第5話 「激突、桃太郎vsイヌマルッッッ!!!」
前回までのあらすじ! 鬼に襲われた黒田城の城下町を目指す桃太郎は、道中とある村に辿り着いた! なんとそこには闘技場があり、男たちが最強の称号を手に入れるために闘っていた! いてもたってもいられなくなった桃太郎は闘技場に乱入! そして、イヌマルという男と闘うことになった!
「……」
「……ッッ!!」
ファイティングポーズをとったままにらみ合う2人ッッ!!
イヌマルはボクシングの構えッ! 桃太郎は中国拳法の構えッ! どちらも隙がなく、まさに一触即発といった雰囲気であるッッ!!
「……ふんッッ!!」
先に動いたのは桃太郎であったッ! その身にまとったピンク色の着物を風にはためかせ、猛烈な勢いで相手の眼前へと迫るッ!
「はっ!」
対するイヌマルも負けてはいない! タイミングを冷静に見計らい、迫る桃太郎の顔面にカウンターパンチを繰り出したッ!
「武ッッッ!!!」
桃太郎は体をねじり、そのカウンターを紙一重でよけるッ!
「やるな!」
そう言うとイヌマルは地面を蹴って後退し、桃太郎と距離をとったッ! この軽快なフットワークはまさにボクシングの強み!
(こいつ……なぜ空手着をしているのにボクシングを使うのだッッ???)
桃太郎の疑問に対する答えは、次の瞬間に明かされたッッ!!
「せいっ!」
ズドンッッッッッ!!!!!
驚くべきことにッ! 蝶のように優雅な足さばきで桃太郎の懐へと入り込んだイヌマルは、突如構えを変えて空手定番の技“正拳突き”を放ったッッ!!
「なッッッ!?!?」
度肝を抜かれた桃太郎ッ! 相手の正拳突きは彼の腹筋に直撃し、強烈なダメージを与えてきたッッ!!
それを見た観客たちが一斉に沸く!
「でたーーー!!! イヌマル得意の“構え変え”だ!!!」
「あいつはボクシングと空手、両方のスタイルを柔軟に変えて闘うんだぜ!」
「だから対応するのが難しい! これがイヌマルの強み!!」
(そういうことか……ッ!)
観客たちのやけに丁寧な解説を聞いて納得する桃太郎! ボクシング特有の軽快な“動”の動きと、空手特有の安定感ある“静”の動きッッ!!
全くテンポの違う2つの動きを変えて襲ってくるため、攻撃のリズムを掴むのがあまりにも難しいッ!
するとイヌマルはいたずら小僧のようにニヤリと笑い、
「そういうこと。俺は空手を親父から教わり、ボクシングを我流で会得した。この2つの武術を切り替えながら闘う俺に、“敗北”の二文字はありねぇ!!」
と言ったッ!
そしてボクシング特有の軽快なステップで再び桃太郎の眼前へと迫る!
「フンッ!」
拳を繰り出して応戦する桃太郎ッ! イヌマルは頭を下げてその打撃をかわすと、ボディブローを放ってきたッ!
ドシンッッッ!!!
「うぐ……ッ!」
ボディブローがクリティカルヒットし、桃太郎は思わず悶絶したッ! 鋼のような強度を誇る筋肉の鎧をもってしても、イヌマルの打撃によるダメージを完全に防ぐことは不可能ッ! 強烈な衝撃が、分厚い筋肉の壁を通り越して内臓にじわじわ負荷を与えてくるッ!
さらにイヌマルはその場で両足を開いて空手の基本的な構えを取ると、そこから一歩踏み込みつつ正拳突きッ!
「させるかッ!」
桃太郎は驚異的反射神経で後ろへ跳び、攻撃を免れたッ!
(ボクシングと空手とでは攻撃のリズムがまるで違うから、動きが読めない……ッッ!! 一体俺はどうすれば……ッ!)
相手としっかり距離をとりつつ、この状況の打開策を必死に思案する桃太郎ッ!
「あきらめな、桃太郎とやら! お前じゃ俺には勝てねぇよ!」
挑発するように言ってくるイヌマルッ! 果たして、桃太郎はこのまま負けてしまうのだろうかッ!
「いいや、そんなことはない……ッ!」
そうッ! 桃太郎が敗北るなどありえないッッ!!
彼はおもむろに腰を低く落として両腕を大きく広げると、深く息を吸ったッ!
「スゥーーー……ッッッ!!!」
冷静に息を整え、全身から紫色のオーラを放出させ始める桃太郎ッ!
「……なんだこれは!? 妖術か!?」
「いいや。これはれっきとした中国拳法の技の1つ。その名も“陰の呼吸”ッ!」
「あぁん? いまさらそんな小細工、無駄なんだよ!」
再びボクシングの構えに切り替えて、ダッシュしようとするイヌマルッ! だがその時、桃太郎の全身を包むオーラが紫からオレンジに変わったッ!
「!?」
危険な雰囲気を感じ取り、イヌマルは即座に足を止めるッ!
「スゥーーー……ッッッ!!! これが……“陽の呼吸”だ……ッ!」
深呼吸をしながら言う桃太郎ッ!
そして──次の瞬間ッッ!! 桃太郎はイヌマルの背後に瞬間移動したッ!
「何ィ!?」
慌てて振り返るイヌマル! だが時すでに遅しッ!
全身からオレンジ色の覇気を放つ桃太郎は、イヌマルの背中に強烈なパンチをめり込ませていたッッ!!
「ウグワァァァーーー!!!」
イヌマル、その凄まじい衝撃に耐えきれずノックアウトッ! 地面にドサリと倒れこみ、起き上がることができなくなったッ!
「な、なんてパワー……だ……!」
そしてイヌマル……気絶! 圧倒的気絶ッッ!! 闘技場を囲んでいた観客たちも、開いた口が塞がらないといった感じで呆然としているッッッ!!!
ここで、読者の皆様に説明しよう! 桃太郎が今行っていたのは、“陰の呼吸”と“陽の呼吸”であるッッ!!
(※陰・陽の呼吸……中国に古来より伝わる、陰と陽、2つでセットの特殊な呼吸法。まず陰の呼吸で周囲からマイナスのエネルギーを吸収し、それを陽の呼吸によってプラスのエネルギーへと変換させ、身体能力を一時的に強化させる。この技に科学的根拠は一切なく、2019年の現在においても未だに研究が行われている──世界童話出版「呼吸、その神秘の世界に迫る」より抜粋)
「楽しかったぜッ! またやろうや、イヌマルッッ!!」
桃太郎が仁王の形相でそう言った次の瞬間ッ! 凍り付いていた周りの観客たちが、一斉に歓声を上げたッッッ!!!
「「「うおぉぉぉーーーーーッッッッッ!!!!!」」」
桃太郎vsイヌマル、決着ッ!
次回、「イヌマルの決意ッッッ!!!」に続くッッッ!!!