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第7話 「華麗なる弓使い、キジカゼッッッ!!!」

 前回までのあらすじ! 桃太郎の鬼退治の旅に同行することになったイヌマル! そんなわけで早速黒田城の城下町へと赴いた2人は、鬼の行方について聞き込みを開始した! しかしなかなか情報が集まらず、途方に暮れる桃太郎とイヌマル! その時、彼らに声がかけられた!











「なあ、そこのお二人さん。鬼を探しているのか?」


「……んッッ???」


「なんだぁ?」


 突如聞こえてきた女性の声ッ! 声がした方向へ顔を向けると、そこには若い少女が建っていたッ!


 髪は透き通った緑色で、腰まで伸ばしたそれをポニーテールでひとまとめにしているッ! 全身には動きやすそうな皮鎧が装備されており、スリムながら筋肉質な体型だッ!


 “この時代に緑色の髪をした日本人がいるわけない”と思う読者もいらっしゃるだろうが、それは偏見だッッッ!!! 江戸時代にも緑髪のポニーテール娘ぐらいいるッッッ!!!


 そしてさらに特徴的なのは、背中に担いだ木製の大弓ッ! 女性が扱うにはあまりにも重いであろうその弓を、彼女は軽々と背負っているッ!


「誰だァ? てめぇ」


 怪しい少女の登場に、思わず敵意をむき出しにするイヌマルッ! しかし彼の鋭い眼光に一切ひるむことなく、少女は凛とした表情で口を開いたッッ!!


「私の名はキジカゼ! この街で狩人として生きている者だ!」


「ほう、狩人か……ッッ!! それで、俺たちに何の用だッ?」


 桃太郎が尋ねると、キジカゼと名乗る少女は険しい表情で腕を組んで続けるッ!


「鬼が今どこにいるか知ってる。多分、あなた達の助けになれるわ!」


「何!?」


 イヌマルは驚愕した!


「どこにいるんだよ、教えてくれ!」


「教えてもいいけど、1つだけ条件がある。私も連れて行って」


「……危険だぞッッ!!」


 冷静に返す桃太郎ッ!


 するとキジカゼはコクリと頷き、


「望むところよ!」


と答えたッ!











 桃太郎とイヌマルは、少女に連れられるまま黒田城の城下町を後にし、そこから西へ数キロ行ったところにある森に到達した。


「なあ、キジカゼ。聞いてもいいか?」


 鬱蒼と木々が生い茂る森の中を歩きながら、イヌマルが声を上げる。


「何かしら?」


「2か月前……町が鬼の襲撃を受けた時、お前はどうしてたんだ?」


「もちろん、この弓で戦ったわ」


 キジカゼは、背中に背負った大弓を指さしながら言った。


「でも、全然歯が立たなかった。鬼は、あなた達が思っているよりも強力よ」


 桃太郎とイヌマルは、ここに来るまでの道中で自分たちが鬼退治の旅をしているということ、そしてまだ鬼と直接戦ったことはないということを彼女に説明していた。


「勝てないと分かった私は、悔しかったけど逃げたわ。でもそれで終わるほど私はやわじゃない。襲撃の後、住処に戻っていく鬼たちの後をこっそりと尾行したの」


「なるほどな。だから鬼の住処を知ってるってわけか」


「ええ。私は生れてから今日にいたるまでの18年間、ずっと狩人として生きてきた。息をひそめて獲物を尾行するのは、得意中の得意よ」


 自慢げに語るキジカゼ。若干18歳にして鬼と戦ったという彼女の存在は、桃太郎たちにとって頼もしいことこの上ない。


「でも、流石に私だけで鬼の住処に奇襲を仕掛けるのは無謀だから、あんた達みたいに協力してくれる人をずっと探していたのよ」


「なるほどなッッ!! だからあの時声をかけてきたのかッッ!! よし、じゃあ一緒に頑張ろうッッ!!」


 するとキジカゼは、コクリと頷いた。


「ええ。私の住む街を襲い、めちゃくちゃに破壊していった鬼たちに、仕返ししてやるわ。どんな手を使ってもね」











 それから数分、彼らは黙々と獣道を歩んだ。


太陽の木漏れ日が降り注ぐ、静かで美しい森林。鬼という凶悪な妖怪がここに住んでいるなどとは、かけらも想像できない。


 すると先頭を歩くキジカゼが、突然足を止めた。つられて桃太郎とイヌマルも足を止める。


「……どうした?」


 イヌマルが声を潜めて聞くと、彼女は不意に前方を指さした。


「……あそこよ」


 小声で言う彼女の指の先には、洞窟があった。巨大な岩壁の真ん中にぽっかりと開いた、真っ暗な空間である。


「あの中に、鬼がいンのか?」


「ええ、そうよ」


「で、どうやっておびき出すッッ???」


 するとキジカゼは、慣れた手つきで懐から一本の矢と火打石を取り出した。


「この矢は、先端に油が塗ってある。だからこうすれば……」


 そう言って、地面に置いた矢じりの上で火打石をカン、と打ち鳴らすキジカゼ。迸ったかすかな火花が油のたっぷり塗られた矢じりにつき、一瞬で着火した。


「おお、見事なもんだぜ」


 感心したように顎をさすりながら言うイヌマル。


 キジカゼは大弓を構え、火のついた矢を素早くつがえた。そして息を大きく吸いながら力強く弓を引くと、洞窟に狙いを定める。


「……!」


 次の瞬間。シュン、という風を切る音とともに矢は打ち出され、一直線に洞窟の中へと入った。


 ──そしてッ!






 ドカーーーンッッッ!!!






 洞窟の中で、激しい爆発が起こったッッ!! 爆音に驚いた木の上の小鳥たちが一斉に飛び立ち、洞窟の中からは黒い煙がもわもわと吹き出し始めるッッ!!


「言い忘れてたけど、あの矢じりは中に火薬が仕込んであって、衝撃で爆発するようになってたの」


「そういうのは先に言えよ! びびって漏らすかと思ったじゃねぇか!」


 イヌマルは涙目で訴えたッ! 彼は意外とビビリであるッッ!!


 するとその時、洞窟の中から激しい唸り声が聞こえてきたッッッ!!!






「ウグオォォォ~~~!!!」






 腹の底を震わせるような、恐ろしい重低音の唸り声ッ!


「間違いない。この声は鬼よ」


「よし……来るぞ皆、構えろッッッ!!!」


 桃太郎が鞘から刀を抜きながら言うと、イヌマルは一瞬で表情を切り替えて臨戦態勢に入ったッ!


 キジカゼも再び矢をつがえて、いつでも攻撃できるように準備しているッ!


「……あれが、鬼か……ッ!」


 煙の吹き出す洞窟の中から、赤い肌をした全長2.5メートルほどの巨人が1体、激昂しながら飛び出してきたッ!


 頭には立派な角が生えており、その目は怒りに燃えているッ! 上半身は裸、下半身は白いふんどしのみというワイルドな恰好をしており、その肉体は筋骨隆々ッ!


「おいおい、今からあんな恐ろしい奴と戦うのか? まったく、生きた心地がしねぇぜ!」


 しかしイヌマルの顔は、言葉とは裏腹に楽しみで仕方がないといった雰囲気だ!


「さあ2人とも、準備はいい?」


「応ッッッ!!!」


「もちろんだ! やってやる!」


「それじゃあ……行くわよ!」


 そう言うのと同時に、キジカゼは鬼に向かって矢を放ったッ! それを合図として、桃太郎とイヌマルが威勢よく走り出すッ!


 ついに、桃太郎たちが鬼と激突するッッッ!!!


 次回、「桃太郎vs鬼ッッッ!!!」に続くッッッ!!!

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