第五話「逡巡」
――僕に出来ることなんて、この世にいくつあるのだろうか?
――今この時、スズランのためにできることなどあるのだろうか?
――一つ以上あるのだろうか?
――一つでもあるのだろうか?
――あるだろうか?
――「ある」という返答への肯定が
――「ない」という返答への否定が
――あるだろうか?
――あるだろうか?
――あるだろうか?
――………………。
――………………。
――…………ない。
――あるはずもない。
――今まで一つだって、あった試しがない。
――スズランのためにできたことなんて、僕には何一つなかったんだ。
――スズランのためにできることなんて、僕には何一つないんだ。
――分かっていた。
――分かっていた。
――分かっていた。
――スズランに比べて、僕は無価値。
――スズランにとって、僕は無価値。
――スズランに比べて、僕は無意味。
――スズランにとって、僕は無意味。
――誰にとっても、僕は無価値。
――誰にとっても、僕は無意味。
――僕の存在意義など皆無。
――ここにいるのは僕でなくてもいい。
――だったら、なぜ僕は生きているのだろうか?
――なぜ僕は、わざわざ生きているのだろう?
――分かっている。
――分かっている。
――分かっている。
――僕がくだらないから。
――僕がくだらない存在だから。
――無価値だから、無意味だから。
――だから、
――そんな僕を慈しみ愛しむものなど、何もない。
――ない。
――ない。
――ない。
――あるはずもない。
――輝かしい微笑の裏側で、毒づかれていたこと。
――友情や愛情だと信じていたものが、完全なまやかしだったこと。
――人一倍の好意で接してみたが、拒絶されたこと。
――そんな経験など、数え切れないほどある。
――多すぎて数えていないだけ。
――そう、結局
――自分を救うのは自分だけ。
――自分が救うのは自分だけ。
――自分を救うのは自分だけ。
――自分が救うのは自分だけ。
――自分を救うのは自分だけ。
――自分が救うのは自分だけ。
――…………ただ、それだけだ。