策略者は密かに笑う
初投稿です。
拙い文章ですが、お付き合いくださいませ。
茶番だわ。
国内の貴族の子弟のための学園、セントポーリア学園の卒業記念パーティーでのこと。
本来なら、婚約者のエリオット殿下と一緒にいるはずなのだけれど、わたくしは壁の花よろしく一人飲み物を飲んでいた。
「カトレア、話がある。」
険しい表情の婚約者が、わたくしとは対照的な少女を腰に抱き現れた。
周りの方々も何気ないふりをして聞き耳をたてているわね。
殿下の側には、宰相閣下のご子息や重臣たちの子弟が何人かいるわね。あら、愚弟まで。
「殿下、何かしら。」
「お前との婚約を破棄する。」
「理由は?」
一応、聞いておこうかしら。
「とぼけるな。アリアを苛めていたではないか。お前のような根性の悪い女等、王妃にふさわしくない。」
「そう。婚約者のいる男性を誘惑するのはよろしくないと進言しただけなのですが。」
それが、根性悪ね。
こちらから願い下げだわ。
「姉上、父上からの伝言です。貴女のような人は我が侯爵家にはいらない。今この時を持って勘当する。二度と、アルデリック家を名乗ることも関わることもゆるさん。だそうです。」
「わかりました。わたくしはもうあなたとは他人と言うことですわね。二度とあなた方には関わりませんわ。ごきげんよう。」
殿下たちが後ろで何かわめいている声が聞こえるけれど、もう関係ないわね。
あの程度の方たちがこれからの王国を支えていくのは不安しかないけれど、知ったことではないわ。
せいぜい苦しめばいいのよ。
会場を出ると、一人の男性が現れた。
「無事に婚約破棄されたようだな。」
「ええ、お陰さまで。」
男は小さく笑うと私の手を取り。
「カトレア・アルデリック侯爵令嬢。私の妃になってはいただけませんか。」
彼の手の体温が伝わってきて、乾いた心に染み渡るようだわ。
「私を妃にしてもアレックス殿下に得はありませんわよ。なんせ、実家を勘当された身ですので。」
わたくしが、そういうと、殿下は、
「なに、我が帝国の次期皇帝が是と言えば否と答える愚か者はいまい。」
確かに、わたくしの国、フローレン王国とアレックス皇太子殿下のガーディニア帝国の国力を考えれば反対できる方は居ないでしょうけれど、
「慎んでお受けいたします。」
一介の元侯爵令嬢に拒否権はなく、隣国の皇太子妃になってしまいました。
皇太子妃になったとたん勘当を取り消し、甘い汁を吸おうとした実家と宰相の間で大きな外交問題になりかかったのはまた別のお話ね。