12 ミミちゃん
本日2話目です。
見知らぬ私の登場に、興奮したり、気を荒立てるような子はいなかった。
この部屋の子たちは穏やかな性格って言ってたっけ。
犬だらけの部屋に、私の方が興奮してると言ってもいいかもしれない。でも初対面だし、怖がらせないように、ゆっくりと少しずつ距離を縮めてみよう。
一番手近なところ、すぐ側のソファの上で丸くなっている、白と黒の長い被毛で鼻の潰れた顔が愛らしいワンちゃんにそっと近付く。
私の姿勢を低くして目の高さを合わせ、少しだけ見つめてみる。
黒目勝ちなクリクリのお目々が可愛い。この子は狆かな? なんだか気品が漂っている気さえする。
手の甲を上に向けて、少し離して鼻の前にそっと手を伸ばしてみる。
フンフンと匂いを嗅いでくれた。
ゆっくりと尻尾が振れる。
フンフンフンと興味を示してくれたように嗅ぎ続け、ペロリと手を舐める。あったかい。
「ふふふっ、まるの匂いがする? こんにちは、可愛いね。触ってもいいかな?」
もう少し手を近付けて、首の辺りをそっと触れる。パタパタと尻尾が揺れて、ワンちゃんの方から近付いてきてくれた。
首には細い鎖のようなものが掛けられている。
首輪というよりアクセサリーという言葉がしっくりくる。
そこにはドッグタグなんだろうけど、綺麗な石の填まったペンダントヘッドと呼べそうなものが付いていた。
「これが認識票かな? カードをかざすと名前が見れるんだっけ」
怖がらせないように首から提げたカードを近付けると、ホログラムのようなものがワンちゃんの頭上に現れた。
「うわっ、またハイテク!?」
そこには『ミミ♀ 8歳 おとなしい。大きな音が苦手。ウェットフードを好む。食後はお顔を綺麗に拭いてあげるように』などといった情報が記されていた。
「ミミちゃんって言うの? 私はななだよ。よろしくね」
首から背中へと撫でていく。
頭を擦り付けてきたので、頭も優しく撫でてあげた。
私がミミちゃんを撫でるにつれ、ホログラム内の円グラフのようなものが動いていき、だいたい一分くらい撫でたところで一周してピロンと音が鳴った。
「一匹につき、このくらい撫でてあげれば良いってことなのかな?」
よくわからないので、別の子でも試してみよう。
もう一頻りだけミミちゃんを撫でて、「またね」と声を掛けて傍を離れる。
ミミちゃんは、また丸くなったけど、尻尾はまだゆっくりと揺れ続けていた。
さて、次はどの子にしようかな?
近場にいる子たちを見ると、ミニチュアダックスフンドと思われる一匹が、すでに尻尾をプルプル、ピコピコと揺らしている。
うん、この子にしよう。
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