8.彼女のようになるための
昨日、愛香が「何をしましょうか!」から聞くことを始めたのにも理由があった。
物事に対して、それを成し遂げるためにはなにをすべきであるのか。与えられた情報を元にその最適解を導き出すことに、愛香は非常に長けていた。
そして高校デビューに向けて数々のことを行ってきた際に、彼女はそれに無意識に気づいていたのである。
"高校デビューに向けて"という響きからは想像しづらいかもしれないが、実際彼女がそのために行ってきたことはとても過酷なものだった。
誰も自分がいるものがいない超難関高に行くための勉強、部活動で爽やかに活躍するための運動、その他リア充とし生きていくためのおこなったことの数々。
その一つ一つであればただの努力で可能だったかもしれない。
しかしそれらを全て。
しかも元々は学力も並、運動能力は50メートルを走るだけで息を切らす、人見知り具合は人と目を合わすだけで心臓のばくばくが数分は止まらないほどだった彼女なのだ。
それら全てを自分に自信がなかった彼女が「これで高校でもばっちり!」と思える程に仕上げることは、ただの努力ではできなかったことであろう。
それを可能にしたことの一つが彼女の計画設定·遂行能力である。
一日の限られた時間の中で自分がやりたいこと全てを無駄なく行えるように計画し、それをただ毎日実行する。
色々なことに手を出して行く中で出会う、あまり自分が好きでないなと感じたことに対しても、それが必要なことであると感じているならば決して手を抜くことはなく。
息抜きも必要だよね! と設定したオタ活時間対しても、決めた時間を過ぎればすぐすべきことにまた向き直る。
そんな生活を毎日、ただ毎日続けてきたのである。
そしてもう一つはその計画自体を超効率的に立てる力を、彼女が持っていたことである。
出来ないこと分からないことには悩まない。だってそれってそれを解決する力が足りてないってことでしょう? だったらまずはその力を手に入れるために時間を使って後で戻ってこよう。
じゃあ問題を解くために必要なのはなんだろう? 詳しい解説みれば分かるのかな? いや、そもそも知識が足りていないんじゃないか? だったら小学生レベルのことからやり直して――いやいや幼稚園レベルから――――
と言うように、目標を達成するためにそもそも何が必要であるのか? それを直感的に瞬時に理解する力を彼女は持っていた。
そんな力をして立てられた計画は恐ろしいほどまでに効率的だったのだ。
その力が生まれつきであるのかは後天的であるのか分からないが――――しかしこの世界が普通の高校生になるはずだった彼女を最強と選んだのであれば、その要因の一つと考えられるくらいには彼女の立てる計画は効率的なものであった。
自分を変えようと思っていなかった時の彼女は自分の時間を無限にオタク文化に費やしてきたために気づいていなかったが、高校デビューに向けての行動を経てその力は覚醒していた――――
"高校デビューに向けて"と言う響きからは想像しづらいかもしれないが······である!
ともあれ、だから彼女は聞きたがっていたのだ。
自分が勇者として何をしたらいいかを。
元々が常に何かをしていた生活であったために何もしないと落ち着かないということもあっただろうが、この勇者と言う立場に対して自分はどうしていけばいいかの計画を立てるために、そのための情報を彼女は欲していた。
そして今、この世界の状況の詳細を聞いた彼女は自分はこれからなにをしていくべきかを計画していた――――
「うーん、なるほど······。じゃあ早速、勇者として私にも魔獣狩りをさせていただけますか!」
そんな彼女が導き出した答えはそれだった。
自分が不安で泣いていたことも忘れ、勇者としての目的を成すためにただの中学生だった自分がいきなり戦いの場に行くということを、彼女は元気よく笑顔で答える。大変であるかないかに関わらずそれが効率的だろうと。
加えて一点、ずっと憧れてきたあの子ようなリア充になろうと努力をしてきたのだから、そうなれるようにむしろ大変なことをしてみんな頼られる存在になりたい! という思いもあったようだが。
そんな答えは聞いたクーシャは「結局、やっぱりすぐそういうことをしたがるね······」となんとなく予想通りといった風に、今朝泣いていた彼女とは別人であるかのようににこーっと笑う愛香に対して若干苦味を含んだ笑みを向けたのだった。