活動
二投目
正規軍交えてのブリーフィングで俺は生きず待っていた。
「つうか、首都要塞化してんのかよ…来る前に情勢調べときゃよかったなぁ」
正規軍の話を聞き、俺は少しぼやく。
「で?大将…案は?」
「俺が突撃して、中で暴れる。そのまま、敵軍の中枢を壊滅させようかと……」
簡単に言うが、たった一人が軍隊相手に渡り合うというのだ。
しかも、他のPMCや新兵たちがうようよいる敵陣の中で…
「無茶だ、首都に行くまでの間に、クーデター軍が防衛網を張っている。それを突破して、さらには首都の警備にばれないように、指導者たちを暗殺するなど……」
批判的な正規兵を見て、俺はにやりと笑う。
「敵陣に突っ込んで、首都までたどり着いちまえば、アンタらが防衛網の外でドンパチやってくれればいい。侵入した一人か、敵軍そのものか…どっちに人数を割くかは決まっているだろ?」
「ふふふ……ハッハッハ」
大笑いする相棒を軽く睨む。
「普通の奴が言ってもまず信用ならんな、はは…で?正規兵に用意させたいもの…いやその不可能を可能にしてくれる武器はなんだ?」
「まだ武器を用意してくれと入ってないが……まぁいい、ドラグノフだ!!」
あたりがシーンとなった。
それもそのはずだ、対物ライフルなのだから。
「首都警備には全長4mの装甲歩兵が設置されている。SVDじゃぁその装甲歩兵を止めることができないだろう」
正規軍の軍人が言うことは政界で、たかが狙撃中でロボット兵器を止めることは不可能なのだ。
「…配備されているのは旧式のIAだろ?だったら突破の仕方はいくらでもあるぞ。」
IA自体はさほど珍しい兵器ではなく、第三次世界大戦…大国が軒並み名前が変わった某大戦時に、旧アメリカが旧日本国と共同で制作した一機が原型とされている。
そこから発展し、今では第4世代型までの機体…約640種が発明されている。
つっても、枝分かれや、カスタム機があるので正確な数は解ってはいないが…
「…第2世代型IA、アルテッシモだ…」
その名前を聞き、俺はドラム缶のような棺桶を思い出す。
「だがアレの装甲は、IAとしての機動性を犠牲にし、防御を固めた機体だろ?SVDのほかにこいつも持っていくのか?」
相棒が、そんな疑問を口にする。
こいつとは、俺が持ち込まされたスナイパーライフルの皮をかぶった何かのことだ。
「SVDで十分だ。ドラグノフさえあれば…な!!正規軍、PMCの人間…だれでもいい、俺に命を預けてくれ!!」
誰も批判的な意見は上げずその他に感じるのは確かな熱気、俺はそれを感じながら話を始める前に用意させていたSVDを手に取る。
それを肌で感じ、これ以上の言葉は必要ないと判断する。
「さぁ、はじめようぜ!!」
夜の会議室で俺はそうつぶやきながらヘルメットをかぶる。
ヘルメットの下で、俺は口の端を上げにやりと笑っている。
周りの灯りが少ない土地で見る星はきれいに輝いていた。
防衛もうである基地についた途端俺は少し離れた位置から、SDVを構える。
「相棒、少し待っていてくれ」
そう短く言うとバイザー越しに、敵の数生体情報位置などが表示されていく。
使用上仕方ないが、視界に写る範囲の敵の位置だけだ。
救いがあるとすれば、壁は透過して位置だけ見れるということか…
メットの下で軽く唇をなめると、俺は音もなく駆け出す。
実際は走れば音が出るものなのだが、強化外骨格のおかげで音が相殺されている。
ターンと乾いた音がし、ゆっくり消えていく生体反応を確認しながら、もう一人に照準を合わせる。
「ステンンバーイ、ステンバーイ…ビューティフォー」
ヘッドショットおいしいです、なんつって…
そんなことを考えながら、壁を蹴りぬき、それを足をかける場所として壁を登っていく。
見えた!!
10個もの甲高い音が聞こえ、10この肉袋が出来上がる。
これで20発消費か…
そんなことを考えつつ、足にマウントしていた小銃で通信機材を破壊し、SDVをリロードする。
振り向きざまに、トリガーを引き、左手に持ち替え、左方向の敵を打つ。
上半身をブリッジするように後ろに倒し、銃弾を避け、右腕で体を固定し、左腕で発砲してきたやつの頭を吹き飛ばす。
そのままSDVを床に置き、右手を使い一回転し足を地面につけた後、SDVを拾い歩き出す。
ちなみに、こんな無茶な機動は強化外骨格なかったらいろんなところの骨が折れてそうだから、きていないときは絶対やらない。
さて、銃声を聞きつけ完全武装した連中が出てくる。
頭のくだけた死体を見て、敵は何人か吐き気をこらえているようだ。
俺は、幸いなのかなんなのか知らないが肉袋に何の感情も抱かなくなっていた。
生き物が死んだら、それは物に成り下がるからだ。
そんなものに、いちいち感情移入していたら戦場では絶対に持たない。
対戦車ライフルが誤って着弾した遺体(たしか人に向けて撃つのは禁止されています。)なんか見た瞬間に、トラウマになるだろう。
「手が止まってるぞ、新兵」
それが俺が敵に対してはなった、最初のセリフだった…
全員を始末し終えて車に戻ると、
「…ごめんこれは予想外だった…」
という相棒のつぶやきが耳に入ってきた。
「なにが?」
「だって警備兵30名弱を狙撃銃で突撃して殺すとかありえんだろ。」
そうか?と言いながら車から降り荷台のオフロード車に弾をくくりつける。
「正確には36だ。弾は36発分消費したからな。ってかお前なら二枚抜きとかできるだろうが。スナイパーライフルの扱いに関しちゃ俺よりかなり上にいる癖に」
「狙撃はうまいけど、突撃しながらずっと頭狙い続けるはできないからな?」
隣の『踊るスナイパー』の二つ名を持つ男にはさすがに負けるよ…
狙撃距離は俺より上で、スコープなしのモシンナガンでそれをやるんだから。
「打ち漏らしがあると困るから俺を連れてきたわけだろ?」
「おおむねそんな感じだ、一応お前が狙撃したってことにしときたかったんだ。王手ライバル企業からの引き抜きがうざくなるきがしてね?以前のパイロット騒ぎの時も引き抜きがちょっとね…」
パイロット騒ぎとは、去年末に敵の本拠地に取り残された俺が、そこにあった戦闘機をかっぱらって逃げてきたというものだ。
対して訓練を受けていない兵が戦闘機を乗りまわしたこの事実があるので、俺は今後引っ張りまわされることになる。
さてそんなどうでもいい話は置いておいてと。
「ちょっくら、行ってくるわ」
俺はバイクにまたがり、強化外骨格の一部であるヘルメットをかぶる。
メットのバイザーに表示されている数値をチェックしながら、軽くバイクをふかす。
「いってこい、大将」
俺はがたがたの道を駆けだした。
「すごいですね…」
基地に戻ると、どこかで見ていたのか老兵が声をかけてきた。
「まっ、あれぐらいでしょう。ウチの大将ですし」
俺はあっけカランと笑う。
「…彼は一体何者なんです?」
やっぱり興味はそっちに行くよなぁ。
「うちの期待のエースですよ。あいつがいればつか、もうあいつ一人でいいんじゃないかな?って言われるぐらいのね?それよか、さっさとおっぱじめる準備しようぜ」
さぁてと、やりますかモシンナガンを調整しながら、俺は戦場を駆る準備をする…
あいつを知らない正規軍の連中はともかくPMCの連中の熱気に少しあてられるんだろうなぁ…
「まっ…皇国帰ったらナンパでもしますかね」
帰ってからの算段を決め、俺は前へと進んでいく…
ただひたむきに前へと…