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第10話 「怪しきニンジャ、サルトビッッッ!!!」

 前回までのあらすじ! 何とか鬼を倒した桃太郎一行は、そのまま黒田城の城下町まで戻り、キジカゼの部屋でお泊りをすることになった! トレーニングマシンだらけの部屋に驚きつつも、桃太郎は自分の詳しい素性をイヌマルとキジカゼに説明! そして最終的に、キジカゼも桃太郎の仲間に加わることとなった!











「ありがとう、桃太郎! 私は、愛する黒田城の城下町を破壊していった鬼が許せない! 何としても、鬼を退治してやるわ!」


 力強く決意を語るキジカゼ。こうして彼女は、無事桃太郎たちの仲間に加わることになった。


 近接攻撃を得意とする桃太郎・イヌマルにとって、遠距離攻撃の名手であるキジカゼが仲間に加わることは頼もしいことこの上ない。


「……よし、じゃあ私はもう寝るわ」


「切り替えはやいな……ってか、どこで寝るんだよ」


 キジカゼの部屋は、四方八方にトレーニングマシンが置かれている。が、ベッドや布団といった寝具類は一切ない。ここは完全なるストイック筋トレルームである。


 すると彼女はさも当然といった顔で


「トレーニングマシンで寝ればいいでしょ」


と言い、すぐ隣にあったベンチプレスのベンチに横になった。


「い、いつもそうやって寝てるのかよ……」


「まあね」


「変な奴だぜ……」


「まあそう言うなイヌマルッ! 意外と心地いいぞッ!」


 そう言って懸垂マシンの鉄棒部分を掴む桃太郎。そして彼は宙に浮いた体勢のまま、いびきをかいて寝始めた。


「グガーーーッッ!! グガーーーッッ!!」


「いや、お前にいたっては横になってすらいねぇじゃねぇか! なんで懸垂したまま寝てんだよ!」


 結局イヌマルは、床で寝ることにした。











 翌日。旅の支度を終えたキジカゼを連れて、桃太郎一行は鬼を倒した森の洞窟へと戻ってきた。


 洞窟の前には、昨日桃太郎が切り殺した鬼の死体がまだ残っている。


「ふあぁぁぁ~~~」


「ムッ、どうしたイヌマルッ! 大きなあくびなんぞしてッ! ちゃんと寝ないと疲れが取れないぞッッ!!」


「お前さんのいびきがうるさすぎて寝れなかったんだよ。おまけに寝る場所も硬い床の上だし」


「そんなことより2人とも、ほかの鬼の追跡を行うわよ」


 キジカゼは、鬼のいた洞窟の周りを入念に調べながらそう言った。


「そうは言ったってなぁ……追跡しようにも最近は雨が多いから足跡が残ってねぇし、どうしようもねぇぞ!」


 おてあげといった感じで頭を振るイヌマル。


 と、その時であった。


 桃太郎が突然腰の刀を抜き、険しい表情になる。


「どうしたんだよ桃太郎!?」


「……俺たち以外にも……誰かいるぞ……ッッ!!」


 彼のその言葉を聞き、イヌマルとキジカゼも即座に戦闘態勢に入った。


「……ッ!」


「……」


「……」


 油断なく構えたまま、沈黙する3人。


 そのひりつく緊張感の中で、突然優し気な青年の声が聞こえてきた。


「そ、そんなに……け、警戒しなくても……大丈夫、ですよ……」


 木の上から声がする。3人が上を見上げると、木の枝に1人の怪しい人物が立っていた。


 彼は不意に枝から跳躍すると、猫のような軽やかさで地面に着地する。


「……お前は、誰だ……ッ!」


 刀の切っ先を謎の人物に向け、仁王の形相で問いかける桃太郎。


 突如現れたその人物の第一印象は──黒いミイラ、であった。


 身長180センチ。スリムで手足が長いその人物は、全身を黒い包帯でぐるぐる巻きにしていた。だからその風体は、まさしく黒いミイラである。


 顔も黒い包帯に覆われており、目元だけが露出している。その目は鋭く、しかしどこか優しげな雰囲気のある不思議な目であった。


 すると突然、キジカゼが口を開く。


「その恰好……あなた、黒田城のニンジャね」


「は、はい、そうです……」


 その青年は、おどおどとしながらも頷いて肯定した。


「ニンジャ……ッ?」


 効きなれない言葉に首を傾げる桃太郎。


 すると青年が


「そ、そうか……も、桃太郎さんは記憶がないから、に、“ニンジャ”って言われても、わからないですよね……」


と言った。


 そして一呼吸置き続ける。


「ニンジャというのは、し、城に仕える暗殺者みたいな、もの、です……。あ、主の命令は絶対で、その命令に応じて、な、なんでもやります……」


(※ニンジャ……ニンジャの起源は古く、紀元前431年にまでさかのぼる。スパルタを中心とするペロポネソス同盟と、アテナイを中心とするデロイ同盟との間で大規模な戦争が起きた。ペロポネソス戦争と呼ばれるそれは、古代ギリシア全域を巻き込んだ大規模な戦争へと発展する。そんな中、アテナイの軍は敵部隊の諜報・暗殺を目的とする部隊を結成させた。その部隊の名前が“ニンツァー”、すなわちニンジャの元となった組織である。ちなみにペロポネソス戦争終結後、ニンツァーを抜けた1人の男は哲学者として成功した。彼の名はソクラテス。彼はこの世で唯一の哲学暗殺者であった……世界童話出版「闇に紛れた哲学者の真実」より抜粋)


 その時ッ! イヌマルが「待て」と口をはさんできたッ!


「……なんでお前、こいつの名前が桃太郎だって知ってんだ? いや、それ以前に……なんで桃太郎に記憶がねぇことまで知ってるんだよ」


 彼の記憶がないことは、イヌマルとキジカゼも昨日の夜に初めて聞かされたことであるッ! そんな情報を、このニンジャが知っているのは明らかにおかしいッッ!!


 するとニンジャの青年は、相変わらずおどおどしながらも


「ぼ、僕……ずっと皆さんのこと、び、尾行してました……」


と答えたッ!


「いつからだ?」


「き、昨日……桃太郎さんとイヌマルさんが、く、黒田城の城下町にやって来た時からです……それから、鬼を倒して、キジカゼさんの家に泊まって……その時に、も、桃太郎さんの記憶がないって聞いて……」


「なるほどな。キジカゼの家の中でも会話も筒抜けだったってことか」


「何故黒田城のニンジャが、私たちの尾行をするの?」


 今度はキジカゼが質問をしたッ!


「そ、それは、黒田城の主である松平様から命令を受けたからです……」


「松平様が? 何故よ」


「桃太郎さんが、妖刀を、持っているから、です……」


 そう言い、桃太郎が手に握りしめる刀・紅蓮丸を指さしたッ!


「……俺の刀かッ?」


「はい、そうです……僕に与えられた任務は、刀のコレクターである松平様のために、珍しい刀を集めること……そんな中、非常に珍しい妖刀・紅蓮丸を持つあなたが現れたので……ずっと、び、尾行してました……」


「なんだそりゃ。刀が欲しいならとっとと出てきて“その刀を売ってくれ”って言えばいいじゃねぇか!」


「そ、そんな……僕、人見知りなのでいきなりそんなこと……」


 もじもじしながら小声で言う青年ッ! するとイヌマルがいら立ったように


「だーーー!! 俺はお前みたいなうじうじした野郎が大っ嫌いなんだよ!」


と怒鳴ったッッ!!


「まあまあイヌマル、そう言うなッ! そうだな、とりあえず……君の名前を教えてくれッ!」


「ぼ、僕の名前は……えっと……」


 そして全身黒ずくめの青年は、一拍置いてからこう言った。


「サルトビ……ニンジャの、サルトビです……」


 次回、「サルトビの妖術ッッッ!!!」に続くッッッ!!!

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