再開
いろいろなことがあった…まずは入試…入学式の時に、壇上に上がるのは断ったが今年の首席だったらしい。
そして制服…ごく一般的なブレザーで少しゆったりめなのをを買った。
引っ越し、広すぎるぐらいの豪邸だった…
そして入学式…
俺はあくびをしながら、通学路を歩いていく。
張りつめた空気とか、緊張感がないから眠すぎる。
「ねむそうねぇ」
スカートを翻しながらオペ子は俺を覗き込む。
「モノホンの銃火器握る時と戦場にいる時以外、基本こんな感じだぞ?大将は」
相棒がそういう。
「そうなの?最近はせっせと動いていたような気がするんだけど」
あーそういえば、早起きして新聞見たり、雑誌見てたりしてたなぁ。
「ヒント:俺は飯を作るのが好きです」
「納得したわ…」
あきれられたが、それぐらいでちょうどいい。
「…しっかし、お嬢様お坊ちゃま学校に、俺等みたいな薄汚れた連中の入学を許すとはねぇ…」
「一緒にしないでくれる?」
そういうオペ子をみて、俺は苦笑いを浮かべる。
「そうだぞ、物騒な奴らを従える物騒な奴がそこにいるじゃないか」
Don't touch me.
俺は危険を感じて、相棒から距離を話す。
相棒が宙を舞っていき、俺はすかさず宙をまう物体から目を離す。
「…なに?」
何も言ってないし、何も思ってませんよ?
「しっかし、俺だけでも目立つのに、お前らまでいると悪目立ちするなぁ」
「どういう意味よ」
苦笑いを浮かべるしかない。
入学式はそつがなく終わり、俺は出席番号順に席に座る。
「んじゃ、自己紹介から始めようか?」
実は俺がこのクラスでの出席番号一番だったりする。
「どうも、猪山 孝弘です。同年代の人とかかわったことが少ないので、いろいろとよろしくお願いします」
俺が席に座ると、出席番号2オペ子が立ち上がる。
「猪山 那奈です。孝弘とは義理の姉弟という間柄になっています」
「…姉=暴君って言うなら、姉弟って言葉がぴったりと合うな」
俺はぼそりとそうつぶやく。
「何か言ったかしら?」
俺は目をそらす。
ふと目があった少女が、どこか見覚えある少女だったので俺は首をかしげる。
どこで会った?同年代の…しかも皇国出身者は会うことは…
ふと、首都侵入したときに敵兵士を打ち殺したことを思い出す。
「あ…」
思い出した…あの時の子か…なんつう偶然だよ……
彼女もこちらに気づいたのか、驚いたような顔をする。
「なかなかどうして…楽しいじゃないの…」
この時の俺は気づいていなかった…
この二度目の再会こそが…この二度目の再会こそが、俺自身のありかを変えるきっかけになるなんてことを……
気が付くと、終礼が終わり、教室ががやがやしていた。
「大将!!すげぇねてたな」
「ん?だって暇なんだもの」
俺は軽く伸びをする。
実際これからのことと授業ガイダンスの説明だけだった。
「猪山君?」
猪山…いったいどこのオペ子のことを呼んでいるんだよ。
「アンタのことよ、ヒーロー」
オペ子を見ると、頭を殴られる。
「いつつ…なんだい?」
ふと振り向くと、あの時助けた少女が立っていた。
「あーまた逢ったね?」
ジト目でオペ子がこっちを見ている。
「いや、任務ごまかして遊びに行ってたわけじゃねぇぞ?」
俺はあわてて弁解する。
「で?どーこでこんな、かわいい子をひっかけたんだ?」
ややこしいのが会話に入ってきたなぁ…
俺はジト目で相棒をにらみ、軽くペンを突き立てる。
「死にてぇか、色ボケ野郎」
「うおう、いきなり本気になるなよ」
なんかよこしまな気配したしなぁ。
「どうして、俺だと?髪色もメガネもかけているからわからないはずだが……」
そう問いかけると、少女は苦笑いを浮かべる。
「昔から、そういうのがわかるんです……あの時は助けてくれてありがとうございました」
「助けた?俺はただ敵兵を撃っただけだ。しかし、そうか……誰にも言うなよ?面倒だし」
そっけなく答える。
「戦場で、人助け?いつものあなたなら、即見捨ててるでしょうに…悪いものでも食べた?」
「あぁくっそまずいレーション食ったよ」
厭味ったらしく、我らがオペ子に言い放つ。
「話が進まん、お前ら二人は黙っていろ!!」
まったく、こいつらがいるとどうも、俺の調子に持っていくことができない。
「いいよ、お礼なんて、どうせ…どうせ、人を殺すついでに助けただけだし」
その言葉を発した瞬間、彼女はじっと俺の目を見る。
「お前…「音羽よ」へ?」
突然遮られ、俺はききかえしてしまう。
「上音 音羽私の名前よ」
っちメンドくせぇ…
「上音は、助けてくれたからいい人だと思っているんだろ?それは間違いだ、俺のようなゴミがいい人なんかありえねぇよ」
笑いながら、彼女の考えているであろうことすべてを否定する。
「そうね、あんたどっちかというと悪魔ね」
「話しが見えんな、どこの戦場で上音ちゃんと出会いやがった」
相棒が声を荒げる。オペ子はいっぺん締めてやる。
「…こないだの首都潜入時にちょっとあってな」
むすっとして答える、答えとかないと相棒がうっとうしいからだ。
「上音ちゃん…少し大将に時間くれないか?多分こいつ戸惑ってるだけだから」
誰が戸惑ってるだけだ。
「報道とかで知ってるかもしれないけど、彼戦場と人間の闇しか知らないんだよ。だからね…ま…俺に相談するのは全然OKだからさ」
俺は複雑な気持ちになりながら彼女を見る。
偶然?それとも。
「彼を呼んでくれてありがとう陛下」
皇国の君主に向かい、敬意もへったくれもないような口調で、白衣の男は口を開く。
「呼んだはいいが…何故彼が必要なんだ?」
まだ若い君主は、年齢がわからない白衣の男に問いかける。
この白衣の男、君主が幼き頃から姿が変わっていないのだ。
「おや、陛下も気になるのか?皇国国民が行方不明になった事件があったじゃないか?」
「まさか、あの拉致被害者の一人か!!」
白衣の男は苦笑いを浮かべ、うなずく。
「とある科学者が夢見た研究…その、生きた唯一の成功例。残念ながらどんな夢を見たか私は知らないのだけどね?」
でもまぁと白衣の男は、軽く笑う。
「確定していることは、彼には能力者のすべての秘密が埋め込まれているということと、彼は彼という単一であり、彼という世界でもあるということかなぁ?」
陛下は、軽く首をかしげる。
「まったく、君の言うことはいつもわからないよ。救国の英雄」
「ふふ、じゃぁまた来るよ、陛下。今度は昔話でもしようじゃないか」
いやそうな顔をする陛下を残し男は扉を閉める。
「陛下の娘の能力、神の音を奏でる羽、そしてとある研究者が見た夢…一時にこれほどそろうなんてなぁ」
一人男は笑いだす。
「140年も生き続けているかいがあったというものだ」
さぁて、果たしてどうなることやら。
そう男が思うと、どこかでとくんと何かがはねる音がした。
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