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第14話 ホームシック裏

エイド視点回です

「メ、メア、メメメメッメ、メアちゃんが死んじゃうよ! エイド! エイド!!」


 この今にも死にそうな顔をして騒いでいる子供はティア様、私がご奉仕しているご主人様です。こう見えて同い年で、ホビット(小人族)では無いのにこの小ささ、最初は驚きましたね。


 そんな小さなティア様は、私にとって手の掛かる()のような方でもあります。しかし、これでも1児の母なのですから世の中わかりません。


 そして、私の名前はエイド チョム、この国に仕えるメイドの1人でメイド長をさせて頂いております。


 今、私は大変困った状況に陥っています。


 それは目の前に居る赤ちゃん、メア様が今日、起きた時から今までトチ狂ったように泣いて転がっているのです。もうそれは、物凄い勢いでゴロゴロ! です。しかし、泣き声はとても弱々しく儚げに聞こえるので、この状況の異様さが浮き彫りになっています。


 私はこの状況を冷静に分析しています。


 メア様は体力の面では大丈夫でしょう。なんせ物凄い勢いでゴロゴロとしておりますから。おしめ交換の時に体を診ましたがどこかを痛めている様子もありません。


 その時は、()()()()()に泣いて大人しくしていたので、不思議に思いました。


 原因が身体面ではないのなら、精神的なものなのでしょう。一応その事をティアに伝えてあげます。


「ティア大丈夫ですよ。体の方は診たところ、健康そのものでした。これは推測なのですがメア様は精神的。……何か嫌な事があったのが原因だと思われます」


「嫌な事?」


「何か思い当たる事はありますか?」


 ティア様は頭の悪そうな顔をして、う~ん~う~ん~と唸っています。


「う~ん~? あ!!! き、昨日ね、メアちゃんがおいしそうに粉ミルク飲んでいたから、内緒で作って飲んだの。……それが原因かな?」


 あなたは馬鹿ですか? バカでしたね。そうですね! まあそこが可愛いのですが。

 

「おいしかったですか?」


「熱かった!」


「……ティアが作った粉ミルクは絶対に、メア様には与えないでくださいね!!! 最悪、火傷しますからね! わかりましたか?」


 ティアが首を縦にブンブン振っています。メア様が関わると聞き訳が良くて助かります。


「他にはないですか?」


「……」


 ティア様が考え込んでいます。あ! ティア様に”様”を付けたり、付けなかったりするのは気分です。……誰に対して言っているのでしょう私は?


 ティアが発言したことは全く関係なさそうですね。


 あれ? 昨日? ……朝起きてからメア様がこうなっているので、昨日に原因があると言う事は当たりのような気がします。それも寝る前に決定的な事が起きたのでしょう。思い出すのよ!! エイド!!!




……




 ん? そう言えば昨日メア様に「明日はお風呂に入りますよ~」と言いました。


 ……これね!!! これだわ!!! 陛下方がお風呂セットを持って来てから、メア様の睡眠時間が異様に長くなっていました。それが終わったと思ったらボーっとする機会が多くなっていましたね。あれは嫌な現実から目を背ける為に不貞寝したり、どう切り抜けようか考えていたのですね!


 ラルム様はティア様一筋でしたから、きっと私達メイドと一緒にお風呂に入るのが嫌なのですね! ラルム様のお世話をするには裸にならないといけませんから。ティア様を裏切りたくないのですね。ラルム様は純情ですね。


 どうしましょう? 裸にならずにお世話をする方法を考えるのよエイド!




……




 待てエイド! ラルム様なら別に見られても構わないのです。そうです! それに今はラルム様は女の子!! これから先の事を思えばこれは試練として耐えて貰わねば!!! うふふ、ラルム様とお風呂、うふふふふ……


「エイド!!! 何かわかったの!!!」


「え?」


 私とした事が顔に出ていたようですね。ティア様は希望に満ちた眼差しを向けてきます。ですが、


「いいえ、申し訳ございません。メア様が駄々をこねているように見えまして、それが可笑しくて、顔に出てしまいました」


「エイドにはこれが駄々をこねているように見えるの?」

「うぇええええええ~ん」

ゴロゴロゴロゴロ


「はい」


 我ながら苦しい言い訳をしてしまいました。まあ、ティアならこれで大丈夫でしょう。メア様を見ると先程より更に物凄い勢いでゴロゴロ転がっています。泣き声は悲しみが混じっている気がしますね。


「私、メアちゃんに嫌われたのかな?」


 ティア様が顔面蒼白で私に聞いてきます。嫌われている? その真逆の大変好かれているようですよ。そう答えたいのですが、メア様がラルム様だと言う事はまだ秘密にしたい筈、どう答えたら良いものか?


「「う~っふぇっ~ぐ~うぇ~~ん」」

ゴロゴロゴロゴロ


 泣き虫なティア様は泣いてしまいました。どうしましょう? それにラルム様と綺麗にハモっています。いっその事、2人きりでお風呂に行かしますか? そうすれば解決に……ラルム様が溺れるか、ティアがのぼせるか碌な未来しか見えませんね。


 やはり私も一緒にラルム様とお風呂に、うふふ……おっと思考が戻ってしまいました。こんな事ではラルム様に嫌われてしまいますね!


 ん?


 嫌われる? そう言えば、ラルム様が転生した事は、私にはバレているんでしたね。だとすれば私がそのまま一緒に入ると。


 ……ラルム様に嫌われる!!! ラルム様と知ってて入る訳ですから後で「私がラルムだと知っててお風呂に入ったよね? あの時あんなに嫌がっていたのに!」とか言われて嫌われてしまう未来が……そんなのダメです!!!


「大丈夫? 顔が死んでるよ?」


 いつの間にか涙を流しているティア様が私を覗き込んでいます。今そんな顔しています? 私が慌てると釣られてティアも慌ててしまいました。


「う~う~えぇ~ん」

ゴロゴロゴロゴロ


「うぇ!!!」

ゴロ スゥ~


 ラルム様は体力の限界が来たのか、寝てしまわれました? ……寝たのよね? …………急に寝た? ラルム様を注意深く観察しましたが、気持ちよさそうに寝息を立ています。


「疲れて寝た様ですね」


「本当?」


「はい」


 ティア様は心配そうにラルム様の手を握ろうとして……物凄く悲しい顔をしてやめました。


「私は、お母さん失格なのかな? メアのお世話はエイドが殆どしているし、私ができる事なんて殆ど無い……う……うぇ」


 ティア様は本当にラルム様の事を……ティア様にとってはメア様でしたね。ティア様は本当にメア様の事を愛しているのですね? ……母親の愛ですか…………。


 私が何とかしましょう!!!


「ティア様大丈夫です。おしめ交換や、沐浴だって1人で出来るようになられたじゃないですか。メア様にはティア様の愛情は伝わっている筈です。だから泣かないでください。」


「でもぉ~う~え~」


 また大粒の涙を流して鼻水まで垂らして、世話が焼けますね。仕方ないですね。私は努めて優しく子供に言い聞かせるように、目線を合わせて元気づけます。


「そんな顔をしていてたら、メア様に嫌われますよ?」


「嫌われたくない!!! 頑張るから……ひぐ、私……うぐ、メアちゃんに嫌われないように頑張るから!!!」


 ティア様に意志の光が宿った気がします。


「そうです! その意気です!!!」


「ぐす、でもどうしたらいいの?」


「そうですね……ひとまず休憩しましょう。次にメア様が起きた時に飛び切りの笑顔を出せるように。それに、ティア様の笑顔は皆を幸せにできますから」


「ふぐ、……わかった」




……




 一応、策は思いつきました。少々大変ですが魔導具を使えば服を着たままお風呂に入ることができます。この事をラルム様に伝えたら大丈夫な筈です。私も一緒に、お風呂に入れますからね。


 後は何時も通りのラルム様に戻れば完璧です。泣いていた理由なんて、どうでもよくなるでしょう。ティアですから。


 ティア様は……休憩して、今は寝ていますね! そう思っていたらラルム様が起きました。今の内に伝えてしまいましょう。


「ラルム様お風呂の件ですが、大丈夫です。メイドは私だけで服も魔導具で何とかしますから安心してください」

(ナシちゃん!!!皆に迷惑かけたんだからちゃんと挽回しなさいよ!!!)


(わかってるよ)


 ラルム様が寝ぼけ眼で私の話を聞くと、満面の笑顔で返してくれました。これで問題解決ですね。ティアを起こしてあげないと。




……




 ティアはすぐに起きるとラルム様の所に行きました。


「メアちゃん……」

(お母さん目が真っ赤じゃない!!ナシちゃんほら笑って)


「キャッキャッキャッキャッ」


「許してくれるの?メアちゃん、ありがとう!!」


 思った通りになりましたね。ラルム様はかなり汗を掻いたみたいなので、このままお風呂に行きましょう。ティアにその事を伝えるとお風呂の準備をしました。




……




…………




 城のお風呂場は男女別々で、王族の方々とそれ以外の人々が使う計4つ在ります。私達は王族が使う女湯に来ました。一応、私達以外が使っていないか、確認だけして入ることにします。


「メア様? お風呂場に着きましたよ」

(チノ、何か俺、嫌な予感がするんだけど)

(……お風呂場なのかな?)


「メアちゃん初めてのお風呂だね!」

(チェンジだ!すぐに替わってくれ!!!)


「メア様を脱がせておくので、ティア様は自分の服をちゃんと籠に入て下さいね?」

(これは試練よ! ナシちゃんは女の子なんだから、今の内に慣れておかないと後が大変よ?)


「は~い」

(いやだー!!!)




……




…………




(ありがとう! チノ大好き!!)


(もっと可愛く子供らしく言って!)


(……ありがとう♪ チノちゃん!!! だい! だい!! だいすき!!!)


(ぐへへ~)


(それにしてもすごいな!! 母さんの大事な所は謎の光で見えない。完全にアニメだな。すごいよチノ!!)


(密かに練習していたのよ。名付けて≪チノ式ガード≫よ!!! わたしみたいにまた人格が増えたら嫌(入浴人格のニュークとか?)……まだ種類は有るわ。謎の霧に海苔、イスナーちゃん)


(無視? それに、イスナー???)


(ちょっと待って……これでどう?)


(……友達をこんな事に使うのはダメだな)


(『そうだよ~』)


((イスナー!)ちゃん!)


 ラルム様を脱がせると、私は水弾きの魔導具を起動させました。ラルム様はティア様の事を擬視しています。もう、エッチですねラルム様は!


「行きましょうか」

(メイドさんは服を脱がないみたいね)


「うん」

(よかった~)


 ティア様にラルム様を渡して、軽く注意事項を言うと、私達は浴槽に向かいました。


「メアちゃんと一緒に入れて、私嬉しい!」

「あ~あ~みゃ~」

(すげ~!!!)

(豪華~!!!)


「ティア様、メア様には少しずつお湯を掛けて慣らしてくださいね」

(ドラゴンだよな?あれ?)

(不死鳥?ユニコーン?)


「まかせて」

(『全部この世界にいるよ~』)

「ふぇ~」


 慣れない手つきでお湯を掛けるティアを、私はそっとフォローします。


「にひひひ、もういい?」

「う~う~だ~」

(気持ちいいわ~)


「はい、十分です」

(早く風呂に入りたいぜ!)


 ラルム様達と一緒に浴槽に入ります。うふふ……最高ですね! ティア様はご機嫌なようで歌を口ずさんでいます。




……




「あぶ、ぶえ、ばあ」

「ごめんなさい!!!」

(やばい! やっぱり母さん、不器用だから! お湯が口や鼻に入る)

(大丈夫よ! この為の神技≪無敵≫よ)

(『無駄遣いはよくないよ~』)


 少し浸かっていると、案の定ティアがラルム様を溺れさせています。ティアは慌てていますが、ラルム様はあまり慌てていません。流石ですねラルム様!


「エイド~……」

(死ぬかと思った~)

(『神気が~、わたしの神気が~』)


「ティア様、こう持つのですよ? わかりましたか?」

(そんなに力が減ってるのか?)

(大丈夫?ドンドン取っていいよ?)


「うん……」

(『別に減ってないよ~。ノリよ~。ノリ~』)


 ティア様が悲しそうな顔をすると、ラルム様は優しく顔を撫でました。するとすぐに笑顔になりました。……どちらが子供かわかりませんね? あれ? ()()()()()()でしたね。誠にややこしいです。




……




「メア様のお体を洗って、もう出ないとのぼせてしまいますよ?」

(いい湯だな~。極楽極楽~)


「ふぁ~い~~」

(おっさんみたいね)


「……」

(俺はおっさんだ~)


 これはチャンスですね。ティアは少しのぼせています。今ならラルム様を洗うことができます。


「少し休憩してください。私が洗っておきますから」

(可愛い女の赤ちゃんよ)

(『そうだよ~』)


「うん~」

(でも中身はおっさんだ~)




……




 ラルム様を洗うのは久しぶりですからね。念入りに洗わないと♪ うふふ……


「ラルム様~痒いところはないですか?」

「ん~ん~あ~あ~」

(気持ちいい~)

(それにしても手際がいいわね)


「まだ喋れないすか~そうですよね~」

「む~~む~~」

(あ! お母さんが復活してる)


 ああもう洗い終わってしまいました。まあいいでしょう! これからは毎日またチャンスがありますからね♪


「ティア様が体を洗っている間、私はメア様が湯冷めしないようにもう一度浸かっていますね」

(イスナーは風呂に入るのか?)


「わかった!」

(『入らないな~』)


「メア様行きましょうね~」

(それは勿体無い! わたしがこの気持ち良さを送って上げる)




……




 幸せな時間はすぐに終わりますね。しかし、明日もラルム様とお風呂に入れます。うふふ……




……




「部屋に戻りましょうか?」

(『気持ちよかった~』)


「さあ行こう、メアちゃん」

(そうかなら)


「か~あ~む~」

((また一緒に入ろう!)ね!)

(『うん~!!!』)



イベントクリア報酬

ゲットスキル

【ヘタレ】 ⇒ 【ヘタレ+】

まだ母親の裸を見る勇気は有りません

補正 <new>回避率+5%UP


エイド

【暴走】 ⇒ 【暴走+】

とんだ見当違いだよ

補正 攻撃力+1 <new>クリティカル時ダメージ15%UP


ティア

【母親】 ⇒ 【母親+】

少しずつでも頑張っています

補正 <new>特定の対象がピンチの時全能力+200%UP

創作日記:すみません愚痴です。

今回は読み飛ばしてくれていいです。





小説⇒ラノベ⇒なろう(携帯小説)に活字文化が流れています。これに伴い、地の文の量は減少傾向にあります。現在の多くの読者は手軽さを求めているとおもいます。作者は地の文が長かったら読み飛ばしてしまいます。しかし、最近の自分の小説は地の文がドンドン長くなっている。これには、わざとの部分があります。長くなると「俺書くの少しは上達した」と思える部分があるからなんですよ。

なにごちゃごちゃ言ってんだって話ですよね。

このまま地の文を長くするか短くするか決めかねているんですよね。以上 でも小説書くのめっちゃ楽しい!!!


P.S.一応自分なりの方向性決めました 2/24

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