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11.受付嬢さんからのお話


 「ようこそ、冒険者ポータルへ!」


 受付嬢はどん!という効果音が見えそうな声でそう言うと、これ言うのも久しぶりだなぁ~とうんうんと頷いた。

 

 「はい!」


 合わせるようにとりあえず元気に返事を返した後、ぺこりと頭を下げる愛香。


 「クーシェさんに連れて来られて来たみたいだけど······新人さん、よね?」


 「そうです! ほんとに何もかも分からないので、冒険者ポータルについてまずは色々教えて貰ってきてねとクーシェさんに」


 そう答えると再度、頭を下げる。


 「なるほどなるほど。いやぁ~最近になって冒険者ポータルに突然来るようになったって人は······実は色々いたんだけど。みんな元々冒険者に興味はなかったけどこんな状況だからやって来た~っていう各地で修行を積んで来た猛者!みたいな感じだったから、とっても新鮮」


 そんなことを言いながら上から下へと眺めるように愛香眺める受付嬢。


 「うーん······ちょっと魔力は強いみたいだけど、びっくりするくらい初心者って感じよねぇ」


 「あはは······。大変な状況なのになんかごめんなさい」


 クーシェさんから貰ったアクセサリーのお陰で魔力は押さえられてるってことなのかな?自分じゃ全然分からないけど最初に見れば分かるほどの凄い魔力みたいなこと言われた気がするし。

 まあ勇者だろうがほんとになんにも分からないんだから完全に初心者として扱われるのはありがたいかも。


 「いや、こちらこそごめんなさいね。むしろこんな状況だからこそ、新人さんを大切にすべきだとは思ってたのに。改めてよろしくね、えっと······」


 「あ、愛香です!」


 「よろしくね、愛香さん。私はミイナ、まあ受付さんで大丈夫だけどね」


 さて、では早速ですが······とミイナは説明を始めた。


 「冒険者ポータルとは! 世界中のありとあらゆる場所へと繋がる転移石が配置され、依頼を受ければすぐにその場に飛んでいけるという、従来各町にあった冒険者ギルドとは一線を期す画期的なものなのです!」


 「お、おおぉ~?」


 そもそも従来と言われても分からないので微妙な反応をする愛香。


 「まあ冒険者ギルドがあったのって何百年間前の話らしいからこれは正直どうでもいいんだけど······」


 じゃあ何故説明を? と思った愛香だったが、代々受付嬢に引き継がれてきた由緒ある説明なので毎回説明しているらしい。


 「まあ要するに冒険者が集まっては依頼を受けて色んな場所に向かっていくための出発地点みたいところね。依頼の種類もぴんきりで、どぶさらいに猫探しのようなものから魔獣退治まで。他にも依頼とは関係なく突然現れた謎のダンジョンの探索に向かうーなんて人もいたりと。

 老若男女、力のあるものもないものも、いろんな種族が集まってはみんながみんなやりたいことをしに来るのが冒険者ポータル!みたい雰囲気のところだったんだけど············。

 今は力のある冒険者たちが日々忙しなく魔獣狩りに駆り出されつつ予兆に備える場所、ってなっちゃってるのが現状なんだけどね」


 ミイナは部屋内に点在する冒険者に目をやる。先程グレイに注目した愛香は気づかなかったようだが、見やれば獣耳の生えた獣人や耳の長いエルフ、背丈の低いドワーフのような人間でないものたちが集まっているようであった。


 「英雄の戦死のいざこざで、種族間で色々あったけれど、それでもここではまだまだいろんな種族が集まってる。人間はほとんど来なくなっちゃったけどね、街からのポータルの入り口を閉ざしちゃって。英雄の属していた人間は特に混乱が凄かったみたいで、彼が戦死した後で混乱のもとになるポータルへの入り口に蓋をした······らしいわ」


 まー、私はポータル内で生活してたからよく知らないんだけどねーと笑いながらミイナは続ける。


 「あ、でも私は人間よ? 愛香さんも見たところ······人間よね? クーシェさんにどういう経緯で連れてこられたのかは分からないけど、その辺りは流石に知ってたかな?」


 「いえ、私もずっとクーシェさんの村で生活していたのであまり詳しくはなくて·····。英雄さんはそれほどに凄い方だったんですね」


 とりあえずそれとなく話を合わせる愛香とそれを聞いてふふんと胸を張るミイナ。


 「それは凄い方だったのよ! 冒険者なら知らない者はいない、冒険者でなくても人間なら誰でも知っている! 圧倒的な力を持って各地の邪龍を調伏をして回った英雄、その名をスタアってね!」


 「な、なるほど·····!!」


 この早口で捲し立てるように語る感じ、ネットで噂に聞いたオタクみたいだな! 友達いなかったから実際知らないけど!


 「······というように、同種族ってだけで私がこんなに誇らしげに語れるくらいの方だったのよ。まあ確かに、騒ぎになるのも分かるかなって。だって、あの方が戦死したなんて今でも信じられないもの」


 「······ミイナさんにとっても、やっぱり憧れの人だったんですか?」


 「そうね······。今のを見れば分かるかもだけど、他の人よりちょっと熱心なくらいには子供だった私にとって憧れの人だったかなぁ、冒険者になるきっかけになったくらいには。あはは」


 「ミイナさんも冒険者だったんですね!」


 「そうね。予兆に立ち向かっている人たちと比べて負けないくらいには腕に自信の有る冒険者! ······だったんだけど、ね」


 そう言いながら彼女は自分の、少し膨らんだお腹をさすった。

 頭にはてなを浮かべた愛香だったが、どこか愛おしそうなミイナの顔を見て察したようだ。


 「あっ、おめでとうございます······!」

 

 「こんな時期に······って思うかもしれないけど、気がついたらね。旦那もずーっと魔獣狩りに出ててたまにしか帰ってこないし。まあ帰ってくるだけで幸せだーなんて思わなくもないんだけど······」


 「············」


 「あっ、ごめんなさいね! 脱線した上で湿っぽくしちゃって」


 ミイナは空気を変えるようにパンパンと手を叩くとびしっと指を愛香突き出した。

 

 「というわけで! 冒険者の第一歩は死なずに初めの冒険から帰ってくること! 悲しむ人は必ずいるんだからね!」


 「はっ、はい!」


 話を聞いてこの世界の現状についてを改めて認識し、愛香はぎゅっと拳を握りしめた。


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