10 案内された先は
本日2話目です。
「それでは、ご案内いたします。こちらへどうぞ」
まるを抱いたちょう子さんに促され、エントランスの奥にある扉をくぐる。駅の改札に似たゲートがあって、そこでもカードをかざすように言われた。
ゲートを通ると小さなホールになっていて、足元にライン状に光が灯っている。ラインはホールに並んで設置された数台のエレベーターのうちの一つへと続いていた。
「足元の案内に従って進んでいただければ、依頼主様のところまで誘導されます。一緒に行ってみましょう」
言われるがままに一台のエレベーターに近付くと、自動でドアが開き、乗り込むと行き先のボタンなども無く、勝手に動き出した。
「セキュリティにより、目的の場所以外への移動はできなくなっております。もちろん、許可無く出入りすることも不可能です。カードが無いと移動もできませんので気を付けて下さいね」
しばらくしてエレベーターは止まり、再びドアが開く。
「では、参りましょう」
私たちはエレベーターを降りた。
また足元の光を追って長い廊下を進む。指示された通り進んでいき、壁の前に立つと顔を上げた。
扉がある。
そこでもカードをかざすと扉が開き、中からメイドさんが出てきた。
「ギルドの職員です。お試しの会員を案内して参りました。本日は一時間のみとなります。小型のお相手にしていただけますようお願いします」
「引退した従魔の慰問の依頼ですね。ご紹介ありがとうございます。承知しました。小型従魔のお相手をお願いさせていただきます」
ちょう子さんは自分のカードを見せるようにして、メイドさんと会話をしている。
私はと言えば、「ここは最新式の最高級タワーマンションか何かだろうか? 私が引きこもっていた間に、今の技術ってこんなに進んでいたんだろうか?」なんて驚きの連続に戸惑っていた。
「では、ななさん。私はここまでです。先に事務所に戻っていますので、後はこちらの方の指示に従って下さい。帰りも同じように足元の誘導光に沿って帰ってきて下さいね。まるちゃんはお任せ下さい」
未だポカンと腑抜けている私を置き去りに、ちょう子さんとまるは帰っていってしまった。
ハッとする。
理解できないことが多すぎるが、すでにお仕事中だ。ま、まずは挨拶。
「佐藤南那と言います。今日はよろしくお願いします」
「ななさんですね。こちらへどうぞ。あ、靴のままで大丈夫です。ここはワンちゃんたちだけのお屋敷ですから。みんな退屈してますので、はしゃいじゃう子も多いと思いますが、犬は平気なんですよね。相性などもありますし、初日ですから、無理せず接しやすい子のお相手をしてあげて下さい」
リアルメイドさんって本当にいるんだなあ、とドキドキしながら彼女の後を付いていった。
お読みいただきありがとうございます。
明らかに不自然?
舞い上がってる主人公はいまだに流され中。
ちょっと世間知らず過ぎて心配になった方は、応援よろしくお願いします。
明日も引き続きお楽しみいただけましたら嬉しいです。