00 「その1 見習い神様」
ん…なんだろう。暖かな光が俺を包む。
「お! 目が覚めたようだね」
誰だろう。横たわる俺の前で立つ人物がいた。起きたてだからか目が霞んで顔が確認できない。俺は目を見開いた。
「あの…あなたは誰ですか?」
かろうじて確認できた顔は記憶にないものだった。つまり、本人に尋ねなければわからないのである。
「僕かい? 僕は君たちで言う神様ってやつなんだよね。まぁ、見習いなんだけど…。」
見習い神様? 何を言っているんだろう。けどなぜだろう。嘘を言っているようには見えない。なぜかわからないが信じなければならない気がした。
「俺はなぜここにいるんですか? 死んだとか?」
見習いといっても神様なので、いきなり質問するのは失礼なのかもしれない。しかし聞かずにはいられなかった。
「半分正解で半分間違いだね。」
見習い神様はそういった。
「まずは謝らなきゃいけないんだ。君の事情を聞かずに勝手にここに連れてきてしまった。しかし僕にとってはとても大切なことなんだ。そして君は元いた地球に戻れない。本当にすまないと思っている。」
見習い神様が言った発言に俺は驚いた。もう地球には戻れない。怒れば良いのか悲しめば良いのか。それもわからないほど混乱した。そうだ。感情的になるよりもまずは説明を受けるべきだ。いや受けたい!
「どういうことか…説明がほしいです!」
「そうだよね。これから言うことをしっかりと聞いてほしい。」
そういうと見習い神様は説明をくれた。
「僕は次期創造神として父である創造神の元で学んでいたんだ。」
創造神。すごそうな感じがする。
「そこで生命の生み出し方の中の肉体の作り方を学び、実際に僕が作ることになったんだ。しかし、魂の錬成はまだ習う段階まで来ていないので、魂を調達する必要があったんだ。その時に過去からの神界の伝統である魂を貰うための儀式があるので、父の創造、管理する世界の人間の魂を一つもらうことになったんだ。父が管理する5つの世界の人間から善良な人間をランダムで選出したところ、君が選ばれたってことさ。おそらく地球で君は死んだってことになっていると思う。ここに勝手に連れてきて本当にごめんね。」
なるほど。見習い神様の修行的な感じで使用する善良な魂として俺が選出されたわけか。まぁ神様公認の善良な人間っていうのは誇らしいかもしれない。
「これから君の新しい肉体を作ることになるんだ。申し訳ないが決定してしまったことなのでこれを変えることはできない。しかし、君の体になるんだ。リクエストしてくれたらできるだけ聞くとするよ。いくらでも言ってくれ。可能な限りは叶えることにする。」
リクエストできるのか!? それも回数無制限ときた。すっげぇ嬉しい。地球にいる頃、俺はネット小説を読み漁っている時期があった。今は高校生をやっていたが中学の頃なんてどハマりしていた。なので、密かにこういう展開に憧れていたのである。じっくりと考えを練ることにしよう。
「じゃあリクエストします! 一つ目ですが、できるだけ今の容姿の面影は残して欲しいです。その上でカッコよくしてほしいです。」
いきなり難しそうなリクエストをしてしまった。今の容姿の面影を残すっていすのは自惚れしているわけではない。ただ十数年その姿で暮らしてきたので、無くしてしまうのが忍びなかったのだ。
「二つ目は…二つ目を言う前に質問していいですか?」
「はい、どうぞ」
「俺は地球に戻れないんですよね? じゃあ肉体が作られたあとはどうなるんですか?」
「あー。僕がはじめに作る世界の住人になってもらっていいですか? 僕が世界を作るまで寝ててもらうので。」
「ちなみにどのような世界を作る予定ですか?」
これが実は重要である。周りの環境によって適した能力があるのだ。
「僕が作りたい世界は剣とか魔法とかが栄える世界にする予定です。父が作った世界の中でも最高傑作と言われる地球に住む人類が編み出した最高クラスの娯楽である『ろーるぷれいんぐげーむ』のような世界です。幼いころ僕は神界から地球を覗いていましたが、世界の中に箱があってその中に別の世界が広がっている光景には驚かされましたね。」
ロールプレイングゲーム。RPGか。慣れ親しんだ
名を聞き心躍った。
「RPGですか? 『トラクエ』でお馴染みのタイガークエストのような世界ってことですか?」
俺は最高にハイな気分になった。
「そうです! 『えふえふ』でお馴染みのファーストファンタジーのような!」
すっかり見習い神様と意気投合した。
「二つ目のリクエストですが、限りなく強くしてほしいです! 最強な能力とかステータスとかつけて!」
「なるほどッ! 無双ゲームの主人公のような感じですねッ!」
「はいッ!そうですッ!」
神様…。いい人じゃないか。
「では、肉体と新しい世界を作るまでこの台の上で寝ていてください! 寝ている間に随時ある程度必要な情報などは頭に入れておくので!」
俺は案内された不思議な石の台の上に自ら動き、一時的に意識を失った。