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13.正体不明のソロプレイヤー_2


 「あ、フェー······フェイスレスさん! もう戻られたんですか、ちょうどフェイスレスさんのしていたところなんですよ」


 「こっちは一方的に認識してたがこうして話すのは初めてだよな? 俺はグレイ、よろしく!」


 噂していた筋肉隆々の仮面の男がそこにいることに気づいたミイナはさらっと笑い顔を営業用のものに切り替える。グレイにいたってはさも何事もなかったかのように挨拶をして見せた。


 人と話をして生きてきた人はやっぱり凄いな~とか愛香は謎の感心した。


 ――――少しの静寂。


 流石に何もなかったように振る舞うのは無理があったか······? 二人の表情からはそんな気持ちが読み取れる。


 対して仮面の男の表情からは何も感じられない。顔の上半分を仮面が覆っているからと言うのもあるのだが、そういう表面的なことだけではない。腕を組み微動だにせず、ただ立ち尽くす彼が何を言うのかということが何も感じられないのだ。


 自分が影で笑われていたことを彼は聞いていたはずだが、今彼は何を思っているのか。特に気にしていないのか、それとも心の内では憤慨しているのか――――彼が初めに何を口にするのか、不思議な緊張があった。


 ごくりと唾を飲み込む音が聞こえるような沈黙が漸く破られる。


 「······力を求めて顔も名前も捨てた存在――――顔なし(フェイスレス)だ。よろしく」


 空間にやや低い声が響いた。仮面に手を当てた彼から発せられたのは、胸に染み入るようになめらかな"いい声"であった。



 ―――――――ここに来てそういう挨拶なんですか!!!


 愛香は心中で思いっきり突っ込んでいた。


 

 自分のことを顔なしって自称するのは······まだ分からなくもないけども! 私からすればあぁ~そういうキャラっているかもねとか思わなくもないけども! もっと場を選んでそんないい声でスッとそう登場されたらどきどきしちゃいそうな感じもあるんだけども!

 だってこの人さっきあの二人の会話聞いてたよね? どっかズレてるとかなんか抜けてるってそういうところなのでは! っていうか"フェイスレス"なんて自分で名乗ってそこから"フェーさん"なんて言われちゃってる理由が私にもなんとなく分かりましたよ!



 横をみればグレイが顔を背けて咳き込んでおり、ミイナはどうにか営業スマイルを保っているようだった。(クーシェは普通に少し声に出して笑っていた)


 「······自分で笑うことが苦手だと自覚している俺だが、笑われること自体は嫌いじゃない。畏まられるよりもずっといい」


 そうぽつりと呟いた彼の言葉は、皮肉ではなく本当にそう思っているのだろう。表情からは感じられなかった柔らかさが感じられるものだった。



 さっきの自己紹介も緊張をほぐすものだったのかな? ······って感じでもなかった気もするんだけど、なんか影でフェーさんって呼ばれてるって言うよりかはそう呼んでもいいのかな?ってなるような、不思議な雰囲気の人だな······。



 愛香は改めて彼を見やる。

 顔半分を覆う銀色の仮面に、動きを阻害しないギリギリにまで筋肉をつけた大柄の体に腰まで届くほどの金髪をなびかせている。先程帰ってきたばかりであるにも関わらず鎧を着けていないその体に生傷はない。しかし至るところについている古傷と常人では振り回すことさえ難しそうな大剣を背負ったその姿からは確かに彼が強者であることが感じられる。

 だがそんな彼から威圧感だとか、恐怖感だったりといった、愛香が人からいつもどこかで感じていたような"怖さ"を覚えなかったことに驚きのようなものを感じていた。


 「で、俺は君たちについて行けばいいのか? 急ぐのであればすぐにでも出発できるが」


 「あ、いえ。お願いはさせていただこうとは思ってましたが、別に急いでいるわけでは······」


 「別に気を使うことはない。すぐにここを訪れたのであれば、ゆっくりしたいという訳でもないだろう」


 クーシェにそう答えたフェイスレスはちらりと愛香を見た。


 「改めて――――俺はフェイスレス。よろしく」


 「ああ、すみません! 私はクーシェ」


 「私は愛香······、久藤愛香です!」


 よろしくお願いしますと頭を下げ、顔を上げた愛香は彼と目が合うのを感じた。

 じっくりと自分の中の何かを見つめるような視線だったが、それはやはり怖さを感じるものではなかった。


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