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9.冒険者ポータルと猫耳の彼_1


 ぴょこぴょこ。


 彼女は耳みていた。


 ぴょねこん、ぴょねこん。こちらにいかにも興味があるといった風にそれを動かしながら近づいてきた彼の、頭にある猫耳を、じーっと。


 だって猫耳ついてる人なんて向こうの世界にいなかったから気になるのは仕方ないよね! 決して男の人と話すのはまた緊張するとかで頭がぼーっとするとかそういう訳ではなく。いや、嘘!ある! あるけどもう少し心の準備をする時間はやっぱり欲しいというか!


 猫耳ねこみみネコミミねこミミ――――気持ちを落ち着けるためにゆっくりと深呼吸をしながら、彼女は耳みていた。


 やがて彼女の横に到着して声をかけられて「ひゃい!」と情けない声をあげるまでのその間。





――――――――――――――――――――――――――――


 とことことことこ。


 先ほどの愛香の魔獣狩りに行きたいという発言を受け、彼女らはとある場所へ向かっていた。


 ちゃりちゃりちゃりちゃり。


 手首につけた馴染みないアクセサリーというものを気にしながら。


 そのままだといるだけで混乱を招きかねない勇者の魔力を誤魔化すためにとエルフたちが用意したものらしいが、愛香からすれば変に見られないかな? というのが気になるところのようだ。


 そもそも制服に対してアクセサリーという格好に違和感はあるが、似合っているかとあえて聞かれたならそういうファッションなのかなと思えなくもない。




 ――クーシャさんが言うには魔獣をするにはまず、冒険者ポータルというところに行かなければいけないらしいとのことである。


 詳しい説明はすぐつくからそちらで、ってことだけどどんなところだろう。


 冒険者ギルドっていったらなんとなく聞いたことはある。依頼を斡旋してくれたり素材を持っていったら換金してくれたりする冒険者のたまり場みたいなイメージ?


 ポータルっていうのは······ゲームかなんかの攻略情報サイトを探してるときに見つけて調べたことある気がする。確か由来はポート、港から来ててなにかの入り口的な意味合いだったかな? 攻略情報ポータルサイトっていったらそれぞれ別の攻略サイトに行くためのリンクがずらーっと張ってあるみたいな。




 やがて二人は村の入り口に到着した。そこには薄青く輝く等身大程度の大きさのクリスタルが配置されていることに愛香は気づく。なんかセーブとか回復とかしてくれそうとか思いながら。


 そのクリスタルに向き直ったクーシャをみて、ここが目的地であることを愛香は察した。


 「あの······これは?」


 「これが冒険者ポータルへの入り口······ですかね?」


 やや言い切らないように答えながらクリスタルに手を伸ばすクーシャ。


 入り口ってことは転移装置みたいなものなのかな? 愛香も合わせて手を伸ばす。


 合っていますよと言うように、クーシャは微笑みを返した。


 「では、私と一緒に手を触れてくださいね。その後の詳しい説明については――――」


 そこでクリスタルに触れた二人はぴかっとした白い光に包まれる。だがそれも一瞬、光から解放された二人はいつの間にか全く別の場所へと移動していた。


 「こちらですることにしましょうか······って、あら?」


 クーシャが言い終わる前にすてんっ! と小気味のいい音がした。愛香が尻餅をついた音である。


 転移をする際にふっと宙に浮く感じがしてバランスを崩したのが一つ、急に辺りの景色が変わったことにびっくりしたのが一つ。愛香はすっ転んでいた。


 「いたた······」


 「す、すみません! 大丈夫ですか!?」


 ――クーシャさん、手を伸ばしてきてくれたから引っ張り起こしてくれるのかと思ったらそのまま頭を撫でてきた、嫌じゃないし嬉しいんだけどなんかもにょもにょする······。


 そんな気分に頭にちっちゃいはてなを浮かべながら、愛香は立ち上がった。


 「すみません、転ばせてしまうとは······。驚かせる気は············ちょっとあったんですが」


 あったのかよ!

 でも大人しそうなイメージだったからちょっと意外かも、こう友達の色々なことをだんだんと知っていく感じよいかも······。


 と思いながらも愛香はぷくっとむくれた。


 「······怒ってますか?」


 「怒ってないです!」


 思わず口調を荒げてしまった愛香だったが、本当に怒ってないことを示すためとちょっとの仕返しの意味を込めてわしゃわしゃと強めにクーシャの頭を撫で返した。


 安心したというように息を吐いたクーシャを横目に、愛香は改めて辺りを見渡す。


 とにかく広い! それが愛香の第一印象である。


 酒が乗った机が散在してるところとか、沢山の掲示物が張られた壁とかは自分の思う酒場に近い。でもその何もかもがとにかく大きい、とにかく多い、とにかく広い。


 向いた先のずっと奥には食事の注文口があり、逆を向いてみればこっちには大きな扉。その近くには受付さん? みたいな人が座っているのがみえる。


 でも広さの割にはあんまり人がいないかな?

 何人かで集まってご飯食べてるグループが片手で数えられるほどと、あそこでぐでーっと寝ころがってる人が一人――――


 と、思ってたらその寝てた人がこちらに気づいたのか顔をあげてぴょこっとさせた。


 ぴょこぴょこ、頭のあれは······耳?


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