.
気が付くと、人気のない山中にいる。
わざとじゃない。何のために?
知らない。しかし、人気はない。
僕は叫ぶ。どこへ?誰に向かって?
分からない。でも、僕は叫ばなきゃいけないんだろう。
彼女は僕のことを待っている。
可哀そうに……
それはどこか上の空な響きで木霊した。
遠雷。
ああ、遠雷!しかし神の裁きはまだだろう?
それならまだここにいて良い筈だ。
ここはどこだ?
しかし、その響きもまた僕じゃない。
「バーリー、どうせ君も僕を置いていくんだろう?」
「バーリー、あの孤独な彼のもとに居てはどうかね?」
「いえ、私はあなた様のお側に。」
残念だ。また僕を分かってくれる奴がいなくなる。
僕の声は誰にも届かない。
僕の叫びは僕にも分からない。
この絶望に呑まれる前に終わらせないと。
闇に呑まれた可哀そうな彼女のために。
いや、違う。僕は何をしたいんだ?
彼女は可哀そうなのか?
僕は何も考えていないんじゃないのか?
違う、違う!違う!!
僕は僕なんだ!
でも誰もそれを証明できない。
僕は僕以外ではあり得ないんだ!
じゃあ誰がそれを証明する?
僕には分からない。分からない。
「バーリー、君には分かるのかい?」
「バーリー、彼に答えてやってはどうかね?」
「いえ、私は解を持ち合わせては御座いません」
ああ、遠雷!小憎たらしい遠雷に眺められ、僕は立ち尽くす。
もうどうしようもない。僕の声は誰にも届かない!
僕の声なのか?それすらももう………………
違う、違う!違う!!
「僕は負けない!」
僕は勝った。絶望はもう僕のことを呑み込めない。
僕は幸せだ。もう痛くない、もう苦しくない、もう辛くない。
何もない。そこに光があるだけ。
でも幸せだ。そしてそれは永遠になる。