師匠交代
”動の型”
数ある”基本の魔力操作”の中でも、重要な型である。
自身の魔力を体の一部分に集中させ、その体の一部分を媒体に通常人間が出すことができないであろうパワーとスピードを得ることができるという型である。
南歴1997年 9月17日 08時23分
ウルベル・オッルドは通常では考えられないであろう時間に起床した。
それもそのはず、前日あれだけの訓練をし、その前にサンサ山を登ってきて、”魔獣”の追撃からも逃れ切ったのだから、疲れていなければおかしいのである。
そんな、疲れた様子で起床してきたウルベル少年を見て≪金色の仙人≫ゴルド・アサインは、一言こう言った。
「お前、シルバ・タスクをどう思っておる?」
「???」
ゴルドは、朝から彼の師匠になろうというシルバの名前を出してきた。
「それは、どういった意味ででしょうか?」
「じゃから、お前は、シルバ・タスクという人間をどう思っているか。という質問じゃ。」
ウルベルは、頭の中で話の論点を整理してから、慎重に答えることにした。
ウルベルは、この一日でゴルド・アサインが無駄を嫌う人間なのをいやというほど思い知ったので、この質問にもなにか、重大な意味が込められていると思ったからだ。
「俺は、シルバさんのことはよく知りませんが師匠になる人なんだな。とおもっています。」
「うむ・・・・」
ゴルドは、質問を受けてしばらく考え込むとこう質問をしてきた。
「では、お前は師匠となるかもしれないシルバ・タスクが目の前で瀕死の状態になっているとしたらどうする?」
「そんなの助けるに決まってるじゃないですか。」
ウルベルはこの時自分の心中をありのまま言った。
すると、ゴルドはこう言った。
「では、今からシルバを迎えに行くとするか…」
「???迎え?」
12分後
シルバ・タスクは、横たわっていた。
腹には、木の枝が突き刺さっていた。
「ふむ。”魔獣”か…しかも、飛行型か…」
老人がぶつぶつ言っているのをよそにウルベル・オッルドは、よくわからなかった。
師匠は死んでいるが、悲しみは沸いてこなかった。
それもそのはず、彼とシルバが話したのは3時間に満たない時間なのだから…
「して、お前はこの男を生き返らせたいのか?」
「……」
「まぁそうじゃろうな。あったばかりの人間の死などどうとでもなるからのぉ”感情面では”」
すると老人はこう言った。
「お前の修業は儂がしてやろう。じゃからもう戻れ”六合小屋”の場所はわかるな?」
「(コクリ)」
「よし、帰れ」
ウルベル少年が去っていく。
彼がいなくなったのを確認するとゴルドは懐から”杖”を取り出す。
「≪生命の杖≫展開」
辺りが光に包まれる。
「承認、、、、確認、、、、状態 半死亡」
老人はため息をつき言った。
「生きとるやないかい!!!」
静かなツッコミは夜の山に響いた。




