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その13

 さて、そう言うわけで始まった【クレハの私物捜索クエスト】であるがこれがなかなかに難航を極めた。

なぜなら、今回回収するべきクレハの私物の多くが、先の襲撃や火事場泥棒の被害で焼失あるいは盗難されていたからだ。


それゆえに、初めからすべて回収するのは不可能だとは理解しているものの、それでも自分はプロの星屑としてのプライドゆえ、できるだけすべてを持ち帰るための努力はした。

具体的には、地元ギャングの建物に誠意をもって訪ねてみたり(※宇宙船ごと正面玄関にお邪魔させながら)、闇マーケットの競りに乱入したり(※ギャングのところで回収した戦利品も売りさばけた)、傭兵ギルドに喧嘩売ったり(※義理娘に少し喧嘩の仕方も教えることができた)することとなった。

おかげで、かなりの数のターゲットは回収することができ、いくつかの副収入も得ることができた。

が、それでもまだ回収できていない場所が残されていた。


そう、それこそが【ジートライ第50軍事基地】。

そこはジートライ北部にあり、劣悪な天候とほとんど開拓されてない周囲のインフラにより抜群の地形的防衛力を誇る。

その上この基地の責任者はジートライ王族でも指折りの実力者であり、軍閥内でもかなりの大物だそうだ。

そんな彼の命令のおかげで、この施設内にいる軍人や兵器も選りすぐりのエリートばかり、このジートライ内でも指折りの攻略難易度を誇ると言う噂だ。

自分としても地元ギャング程度なら何とか出来る自信はあるが、軍事施設となれば話は別だ。


普通に考えればこんな場所にある時点でその荷物の回収は無理だとあきらめてもよかった。

しかし、ここまで無茶を重ねたのならば、最後まで無茶を押し通したかったし、そもそもなぜクレハの荷物がそんな場所にあるのかと言う興味もあった。

それゆえに、自分は今回は少しいつもと違う方法をとることにしたのであった。


即ちそれは、他の人の力を借りてでも今回の仕事をやり切る。

自分以外の星屑と組んでこの軍事基地に侵入するのであった。







「~~~♪~~~~~♪♪」


「……あ~~、一面くそホワイト。

 これ、本当に方向あってるんだよな?」


格安で購入した雪上用ソーサーを運転しつつ、ふと外を眺める。

が、そこには時々映る小さな針葉樹以外は、一面の白銀世界という、相変わらずの変わり映えしない光景しか広がってなかった。


「おいおい、周囲警戒はこっちの仕事とはいえ、運転とナビゲート自体はそちらの仕事だぞ?

 私に聞かないでくれよ」


そう尋ねた自分の隣で、今回の【相棒】である彼女は一旦その鼻歌を止めて、くすくすと笑いながらそう答えた。

時間は昼時、されど決して明るい印象は受けず。

ナノマシンの残骸と雪でできたブリザードは容赦なくこちらの視界と方向感覚を狂わせくる。

無論、自分は体内に内蔵されたハルとの途切れかけ通信機と義娘のかすかなテレパシーのおかげで、ある程度は迷わずに運転出来ているつもりではあるが、それだって本当に正しいかわからない。

そんな自分の不安を紛らわすために、再び懐のポシェットを探った。


「……ん、鶏肉とチーズと根菜にアノマロカリスの燻製があるけど、次はどれが喰いたい?」


「お!それならチーズと肉をお願いするよ」


「またか、鼠だけに?」


「鼠だけに!」


彼女はいい笑顔を浮かべながら、こちらが取り出した2種類の燻製を受け取った。

その幸せそうに咥える彼女の横顔を脇見に、自分用に取り出した燻製も口に入れる。

これらの燻製はどれも新地球で和牛人間たちに作ってもらったものである。

そのため、人間用に調節された保存食であるが、どうやら幸運なことに別宇宙人であるはずの彼女であってもこの燻製の味は楽しめるようだ。

上品な食べ方ながらも、あっという間にその燻製を食べきってしまった。


「ふふっ、ありがとう、おいしかったよ。

 ……で、出来ればもう一ついただけないかな?

 どうやら、思った以上に熱量(カロリー)が足りなくてね、このままでは仕事に支障が出てしまうかもしれないからね」


「ばーか、これに乗る前に大皿4つほどの飯は食っていた奴が何を言ってるんだ。

 それにお前は自分用の保存食だって持ってるんだろ?ならそっちを先に食べろよ。

……で、次はどれがいい?」


「君のそう甘いところ、大好きだぞ。

……そうだな、次はピリ辛味付けのを頼む。

何せ、ここからは徒歩でいかなければならなさそうだからな」


「……うっそだろ、おい」


しかし、どうやらこの退屈な運転とつまみ食いを続けるだけの作業はどうやらここで終わりのようだ。

ブレーキを踏み、改めて窓の外を眺める。

そこは相変わらずの一面の猛吹雪が吹き荒れ、こんな中無防備に外に出ようものならあっという間に凍死してしまうだろう。

さっきまでは美しくも退屈なものしか見えなかったその雪景色が、今では氷結地獄の一丁目にしか見えなくなった。

出来ることなら一歩たりともこの暖かいソーサーの中から出たくはない、炬燵から出たくない気分レベル1億といったところであろう。


「……わかっているとは思うが、今から地中や空から侵入しようと言う提案は無しだ。

空から行くには衛星が邪魔だし、下から行けば雪中探査機で奇襲される羽目になる。

ソーサーで走り続けるのは隠密的に論外、それゆえにここからは徒歩で雪上を歩くのが一番安全なルートだ。

 それは事前に何度も相談し合っただろう」


此方の心の内がバレたのだろう、彼女は此方に顔を近づけつつ釘を刺してきた。

自分の考えが読まれた事をわずかに恥じながら、頬を掻きつつ返答した。


「……わりぃ、顔に出てたか?」


「全然?でも残念ながら私には分かってしまうからね。

さ、互いに覚悟を決めてこのぬるい箱舟から飛び出すとしよう。

何せ、これからお互い星屑としての大仕事になるからな。

 仕事第一でめんどくさがらず恥ずかしがらず。

 ぜひぜひこちらの手を取って、一緒に外に出ようではないか!!」


彼女はそう高らかに宣言すると、パッとソーサーから飛び降り、此方に向けて手を伸ばしてきた。

その自分よりも小さい体格ながら大人びた雰囲気と余裕ある笑み。

彼女の言動と合わせて明らかなベテランの星屑風を吹かせているのに、それが嫌味にならないほどに似合っていた。


「……えいっ」


「えっ、ちょ……きゃっ!」


だからこそ、それを崩したくなるのは人としての仕方ない心理ではなかろうか?

彼女の手を取ったまま念動を発動させ、今まで余裕たっぷりの様子であった彼女を浮かせる。

現在の自分は機臓による薄皮バリアを展開中ゆえに、彼女が本気さえ出されなければ触れることくらいは容易だ。

かわいらしい悲鳴を上げた彼女の様子にほほえましさを感じつつ、そのまま体位の念動でコントロールをする。

そして、最終的には彼女の腰が此方の肩の上に座るように着地させたのであった。


「ちょっと、い、いきなりはびっくりするじゃないか!

 それに、この格好はいろいろと恥ずかし……!!」


「くっくっく!何が恥ずかしいんだ?ここには俺とお前以外誰もいないでだろ?

 それにお互いプロだ、なら上空も警戒するならこの姿勢は効率がいい、そうだろ?」


「ば、バカなことを言うな!

 い、いや、確かに上空の偵察機を警戒するには少しは意味があるが……

 それにしたってこの体位はないだろ!」


「いやいや、ちゃんと意味はあるって。

 それにもしお互いこのままバラバラに歩けばいざというときにブリザードやらではぐれる可能性がある。

 そして、お前はこのままだと雪上歩行と索敵にナビゲートと、念油と電力を無駄に消費することになる。

 ならば移動とナビをこっちにまかせられるこの方法がお互いのリソースをできる限り減らさない効率のいいやり方なのではないか?」


「うう……!!

 そ、そういうときだけそれっぽい理由を見つけるとは……!!」


肩の上にのったまま彼女が文句とともに、尻尾で背中をパシパシと叩いてくる。

勢いで仕掛けてみた【肩車】ではあるものの、どうやら彼女には非常に好評なようで日頃ではめったに聞けない焦る声を聞くことができた。

まぁ、唯一の心残りはこの肩車という姿勢の都合上、恥辱で顔を赤くしているであろう彼女の顔を直接この目で確かめられなかったが。


「うぅ~!!ならちゃんと目標につくまでは意地でも肩車を続けるんだな!

 重いって言っても許さんからな!」


「ははは、残念ながら女子一人乗せる程度でへたれるほど軟弱じゃなくてな。

 でも殺人酵母だけは勘弁な!」


かくして、自分達はクレハの私物最後の物を回収するために、星屑の知り合いである【マウス】を相棒に、ここに潜入することにしたのであった。

なお、ハルと義娘はお留守番であるため、本当に2人旅であることも付け加えておこう。



「……思ったよりは、早く着いたな」


「本当に肩車したままここまで来るのかよぉ……。

 ここまでするんなら、責任ぐらいとってくれればいいのに」


さて、肩の上に相棒を乗せ、その太ももの温もりを楽しみつつ雪原を歩くこと数時間。

今は目の前に巨大な合金壁がそびえたっていた。

【ジートライ第50軍事基地】

首が痛くなりそうなほど高いそれに感心しつつ、おもむろに地面にある雪を拾い、石を詰め、投げぶつけてみた。


「そんなことやっても無駄だよ。

 残念ながら、この多重攻勢防壁は単純な防御力もかなりあるんだ。

 投石や暴風程度はもちろん、銃撃やナパーム、ミサイルに戦車砲、果てには戦艦砲に衛星爆撃ですら傷1つ付けられない。

 この惑星で3番目に堅固な防壁とされているんだ、念力を混ぜた投石ごときではびくともしないさ」


が、残念ながら微塵も効果はなし。

彼女のセリフを裏付けるかのように、防壁には傷1つついておらず、ついでにぶつけたはずの雪玉が中の石ごと、電気ネットに触れた羽虫のごとくはじけ飛んでしまった。


「……攻勢防壁の名前は伊達じゃないってか。

 こんな辺境の防壁で、このクオリティの防壁は、それだけでエネルギーの無駄遣いだろ。

 年がらこれを稼働させてるって、どれだけの念油と電力をつかってるんだか」


「私もそれには同感だ。

 さらに言えばこの防壁には対念力障壁に対予知障壁、モボ木材とメタン層にクロノ合金まで使用しているときたもんだ。

 何層何種類もの障璧を年輪のごとく重ねている特殊な防壁ゆえに、酸にしろESPにしろありとあらゆる種類の攻撃をも無効化する万能の防壁と銘打ってるらしい。

 本当にバカらしい、こんなド田舎の基地にそんなたいそうな防壁を作って誰が得するというんだ」


マウスはピンと指を立てながらそう言うと、その指先に靄を集め、ボーリング大の黒玉を形成する。

そして、えいやという掛け声とともにその黒玉を防壁にぶつけた。

その着弾と共に、先ほどの雪玉とは比較にならないほどの激しい電流と火花が飛び散る。

金属が解ける独特な鉛に近い臭いと濃厚な酢のようなにおいが周囲を支配する。

……が、しかし、それでもその黒玉は防壁に小さな凹みを作るだけで、貫通するまでに入らなかった。


「……お前の【菌塊】でも止まるのか。

 本当にこの障壁の堅さは狂ってるんだなぁ」


「む!失礼な、無論私とて本気を出せばこの程度の防壁の1つや2つ突破して見せるさ!

 ……でも、この防壁を突破できる菌と酸をつくるには、それこそ膨大な下準備と熱量(カロリー)が必要だからね。

 単純に割に合わないからしない、それだけの話さ」


なお、この【マウス】は以前も言った通り、基本スペックは全身菌とウィルスまみれの毒袋疫病星人である。

対生物戦闘に強いのはもちろん、無機物や機械にすら作用する程の訳の分からない菌をも体内に飼育しており、なによりそれらを制御する為にすぐれた精神波と予知能力を持っている。

が、今回ばかりは少し相性が悪かったようだ。

なぜならこの多層防壁には断層ごとに材質が違い、もしこの壁を完全突破したいのならばそれぞれの断層に合わせた菌で対抗しなければならないからだ。


「それにあんまり本気を出してしまうと、君の見せ場がなくなてしまうからね。

 さ、私の役目は終了した、遠慮はいらない、君の能力でパパっとこの程度の壁を何とかしてくれたまえ」



そうは言いつつも、マウスは声色から悔しさがにじみ出ているのが何となく感じられる。

肩の上に乗ったままの彼女が太ももと尻尾が此方に早くしろと訴えかけてくる。

それと同時にマウスが読み取ったであろう無数の壁に対するデータが此方の脳裏に送られてきた。


「……全長はあほみたいに長いドーム状、厚さはかなり。

 防弾性防光性は異常、対テレポート対サイコキネシスもグレード4相当ときたか。

 ……ま、辺境の星にしては頑張った方ではあるな」


頭に送られた壁に対するデータを反芻し、次元刀を取り出し、それを開放する。

ポシェットに詰めておいたカートリッジで念油を補充し、視界を変化させ、データを同調シンクロさせる。

難易度は低いが失敗は許されない。

腰を落としてきちんと構えをとる。


「お、久々に本気を出すのか?」


「……まさか、でも最近運動不足だからな。

念のためというやつだ。


 ―――次元流、空の太刀。

 ―――ESPコード【双通】―――」


蒼い刃でその防壁を切りつけるとともに壁面が裂け、孔が開いていく。

次元刀を振り終わると同時に、防壁にはきれいなトンネルが出来上がっていた。

その早速出来上がったトンネルの断面をしげしげと覗き込見ながらマウスはこう呟いた。


「切断面からの崩壊もないし、警報もなってない、なのにきっちりと安定している。

 ……うん!相変わらず見事な腕だ、安心した。

 君ほどの腕のテレポート能力と戦闘力を兼ね備えている奴なんて珍しいなんてもんじゃないからね。

しばらくまともな星屑として活動してないと聞いたけど、これなら全く問題なさそうだ」


「おいおい、まさか疑ってたのかよ?」


「いやいや、まさかまさか、君に限ってそれはないと思ってたよ。

 ……そう、例え、君がいつでもほかの職種に転職できそうなほどの熟練のテレポーターであっても~~?

 私の知らない間にとある地方盟主のお気に入りになっても~~?それで安定した固定収入も得ているらしくても~~?

 ましてや、それ以降急に私からの連絡も、共同依頼も無視して~~??

 その後の連絡もなしで~~??知らない田舎惑星に引きこもったという情報を得たとしても~~??

 ……君ならば星屑をやめず、再びここに戻ってきてくれると信じていたからね、からね!!」


肩から飛び降りながら彼女が此方の顔を痛いほど見つめながらそう宣言してきた。

……なぜだろう、これだけを聞くとすこしだけ、自分が地味な鬼畜野郎に聞こえなくもない。

しかし、自分は星屑として特別彼女と組んでいたという訳ではないから不義理でないかと聞かれれば問題ないのではなかろうか?

ましてや彼女とはクランだって違うし、仕事に対するスタンスも結構違ったはずだ。


「ふぅ……いやなに、別に怒っているわけではないから安心したまえ。

 ただ少し、久しぶりに君と再び仕事ができ、また【殻割り】……いや【開け師】として腕も落ちてないとわかり、少し興奮してしまっただけさ、本当だよ」


うっそだ~ぁ、と言いたいところであったがその言葉をぐっと抑えた。

そう、自分は空気が読める男なのだ。

だから決して彼女のしっぽが此方の手に巻き付いていることや彼女の体から比喩ではなく黒い靄が出ている事に恐怖を感じたから発言を停止したわけではない。

ないったらないのである。


「……中は結構普通だなぁ」


「そうだね、きちんと警備の薄いところから入るようにしたからね」


いやな予感を振り切り、トンネルを抜けると、そこはあっという間に基地の内部。

先の猛吹雪とはうって変わって穏やかな空気が流れ、防寒用の外套ではむしろ暑さすら感じられるほどであった。


「……まさかのこの基地内、全部暖房が利いてるのか?

 これこそまさに金の無駄遣いだろ」


「兵器の状態を悪化させないためだろう。

 にしても、それにしたってやり過ぎという意見は全面的に賛同できるがね。

 ……っと!いけない、少し話し過ぎたようだな」


彼女の耳がピクリと動くのに反応して、自分も急いで横に飛び跳ねる。

それと同時に先ほどまで自分がいた場所にレーザーが飛び、床が炸裂した。

何事かと撃たれた方向を確認すると、そこには一つの鉄球のような物が浮かんでいた。


「……軍用の自立警備機械。

 空中浮遊タイプ、しかもESP機能搭載ときたか。

 随分と奮発してくるなぁ」


「ふむ、どうやらおしゃべりが聞かれてしまったようだね。

 こんなに早くバレるのは予想外だが、あれはハック対策か、通信具の類がついていない完全自立タイプだ、さっさと倒せば侵入もばれないだろう」


しかし、そんな軽口を言っている間にその警備ロボが放つ銃撃音と爆撃音が他にも伝わったのであろう。

第2第3の警備ロボが続々と此方に近づいてきた。


「……う~む、どうやらあんまり歓迎されてないみたいだがどうする?

 いったん静かになってから出直すか?それとも無理やり押しとおるか?

 ああ、もしくはすべてをあきらめて帰るって言う手もあるぞ」


次元刀の刀身をタワーシールドのように変形させ、マウスを庇う。

すると盾体にあたった弾が、実弾エネルギー弾関わらず盾を這うかのように反れ、壁や天井を傷つけた。


「無意味な質問はやめたまえ。

 それにすでに我々は侵入した時点でこの基地に喧嘩を売ったんだ。

 ならば、警戒される前に仕事を済ませる、そうだろ?」


「……まぁな、ならこの警備機械はどうする?

適当な地点で巻くか?」


「いや、そんな面倒な事をするくらいなら全部破壊してしまおう。

 何なら土産用に回収してくれたってかまわないさ」


「……ん、それじゃ行くぞ」


その言葉とともにマウスが自分の背後から、盾越しに警備機械に向けて無音の銃撃を放つ。

すると彼女の放った弾丸だけはまっすぐ盾体をすりぬけ、その浮かんでいた警備機械へと命中した。

無論、市販レベルの銃で撃たれただけで壊れるほど軍用警備機械は脆くはない。

が、空中浮遊型ゆえにその衝撃であっさりと体勢を崩し、銃口が明後日の方向へとずれてしまった。

当然、その一瞬の隙を見逃すほどこちらも甘くはないので、盾状にしていた次元刀を再び刃へと戻し、攻撃へと移行する。


「次元流空の型

ーーー【八つ側】」


次元刀と自分の空間移動能力(テレポート)を活かして、斬撃を分割し跳躍させ、此方に向かっていた3を超え8つの警備機械を同時に真っ二つにした。

どうやら、この警備機械はそこまで強い対テレポート装甲ではない上に、動きも速くはないようだ。

これならば例え同時に何体来たとしても問題なく壊すことができるだろう。


「ふむ、どうやら本当に微塵も問題ないみたいだな。

 最悪の場合は、私がべっとり警護するなんてことも考えていたが、いい意味で予想外であったよ」


「当たり前だ。

 なんなら、代わりにお前を警護してあげようか?

 機械相手ではお前の自慢の菌でも一苦労だろう」


「おっと、冗談はよしてくれよ。

 こちらはゆっくりしていた君とは違って、ずっと最前線にいてね。

 この程度の相手はもちろん物の数ではないし、そもそも今回は潜入任務なんだ、戦うだけが能じゃない」


マウスがそういうとともに、彼女の体から若草色の靄が出る。

それが先に見た攻撃用とは違うものの、別の菌の一種だということは容易に想像がついた。


「ふむ、事前の地図とは結構構造が違うな。

 なに、先達は任せろ、その代わりに置いて行ってしまっても文句を言うなよ?」


「冗談、こちとら体感年数10年や20年過ぎた程度で劣化するような鍛え方してないんでね。

 そっちこそむしろ、下手なトラップを踏むなんてへまはよしてくれよな」


こうして、自分達は、周囲から迫りくる警備機械と警備員の足音を背に、この【ジートライ第50軍事基地】の奥へと侵入していくのであった。

感想&誤字報告ありがとうございます!


当初予定していたイベントが全然別物へ変化したけど、特に問題ない……はず


感想をいただけると嬉しいです、泣いて喜びます

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