぎて、他人事みたいに冷静に考えていると、ふと、床に落ちている千円札に目がいく。


 お金が落ちてる……?


 それに、この包み。……もらったお茶だ。

 え? 夢じゃなかった? え?


 再び冷静さをなくした私は、しばし答えの出ない思考の渦に沈みこむ。

 流され、かき回され、途絶え。


 テーブルの上に並べた二千円とお茶の包みを前に呟いた。


「いったい、どうなってるんだろう……」





お読みいただきありがとうございます。


やっとおかしいことに気付いた様子。

弱虫ななはこの後どうするのでしょう。


続きは19時に投稿予約します。

引き続きお楽しみください。



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