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傭兵と戦場と学園生活(新)  作者: 腐乱死体
0章始まりの戦い
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能力者

 室内に立ち込める硝煙の香りをかぎながら、俺はヘルメットを脱ぐ。

「ふぅ」

 一時的に休息の意味を込めて、バックパックからゼリー食を取り出す。

「ゼリー食くったんいつ振りだろうか?」

 そういえば、こっちの世界に突っ込んだ時の訓練で、固形物を胃が受け付けなくなって以来か。

 つうか、一回しか食ってねぇジャン。

「はは……」

 血にぬれた手で、ヘルメットをつかみかぶりなおす。

 あんときはほんと何でこんなうまいもんがあるのか、不思議でしゃぁなかったなぁ。

「帰ったら、死ぬほど要求してみようか!!」

 部屋に入ってきた敵の頭に風穴をあける。

「ずいぶん見通しの良くなったじゃねぇか?三つも目があったらさ」

 俺はゆっくり歩いていく。

 一斉に放たれる銃弾をよけ、俺は10発の弾を打ち切る。

 壁を駆けながら、リロードし、一番近い相手にゼロ距離の弾丸をお見舞いする。

 振り向きざまに最後の一人に充てようとしたときに、銃弾がそれるのを感じる。

「磁場で弾丸をそらしたか、異能者」

 あいつに教えてもらった異能者は、俺の言葉に軽く笑顔を浮かべる。

「はっ、うちの精鋭をきれいに殺しておいて、何を言う化け物」

 バイザーにシステムメッセージが展開する。

 対異能者フィールド展開と…

「…はっ、最新式の対異能者用強化外骨格か!!」

 そう、通常の強化外骨格とは異なる点、それが対異能者用フィールドジェネレーターだ。

 先の潜水機能も対異能者専用装備だったりする。

 発行型の信号弾を爆発させ、あたり一面が光に包まれる。

 システムアシストで、視界がよく見える。

 あいつはたぶん磁場系の能力者なので、この光で目がやられているだろう。

「ところがぎっちょん」

 俺はかろうじてけりを腕で受ける。

 耐衝撃防御が入っている強化外骨格を着ていても骨のきしむ音が聞こえた。

「な…なんバカ力だよ!!」

 しびれる腕を無理やり動かし、SDVを発射する。

「はは…なるほどな」

 初弾は照準がずれ方をかすっただけだったが、こいつのからくりが解ける。

「どうやら、バカ力を使うとき能力を切らないといけないらしいな」

 サイボーグ治療でもやったのか…それとも…

 まぁいい…ゼロ距離からの射撃…喰らえや。

 蹴りをいなし、弾丸を俺はよける。

 右足を軸足にして回転し、異能者の頭にSDVを向ける。

 その瞬間不可思議な力で、俺は吹っ飛ばされた。

 能力者が能力に失敗したとき、能力種と呼ばれる一種の力場が爆発することがあるという。

 奴はそれを意図的に起こしたのだろう、どうやってかは解らないが…

 バイザーのダメージ率が80を超える。

 ある程度自己修復機能が備わっているとはいえ、ここまでダメージを受けたらこの任務中での修復は無理だろう…

「能力種のオーバーロードによる爆発でも、死なないなんてな…」

 そうつぶやくぼろぼろの状態の能力者を見下ろす。

 能力種ノオーバーロードをおこすということは、その能力者が自爆すると同義なのだ。

「所詮おれのはインチキだよ。強化外骨格に動きを頼ってるしね?」

 つうか、あのまま戦っていたら俺が負けていた…

 久しぶりに死線を垣間見たような気がするわ…

「俺は『アルバトロス』所属ラスティル・オストロス。お前は?」

「俺?『夜明けの狼』所属、     だ。また、どこかの戦場で会おうぜ。」

「二度と、遭遇()いたくはないな」

 ラスティの言葉に俺は苦笑いを浮かべ、ゆっくりと会議室に向けて歩き出した。


「だぁ疲れたぁ」

 AIを駆逐したものの、防衛網にはまだかなりの数の敵がわいてくる。

 要人護衛についているのは数名なんだろうなぁ…

 まぁ、『アホウドリ』のエースがいたらそれでいいと普通は考えるだろうねぇ。

「一時引いて体勢を立て直しますか?」

 流石に、だらだらと長引かせるにしても疲れが来るか。

 俺は正規軍の言葉を飲むことにする。

「適度な緊張感を保ちつつ後退にしましょうか。」

「にらみ合いの構図を作るんですね。わかりました」

 この戦いでまだ死者を出していない。

 AIを単騎で潰すという荒業もやってのけたので、正規軍の連中も俺の指揮下に完全に収まる形になった。

「味方の死者が出ない戦争かぁ…」

 生ぬるいことこの上ない戦場を軽く見る。

 兵士たちの顔に見られるのは疲れと、安堵……希望に満ち溢れた眼は俺まで元気になりそうに思える。

 さてと狙い撃ちますかね。

 スコープをのぞかず構えたままの体制で、モシンナガンを撃つ。

 何十年前の銃だがやはりこれはいいものだな。

 きれいに頭に当たった弾は頭がい骨を砕き赤い線を描く。

「ここは戦場なんだ。出てきたお前が悪い、理想を押し付けようとしたお前らが悪いんだ。だから、俺は謝らねぇぞ」

 俺がまだ人であるために、心を保つためにつぶやく。

 大将みたいに俺は強くない。

 大将みたいに生きた人間と死んだ人間を割り切れていない。

 だから俺は、心を保つために、戦場でこんな言葉を紡ぐのだ。

 前だけを見るために。

 もう二度と、心を壊して仲間を危険に導かないためにも…


「なんだね君は」

 部屋の主たちは突然入ってきた俺に目を白黒させる。

「死神だよ。君たちが馬鹿にしたね」

 ハンドガンを手に、俺はにやりと笑う。

 全弾を撃ち尽くした後、首をナイフで掻っ切っていく。

「ひぃ」

 一人一人と死んでいく状況で、一人の男性が悲鳴を上げた。

「さてお前が最後だ!!」

 最後に残った男の足首を切り、歩けないようにする。

「な……何が目的だ!!」

「え?お前の命。ついでだからほかの連中も殺したけど問題はないよなぁ」

 問いかけに、俺は冷酷にそう答えた。

「命だけは……命だけは」

「じゃぁ10秒だけ待ってやるよ。その間にこの部屋から出ることができたら逃がしてやる」

 俺はそういい、目を細めた。

「10」

 ずりずりと体を引きずりドアの元へ行こうとする男の進路を遮るように椅子を倒したりする。

「5」

 カウントが進むごとに、吹き出す大量の脂汗を見ながら、少し楽しくなってくる。

「2」

 ドアのところに手をかけるもドアが開いておらず男はもがき倒す。

「1……うん、残念また来世」

 ナイフを投げ、頭にさすと俺はゆっくりと笑う、これでクーデター軍上層部を全員殺したからだ。

 まったく、戦闘のできない者が大佐とか中将とかの位をもらっていることにため息が出る。

 本当にこの国は…と思いながら俺は通信設備に入っていく。

「誰だ」

 銃を向けられ、反射でSDVのトリガーを引いてしまう。

「まぁいいや」

 うなだれる一人の通信兵の隣に、生きている兵士を見る。

 通信機の前に座っている男は、武器を持っていないようなので、俺はヘルメットを脱いだ。

「あぁ悪い。正規軍に通信をいれてくれ」

『こちら第23陸上基地』

 その声を聴き、俺は軽く息を吐く。

「こちらPMC『夜明けの狼』所属している者だが、クーデター軍指導者23名を殺害、防衛網で戦闘している連中に伝えてくれないか?」

 なかなか通信が返ってこない。

『解りました。貴方はこれからどうするのですか?』

 帰ってきた言葉はそんな言葉だった。

 だが、無線の奥ですごい歓声が上がっているのは聞き逃さない。

「ん、帰投まで時間あるから、適当に内側から防衛網でも潰しとくよ」

『わかりました、御無事で』

 通信を切り、俺はふぅとため息をつく。

 若い通信兵は、おびえたように俺を見る。

「どうだい?ここでクーデター軍側として処刑されるか、うちに来るかどうする?」

 俺は少し目を細めながらつぶやく。

 突然のことで戸惑う通信兵は、目を白黒さして俺を見る。

「まぁ突然だしね?考えといてね~んじゃ俺はこの辺で」

 そういいながら外に飛び出し、近くに置いてあったバイクにまたがり、カギを壊しエンジンをかける

「さぁて…防衛線崩しに行きますか。」

 バイクがうなり声をあげ、防衛線まで走っていく。

 指導者も殺した。後は防衛網を崩して首都を奪還できれば、クーデターも終わるだろう。

 俺が帰るまであと72時間、はたしてこの戦争は終わるのだろうか?

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