12.正体不明のソロプレイヤー_1
「説明は終わったみたいかな、ミイナさん」
会話が終わるのを待っていたグレイが後ろから声をかける。
「あっ、グレイ。うーん、この状況で普段通りの説明はしてもあまり意味ないかなって世間話近くなっちゃったけど······。 魔獣倒しての報酬の受け取りとかはグレイ達と一緒なら要らないでしょうし」
「あー、まあ確かにそうなのかな。初心者はまずこれをやれ!とか説明する状況でもないか。それに正直始めに説明されたこと覚えてる冒険者なんてほとんどいないだろうし、ある意味いつも通りか!」
声をあげて笑ったグレイにミイナが突っかかった。
「ちょっ、グレイ? それどういう意味よ!」
「いや、ミイナさんの話がつまらないとかじゃないぜ!? 最初来たときなんて期待やら緊張やらで説明なんてほとんど入って来ないもんなんだって! なあクーシェ?」
「巻き込まないでよ······。私"は"ちゃんと聞いてましたよ」
「なんか"は"を強調した気がしたけど?!」
先代の受付達も泣いてますよ······ミイナはわざとらしく手を目に当てて泣き真似をして見せた。
「まーそれはそれとして、みんなは早速どこかに出発するつもりなの?」
「元々はレベルの低い魔獣の狩り場へ向かうつもりだったんですけど·····」
ミイナの質問にクーシェはそう答えると、きょろきょろ辺りを見渡す。その視線の先には魔獣狩りから帰ってきて食事をしながら駄弁っている冒険者達がいたが、英気を養っているのかその全てがべろべろに酔っぱらっているようである。
「ああそっか、あの2人が来れなかったから人数が足りてないんだよな」
「あー、そういえばそっか。すっかり忘れてた! じゃあまだ出発できないだね」
「忘れてたのかよ受付嬢!」
グレイの突っ込みにミイナはてへっと返した。
「? あの、どういうことですか?」
「冒険者ポータル側としては危険区域への少人数での転移は安全面で禁止してるのよねー。最低四人からになっちゃうから、あと一人はいないといけないんだけど······」
でも今の時間だと手が空いてる人も暫くいなそうかなぁ~。うーんとあごに手を当ててうなるミイナ。
「あ! 手を貸してくれそうな人っていったら、フェーさんはそろそろ1度戻ってくるかも」
ぴこんと閃いた風に指を立てたミイナに、元々冒険者としてポータルを訪れていたクーシェとグレイが反応する。
「フェーさん?」
「ああ、あの人か! 最近来てないクーシェは知らないかもしれないけど、災厄に乗じて現れた奴等の中でも変わり者扱いされてる、一人で黙々と狩りを続けている正体不明のソロプレイヤー!」
ぴくっ、愛香は体を揺らした。
グレイの言葉に愛香は引っ掛かるものがあったようだ。
「ソロプレイヤー······」
ぽつりと愛香が呟く。
――――ソロプレイヤー、しかも正体不明と来た。グレイさんの言い方的にもきっと結構凄腕で、私のオタク的イメージでもクールで格好いい人なんだろうなって気はするんだけど!
どうしてもその言葉を聞くと小学生の時を思い出すのだ、ソシャゲをやってみたけどギルドに入るのが怖くてぼっちでイベントをこなしていたときのことを······。結局一人できること少なくてすぐやめちゃったっけ。
もし私みたいな人だったら仲良くなりやすそうな気がするんだけど······。
「ってあれ? さっき聞いた四人からじゃないと行けないってのと矛盾するような?」
「確かにそうだけど、ここから転移石の使用の時だけの制約だからな。帰ってくるときは······人数変わってることもあるから一人でも問題ないし。向こうに行くときだけは他の人と相乗りしては一人で黙々と狩りをしているって話らしいぜ」
「安全性での制約なんだからポータル側としては推奨できないことだけど······なんというか、そういう心配をさせる雰囲気の人じゃないのよね~。もうぱっと見ればわかる感じに。実際みんなから離れたところを独占するようにかなりの量の素材を持って毎回帰ってくるし。ただ······」
言葉を切ったミイナを見てグレイが吹き出した。
「そうそう。本当に見ただけで強い!って分かる雰囲気出してて孤高を気取ってそうな癖に、影では"フェーさん"なんて呼ばれるほどにどこかズレてるんだよな!」
「そうなのよねー! 口数も少ないのにどこか抜けてるというか、かわいらしいのよね~。あんな変な仮面を着けた筋肉隆々男のくせに!」
共鳴するように互いに笑い始めた二人だったが、残る二人は釣られることはなくそーっと口を開く。
「それって······」
「あんな風にですか?」
愛香の指差した先には仮面の男が立っていた。腕を組んでこちらをみながら。
誤字報告ありがとうございます。
結構恥ずかしい間違いだったので気を付けます······。




