『絶対死』と”魔獣”の山
ウルベル・オッルドがネガティブな一言を発していた時、彼の師匠になるはずの≪魔王の成り損ない≫シルバ・タスクは、上空から”魔獣”を見下ろしていた。
「ついに”魔獣”が出現してきたか…つまりは、”魔人”の出現ももうすぐということか…」
彼は、業界では忌み嫌われはしなかったけれど、それでも嫌われているほうではあったので、弟子を取るのは初めてのことだった。
だが、彼は様々な情報を知っていた。
なぜかは、殆どのものは知らない。
そして彼は、未来の”悪”を排除しようと動き出す。
相手より早く動こうとする。
それももう、遅かったが…
自分の師匠が、他ならぬウルベル・オッルド自身の頭上にいるとは夢にも思わなかったのだが、現実に夢を持つ少年ウルベル・オッルドは、”魔獣”から逃げ切った後、頂上を目指していた。
歩いて歩いて時には走って逃げて逃げて1週間と5日がたった。
残り日数はすでに3日を切っていた。
今、ウルベル少年がいるのは標高6548メートルであり、このままのペースでは頂上まで行けそうになかった。
が、しかしウルベル少年のいわゆる”主人公補正”が働いたのか、ここでとある老爺に出会うことになる。
その、老爺と主人公が出会うのはあと2時間後のこと
一方そのころシルバ・タスクはサンサ山にいる”魔獣”をあらかた殺した
否、死に導いた。
なぜこんな表現をするかというとそれは、彼の魔法ゆえである。
なにせ、彼の前ではあらゆる生物は無力となる。
もうそれは”チート”といっても違和感がない能力であった。
その獣の前にウルベル・オッルドは逃げまどっていたのだが、シルバ・タスクは自分も相手も一言も発せずに倒していく。
そう、彼の魔法『絶対死』の前では…
固有魔法『絶対死』、自身の手の平で触った生命を死へと導く能力。
確かに、ものすごく強い能力ではあるのだが、手が切り落とされれば使えないし、手で触れなければ意味がないのだ。
そして、その固有魔法こそが彼の二つ名≪魔王の成り損ない≫の由来である。
なぜならば、この魔法の上位互換である、『極死』を使う魔王
≪死の魔王≫デスの下位互換の魔法を使うからに他ならなかった。
そんな彼だが、別に探知系の能力を保有しているわけではないので、不意打ちは普通に受けてしまう。
それが今だった。
”空型魔獣”に襲われた。
そして、意識を失った彼は落ちていった。




