05「食事しまくれッ! あぁ…塩気が足りぬぅ…」
王都フォリージェ、80万の人口を誇る大都市である。中央部には王宮が堂々とそびえ立ち、圧巻の賑わいを見せている、大国ホアーリィの首都である。
◇しばらくして
「へ〜。この国ってホアーリィって言うんですね」
「なんだい?お兄ちゃん。知らなかったのかい?」
「まぁ…そうですね。どうですか? そろそろ焼きあがりますかね?」
俺たちはアスラに出された授業の一環として街へ出て買い物をしている。予算は銀貨一枚。それぞれ別行動。有益な買い物をすることが目的である。
自分にとって何が有益か。俺はそれを考えていた。情報を集めることが良いのではないのだろうか。そう考えたのだ。そして何の情報か? それは食料事情である。どんな生物でも食べなければ生きていけない。王城にいれば食料は食べれるものの、いつか出ていく時も来るであろう。
その時のために、食料の価格や味、栄養価については調べておく必要がある。
「はいよ!兄ちゃん。バルバードの串焼きだよ! 銅貨3枚ね。」
「銀貨でもいいですか?」
「はいよ! お釣りは銅貨7枚と大銅貨9枚ね。」
鳥の串焼きが1本300円か。ちょっと高いか
まぁ、そんなもんだろう。
味は…。
「う〜ん。なんだかなぁ。」
圧倒的に塩気が足りない。タレも塩ダレも…塩コショウですら振られていないただ焼いただけの鳥であった。
聞けば、塩は高価なものらしい。またコショウのような物は発見すらされていないことがわかった。
その後、バンケルン商会という最近勢いづいている商会直営の商店へ行き、紙と書くものを購入し、そこに記した。紙と言っても不純物混じり混じりの汚らしい紙に、一々インクをつけなければいけない面倒なペンだが。
そう思うと日本がどれだけ良い環境だったか痛感する。
「次は…」
その調子で食べ進めた。鮮魚のトマト煮込み、銅貨8枚。角兎のハーブ焼き、銅貨12枚。黒パンとシチュー、銅貨5枚…。夕になる頃には銀貨はキレイさっぱりなくなった。
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「皆。良い買物はできたか?」
アスラは満面の笑みでそう言った。
「では、鬼瓦から、何を買ったか教えてくれ」
すると鬼瓦は何かを取り出した。それは不格好な刀だった。
「いやー。俺、侍だから刀ほしいなって思って鍛冶屋に頼みに行ったんだけどさ。無いって言われてオーダーメイドしようと思ったら結構な金額すると言われたので鍛冶屋で修行してる若いドワーフに作ってもらったんだよ。作りかけの鉄剣から刀風に作り変えてもらったから、こんな不格好になってしまったけどな。」
「そうか、まぁ、自分にあった武器を選択すること良いことだな。次は玉城、教えてくれ」
アスラは不格好なその武器に苦笑いしつつ、玉城に話を振った。
「僕…は本を買いました。」
「おいおい、銀貨一枚で買えたのか?」
アスラはそういった。本を印刷する技術が無いから、たかいのだ。
「買えました…。この本です。」
そう言って取り出されたのは数ページしかない本と言っていいのかわからない代物だった。
「何でも本屋の主人が時間があるときに写していたそうです。」
なるほど。つまり途中で写し飽きたか、写せなくなってしまったかだ。
「なるほど…。初級魔法などは記されているようだ。次は神川だ。」
おれはどうしようか迷った。そしてソレを手渡した。
「ほい」
それは、食に対するまとめのようなものだ。
「ん? なんだこれは」
アスラはペラっと紙をめくり、
「おもしろいな。」
そういった。 本人曰く、今までにそのようなことをした生徒が一人もいなかったらしい。
その後花と雫の買物結果も見た。花はアクセサリー。雫はお守りを買ったようだ。
「コレで今日の授業は終わりとする。皆、部屋に戻ってくれ」
俺たちは部屋に帰った。