9話
時間をください( ̄▽ ̄;)
お婆ちゃんと暮らしていた家を出てから、三日ほど。私はまだ、馬車に揺られている。この馬車は、ジェームズおじさんの商会のものらしく、おじさんがあっさりと乗せてくれた。代わりとして初級魔法薬を数十本を渡したのだけど、おじさんと御者の人に驚かれてしまった。おじさん曰く、乗車賃としては高過ぎるらしい。……一杯余ってるから、私は困らないんだけどなぁ。
そんな事がありながらも、漸く"王都エリシオン"に着いたらしい。都市を囲んでいる高い壁が見えてくる。恐らく、魔獣対策の一つなのだろうけど……効果はあるのだろうか?
私が今いるこの国は、"アンブロシア王国"と言う。世界でも、有数の大国だとお婆ちゃんに習った。武力では、お隣の"ヴァレンス帝国"や竜の国"ニーズ皇国"には敵わないものの、魔術師に数では他を圧倒しているらしい。
そして王都には、この国唯一の国立の学園がある。私は、その学園の"魔術科"というところの編入試験を受けることになっているらしい。他の学科と比べて、遥かに高額な受験料と学費を払う必要のあるこの学科は、基本的に貴族専用みたいになっていると、おじさんが言っていた。……と言っても、私にはその費用を払えるだけのお金があるらしいので関係ないみたい。
「セレネちゃん、もうすぐ王都に入れるからね」
「……はい。おじさん、お婆ちゃんが王都に入るためにお金がいるって言ってたと思うんですけど。私、今お金を全く持ってません………」
「あぁ、大丈夫。おじさんが払っておくからね。高々銀貨一枚だし、この魔法薬で十分過ぎるしねぇ」
「そう、ですか?有難うございます」
王都に限らず、この国では大きな都市へ入る際に、幾らかお金が必要になる。
この国の貨幣は、価値の低い順で石貨、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、真銀貨の六種類ある。通貨の単位は"リン"だ。数字に直すと、石貨から順に1リン、50リン、500リン、5000リン、10万リン、100万リン、となっている。尤も、真銀貨は貴族間や大商会の取引でしか使うことはないとおじさんは言っていた。
そんな話をしていた間に、王都の入場門まで来ていた。なんでも、商会用の入口があるとかなんとか……。
「ちょっと良いか?」
「ん、何ですかな?」
恐らくは、門番なのだろう騎士の格好をした男性が馬車を引き留めてきた。何事だろう……。
「……すまないが、中を改めさせていただきたい。先日、魔獣を運び込もうとした愚か者がいたんだ」
「それはそれは、ではどうぞ。……あぁ、中にいる女の子には手を出さないでくださいよぉ?」
「……ローゼス商会は、奴隷商売でも始めるの……か……」
「どうも、初めまして……」
騎士の人と眼があったと思ったら、驚いた表情のまま固まってしまった。私の格好、そんなに変かな?今の私の格好は、おじさんに貰った冒険者用の服だ。革製で丈夫だし、動きやすいデザインなのだけど、スカートの丈が短い気がする……。おじさんが「似合ってるねぇ」と言うのでそのまま着ているけど、少し恥ずかしい。そんな服の上に、フードを羽織っている状態だ。私の容姿は目立つらしいので。流石に、馬車の中ではフードを被ってはいないけど。
「はっ!お嬢さん、少し失礼しますね」
「はい、あの……大丈夫ですか?顔が赤いですよ」
「いっ、いえっ!お気になさらず!……では、確認も終わりましたので、もう行ってもらって構いません!」
騎士の人はもの凄く顔が赤かったので、熱でもあるんじゃないかと思ったけど、元気そうだ。明らかに私の方を見ないようにしながら、素早く荷物のチェックを終えていた。……そんなに私の格好はおかしいのかな。
「ああ、君。これを忘れているよ」
「はぁ……。って、貰えません!上司から、ローゼス商会は入場料は受け取らないようにと……」
「違うよ、それはあの娘の分だよ」
足早に去ろうとしていた騎士の人をおじさんが引き留め、一枚の銀貨を渡していた。私の入場料らしい。確かに、私の分は払わないといけないよね。後でおじさんにお礼を言わなきゃ。
少し口論していたようだけど、少ししたらおじさんは戻ってきた。どうやら説得出来たらしい。流石、ジェームズおじさん。
「さて、あの騎士に聞いたらねぇ。編入試験は明日らしい。今日は、内の商会に泊まったらいいよ」
「……有難うございます、何から何まで」
「いやいや、これくらいはねぇ。あっ、そうだ。これを渡しておくね」
手渡されたのは、二枚の金属板だった。見たことのない魔方陣が刻んであるので、魔道具の一種なのは判るけど……。
「おじさん、これは?」
「それは、ギルドがやってる銀行の"預金板"だよ。片方が婆さんので、もう片方がセレネちゃんのだ。ギルドに預けてあるお金と素材全部が確認できるし、それを使ってお金等を引き出すんだ。絶対になくさないようにねぇ」
「はい!……えーと、おじさん。数字がおかしくないですか?」
「いや、そんなものだよ。婆さん、色々儲けてたし、セレネちゃんは魔法鞄が高値で売れてたからねぇ」
私は、直ぐに確認したけど……色々おかしかった。お婆ちゃんの方は、伝説級の素材がたくさん有ったし金額も百億を越えていた。一方、私のは素材は全くないけど金額はお婆ちゃんの半分くらいもあった。一体、あの魔法鞄を幾らで売っていたのだろうか、この人は……。
「さて、明日に備えて商会に着いたら休みなさい。セレネちゃんなら特待生も夢じゃないんだからねぇ。お金は、明日の朝に渡すから」
そう言われると、言い逃れなんか出来ない。だって、私の為に言ってくれているのだろうから。
おじさんの言うとおり、休むとしよう。……でも、"特待生"ってなんだろう?
「あ、えっと、頑張り、ます……?」
よく分からないので、私は首をかしげながら返事をするとおじさんは凄い笑みを浮かべていた。あと、御者の人が、こっちを見て鼻血を出していた。大丈夫だろうか。
それからのおじさんは、何故か一日中機嫌が良かった。……おじさんって、よくわからない人だなぁ。
次回から、本格始動……ですかねぇ。
貨幣価値等は大雑把に決めていますの、こっちの方がいいというのがありましたら、教えていただけると幸いですm(__)m




