勇者の悲報と魔王の知らせ
南歴1991年7月19日
世界が騒然に包まれた。
太古より封印されし魔王の一角
”詩の魔王”ポリズロンが復活し、討伐に向かった”正の勇者”が死亡したという知らせが届いたためである。
この事態に各国が魔王対策本部を立てる中、魔王復活の影響で、魔物の活性化、人の心の汚染が発生していた。
南都 ヴェンデルの王 フォームル・ヴェンデルは、市民に警戒を呼び掛け、ウルベルの父ボイド・オッルドは、勇者死亡の後処理に追われ、家にしばらく帰れていなかった。
更に、ウルベルの母ミラ・オッルドも魔物の活性化に伴い冒険者組合に魔物討伐の依頼が殺到
結果、オッルド家はウルベル以外に人がいない状況になっていた。
そして、そんな忙しい両親の息子ウルベルはというと、、、
家で考え事をしていた。
何を考えていたかというと王に持ち掛けられた魔力検査の件である。
もともと、ウルベルは、心優しい少年であったが、その心の優しさとともに向上心と探求心など人に聞かせれば
「いいところしかないねぇ。」
といわれるウルベルだが、そんな彼にもひとつ(人間ならばしょうがないのだが)少しいいような悪いような心があった。
そう、彼は極度の目立ちたがり屋なのだ。
元を返せば彼の顔の傷、できたときは痛くてショックだったものの、慣れてからは
「もしかして、この傷すごいかっこよくね?」
と自分で思うようないわゆる”隠れナルシスト”になってしまっていた。
そして、彼は今こう考えていた。
「(俺が魔力検査を受けたらかっこいいんだろうけど、もしも失敗したらみんなからものすごい目で見られるんじゃないだろうか?)」
彼の想像は以下のようである。
~成功した場合~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ウルベル君すごーい!!」(by女子1)
「この年で南都魔法警備隊に所属するなんて♡」(by女子2)
「おう!すごいよな!南都魔法警備隊!かっこいいな~」(by男子1)
「いいな~南都魔法警備隊おれもはいりたいな~」(by男子2)
「私たちもウルベル(君)みたいになれるかな?」(みんな)
~失敗した場合~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「えっ!試験落ちたの?プっ ダッサ~(笑)」(女子1)
「ダッサ~~~~(笑)」(みんな)
「お前にはもうがっかりだ。出て行け!」(父)
「こんな子を産んだ覚えなんてないんだけど。警察ぅ~」(母)
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(ズ~~ン)
「もう無理生きていけない、やめておこうかな魔力検査受けるのっでもでも受けなかったら受けなかったで)」
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「お宅の息子さん試験王様に誘われたのに受けなかったんですって?」(by右隣のマム)
「王様の誘いを断るなんて恥知らずな子ねぇ~(笑)もう南都から引っ越せば?(笑)」(by左隣のマム)
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(ズ~~ン)
「(終わりだぁ~どっちに転んでも終わりだ~。もうどうしようもないから魔力検査受けようかな~。いやでも失敗した時の打撃に比べればな~でもでも、、、)」
そうやって、くだらない考えをしている間に2時間が過ぎた。
そんな、くだらないことを2時間も考えている子供がいる一方で世界は回っていた。
~詩の魔王城~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
”詩の魔王”とよばれる大魔王は思案していた。
それはもう深く考え込んでいた。
どこかの少年のように(考えていることの重要さには天と地ほどの差があったが)
「(なぜだ!この世界に復活している魔王が私しかいないとは一体全体どうゆうことだ!市も氏も死も士も史も師も紙も誌も資も四も詞も支も子も嗣も視も志も使も思も施も私も試も始も刺も至も旨も司も指も示も矢も屍も姿も糸もいないではないか!
私だって魔王の中では弱いほうなのだぞ!
しかも、私が復活したと知ってきた勇者にも言いたいことがあるのだ。
勇者が私が健在だったころよりも衰えているではないか!
もともと、魔王よりも勇者のほうが数が少ないのだからどうにかならんものなのか!
いやいや、魔王の中でも弱かった私の中で適当にどれぐらいの強さなんだと放った一撃で勇者のパーティーがほぼ全滅して勇者が「くっ!こいつ!強すぎる!」といった時こいつやばいと思ったもん。
まぁなんにしろ今はこの時代の詳細が分からない情報収集とほかの魔王の復活を主目的として頑張ろうか
だったらなんだ、この世界の今のレベルであれば宣戦布告してみるか。)」
思案をやめた詩の魔王は左手を出しこう言った。
l『ヨハネによる福音書≪ゴスペル≫ 一遍二節』
その言葉を言った瞬間世界が動いた。




