逃げる
あの国での内乱を終わらせた俺たちは、ハワイ行の航空機に乗っていた。
「……相棒も寝てしまったし、どうすっかなあ」
本を取り出し、俺はゆっくりとそれを呼んでいく。
本の内容は、男の物語になっていて有名な著名な作家が書いた話だ。
「……昔の漁って困難だったんだなぁ」
『はぁい、ルーキーまだ起きてる?』
俺はイヤホン越しに聞こえてきた声に、頭を痛める。
「どうやって通信してんだよ。まぁいい、こっちの声も届いているよな?」
恐る恐るそうつぶやく。
『貴方が開発したんでしょ?長距離通信機』
俺はゆっくりとため息を吐く。
「んで?睡眠薬飲んでさっさと寝たいんだが、どうした?」
『彼はもう寝たの?』
ん?相棒のことを言っているのか。
「そういや、お前オペレータやってんのに、あいつと逢ったことなかったよな。あぁ寝たけど、どうした?」
『いえ、寝たのだったらいいの。それじゃぁこっちで待っているわね』
俺はあぁとつぶやくと小さく笑う。
小さい錠剤をのむと、俺はゆっくりイスに腰掛ける。
「ふぅ…もうあんな任務こりごりだわ。」
ハワイに到着した俺は相棒と二人、バカンスを楽しんでいた。
「だねぇ…」
いつもなら、相棒はナンパに出かけるはずなのに、今日はごろごろとしている。
「正規軍死者3重症42軽傷123つうありえない数字叩き出すのに、どれだけ苦労したか。」
第一防衛網ではそんなことあったんだと思いながら、軽くジュースを飲む。
「撃墜数というか、狙撃数のレコード記録塗り替えおめでとう」
「嬉しかねぇよ」
一晩で約100名もの兵士を屠り、国を救った救国の英雄として傭兵なのに表彰されていたりする。
ちなみに防衛網崩す最終作戦で出した数字である。
自国の同胞がやられているというのに、どんな圧政してたらあんな盛大に感謝されるんだろうと思う。
今の俺には関係ないからいいかぁ~
「ふゅーあの子かわいくない?」
こげ茶色の髪をツインテールにした水着の美少女がこちらに向かって歩いてくる。
「相棒?悪いことは言わん…アレはやめとけ…いやいろんな意味で」
見覚えのあるその姿に、俺は冷や汗を垂らす。
「あら?そこにいたのルーキ。いえ、今はヒーローかしら?」
俺の入った投下ポットを問答無用で落としたオペレーターを見る。
「大将…知り合い?」
「いや、俺は知らん」
答えるまでの間0.02秒である。
「気分悪くなってきたから、ちょっち飲み物買ってくるよ」
「逃げるの?ヒーロー」
腕をつかまれ、俺は目を細める。
「やっぱ知り合いじゃねぇか…誰だよ、俺にも紹介しろよ」
相棒の叫び声に、舌打ちしつつ俺はアマを見た。
「俺等の専属オペレーター以上」
「は?」
恐怖に歪んだ顔で、彼女を見る相棒を見て、何をやられたんだと心の中で思う。
「で?クソアマ何の用だ?」
「…本名で呼んでくれないかしら?まぁいいわ、先日表彰されたの覚えてる?」
…いやというほど覚えている、パレードまで行われて俺も回されたんだよなぁ。
「あのパレードの件で皇国から抗議文が来るようになってね」
「ちょっと、アメリカ統合国を出て先の内戦があった国にに亡命してくる」
アメリカ合衆国は先の第三次大戦で、他の国を巻き込んで統合国になってたりする。
「いやー15歳っていうのが露呈して、某団体から高校まで出せという抗議文が」
あの国頭挿げ替えても、そんなことやってんの?マジで消えてなくなれよ某団体!!
「ということで、貴方と正司には日本皇国で高校生活をやってもらいます。」
……
相棒と軽くアイコンタクトをする。
「集合場所はA-8まさか、あれを使う羽目になるとは…」
二人で別々の方向に逃げだし、俺はそばに置いてあった鞄を手に取る。
海の中にそのまま飛び込み鞄の中にあった強化外骨格を装着し、ヘルメットをかぶる。
『おはようございます、急速乾燥を実行します』
ちなみに、あの内乱の後アップグレードされたらしく音声アシスト機能がついていたりする。
『潜水時間、残り一時間』
ふむ、やっぱり起動して行き成り水中だと生命維持装置がうまくいかないか…
それでも潜水時間1時間は長いな…
『指定ポイントA-8に超長距離爆撃機X-609VRを確認リンクシステムにより、機動を完了します』
海から上がってすぐ見えた漆黒の機体に乗り込むと、いろいろな計器をチェックする。
「OKすごいGが来るぜ相棒。」
相棒が後ろで親指を立てる。
「3,2,1,GO」
急な加速によるGが体を締め付ける。
俺はそんなことをかまわず、衛星通信を開き、先週まで内乱していたあの国に通信をする。
『…この番号にかけてくるのはだれだ?』
その国の大統領が、通話に応じてくれた。
「やっほー『夜明けの狼』所属のドタバタ二人組だよ~戦闘機で、そっちの国に入るからよろしくね~」
『君達か…戦闘機でっていうのは何かあったのか?』
「少し追っ手に追われていてね?夜明けの狼に連絡するわけもいかないから、どこかの国にかくまってもらおうかと、あと車と亡命手続きもお願い」
大統領は少し考え、わかったと電話を切った。
空港に着陸した俺は、外のおいしい空気を吸い盛大に吐き出す。
「ようこそ英雄」
俺が正規軍と出会った時に、相棒の隣にいた老兵が出迎えてくれる。
「復興で忙しいときに急に押しかけちゃってすみません」
「いえいえ、救国の英雄なら、いつでも歓迎しますよ」
やばい…うれしすぎて涙が出てきた。こういうのを安らぎっていうんだろうなぁ。
「相棒」
「なんだい?大将」
俺たちは目を合わせる。
「この国の軍に就職しねぇ?」
「…悪くないな…あの怖いオペ子からわかれられるんだったらな!!」
こんな時は意見がぴったり一致する二人である。
「はは、その時は歓迎しますよ。こちらがカギになります」
俺は苦笑いを浮かべながら、用意されていた車に乗り込む。
「皇国の四輪駆動車か…たいてい買ったら200万は余裕でするんだよなぁ」
鍵を回し、ルームミラーを合わせながらそうつぶやく。
「お前車も運転できたのか?」
ヘルメットと、強化外骨格を脱いでGパンにTシャツというラフな格好の俺は軽く肩を鳴らす。
「あ?できないわけがない。免許は取れないだけで、大型船まで運転できるぞ?」
というよりか、エンジンで動くものならある程度のれる。
「この天然チートめ!!」
いやー何のことやら。
隣の大将改め天然チートを見る。
「なぁ大将…自分が死ぬ時のことイメージしたことがあるか?」
ふと思いついたことを言うと、チートはハンドルを強く握りしめる。
「戦場に出るときは常にしてるよ。血と硝煙の香り漂う戦場で、自分の死に無関心になったら、心が壊れている証拠だからな。」
俺が戦った防衛線跡地が見えてくる。
「なぁ、俺はお前の背中を護れているか?」
こいつとツーマンセルを組んで3年…衝突することもあったが、ずっと二人でやってきた。
俺はこいつに背中を預けることができるが、こいつはどうなのだろうか?
「ん?任せられなかったら、俺は夜明けの狼をやめていたはずだぜ?俺を連れ出してくれた人は、どっちゃでもいいって言ってくれたしな。」
俺はアーあの人ならいいかねないと苦笑いを浮かべる。
「大体何でそんなに不安がってんのよ。」
「いや…お前天然チートじゃん?」
バカだなぁとチートは小さく言う。
「狙撃ではお前に勝てない、俺ができるのは敵陣に突っ込んでいくだけだよ。それにお前が居なきゃ俺は確実に、今頃ハチの巣になっている。」
はは、なんで俺こんなこと心配してたんだろうなぁ…あぁなるほど…戦闘もしていないオフの日だからか。
「首都が見えてきたぜ?」
チートの声に反応し、俺は見えてくる街に気づく。
戦場から回復しつつある街にはきれいな明かりがついていた。
何とか今日中に0章を終わらせそうです。