傭兵参上
お久しぶりです。
お恥ずかしながら戻ってまいりました。
何時だって何も変わらない、変えることができない。
そんなことを思いながら、彼は毎日を生きていく。
ただ変わらない、日常という平凡な道を前へ前へと進んでいく。
何も変わらない道を…
ただ一つ……たった一つ変わるのだとしたらそれは……
『ルーキー、前線に出る準備はいい?』
強化外骨格と、防弾用のメットをまといまるで悪の組織の下っ端戦闘員みたいな恰好の彼の耳元で、女性オペレーターの声が響く。
「…ちょっと待て、降下用のカプセル入るから。つうかルーキーっていうのやめね?」
『ふふ…そうね。私にとってあなたはまだルーキーなんだけどね…』
降下用カプセルの内側に入り、軽く操作パネルを弄る。
『生命維持装置も起動したみたいね』
「してなくても落とすだろ?」
俺はため息をつく。
『地表まで4分ぐらいかしら』
自動的に体が、カプセルの内側に固定されていく。
「つうか、生身かカプセルか選べって言われたときは焦ったんだけど」
『成層圏か、大気圏外かどちらか選べよりましでしょ?』
…上の方は本気でやりそうで困る。
『ブリーフィングのおさらいしましょう、そのカプセルに装備されているのは弾倉、アンチマテリアルライフル、食糧、フルトンリカバリーシステム、戦地で通常使われているハンドガン、こっちは予備の弾は現地収入ね。貴方に行ってもらうのは、この国で行われている、大規模クーデターの指導者、アーカム・エルミフス中将の首を取ることです』
俺は口笛を吹きながら、頭に叩き込んだ顔を思い出す。
「最初のブリーフィングでも思ったんだが、なんで暗殺者みたいな仕事受けてんだ?」
俺が所属するのはPMC…民間軍事会社だったはずだが…
『いやぁウチの連中が、どうやらコケにされたみたいでね?報復の意味を兼ねて、この依頼を受けたのよ』
短くため息を吐く。
「ンなことばっかりしてるから、肥溜めだのゴミ捨て場だの屑の寄せ集めとか、同業者から言われんだろうが」
まぁ、くそしか集まらない、肥溜めが異常に居心地いいが気にしないでおく。
『回収期日なんだけど、腕時計の数字が0になった時かな?1週間は余裕があるわね。0になったらビーコンつけながら、フルトンで飛び上がってね』
「むちゃくちゃ言うなぁ」
そういった瞬間、落下していくような浮遊感にとらわれる。
『投下始まったから連絡切るね?お元気で』
「ちょっとまてぇぇぇぇぇぇぇ。」
成層圏からのフリーフォールは…突然なものでした。
落下中に感じる妙な浮遊感を体感しながら俺は感覚的に気持ち悪くなってくる。
「おぼえてろよぉぉぉぉぉ」
しばらくして、着地の衝撃が体を襲いぼろぼろになった状態で、カプセルから這い出る。
「いつつ、あのアマ次逢ったら穴という穴に指ツッコんでひいひい言わせてやる」
俺はメットを脱ぎながら、そうつぶやくと装備品の確認をしていく。
「全部あるな…おまけとかつけてくれなかったのか…」
おまけ弾倉もう一個とか…つうかアサルトライフルに大量に弾つけてくれた方が個人的にうれしかったわけだが…
「さぁて、行きますか…」
俺はライフルを担ぎゆっくりと歩いていく。
「昨日の敵は今日の友っていう言葉がうちの国にあってな?いやーでも依頼してくれて助かったよ」
それを聞いた兵士たちが笑う。
「こちらも劣勢だからね。わらでもすがりたい気分なんだよ」
俺の所属するPMC『夜明けの狼』はもともとクーデター軍に雇われていたが、上層部がどういうわけか、契約を切り、どういうわけか、政府軍側と手を組んだ。
「はっは、新兵はたぶらかされてほとんど、クーデター軍ですからね。そしてほとんどのPMCは有利なクーデター軍に雇われ、依頼を受けてない所は契約を拒否しているのが現状ですしね…苦労をご察しします」
俺がそういうと、地表に爆弾でも落ちたかのような音がし、軽く身構える。
「敵襲か?」
「爆弾…ではないようですが…アレは強化外骨格?あの大陸が動き出したとでも?」
俺は双眼鏡を覗き込みながら、軽く警戒を解く。
「あぁ大丈夫ですよ。アレをここまで連れてきてくれませんか?俺がいったら、信頼感がないので内通だと思われますし。」
「…わかった。おーい」
老兵が去って行ったところで、俺は笑う。
「あぁやっぱり大将を動かすのか、上はこの戦争、盤語とひっくり返す気満々じゃねぇか…」
ため息をつく、曰くスナイパーライフルで突撃する男、曰く歩く死神、曰くすべての乗り物を扱える男、曰くバグキャラ……そしてワンマンアーミーと呼ばれた男……そんなやつが戦場に出てきて、ひっくり返らないわけがない。
「正規軍と合流できたのはうれしいことだな」
聞きなれた声が近づいてくる。
「よう、大将。元気か?」
強化外骨格に身を包み、ヘルメットをかぶった男がヘルメットをつかみ俺に投げつけてくる。
「おう相棒、弓野 正司」
俺のフルネームをわざとらしく予備強化外骨格に身を包んだ男は、にやりと笑う。
「で?今回はどんな以来なんだ?」
「アーカム・エルミフス中将の首を取ることだ」
正規軍の人間がざわめく。
「ひとついいだろうか?」
先ほどまで話していた老兵が、話に加わってくる。
「指導者を全員殺さないと、さらに混乱するだけだと思うが」
大将が悩む。
「金にはならんけど、クーデター軍を半壊させる気だよ?俺はね?」
軽く背筋に寒いものが走る。
大将が言い切るということは、大将のバックについているであろうウチの上層部が好きなようにやれといったような命令を出しているのだろう。
「ウチの連中が、クーデターの指導者たちにぼろ糞言われたみたいだしねぇ、中将への報復はその見せしめらしいよ…」
あぁウチの上層部ならいいかねんな…ってか正規軍に手を貸すのもそれが原因かよまったく。
「まっ口は災いの下だってことだ」
おぉ、クーデター軍もかわいそうに…力を持った屑の寄せ集めに敵対したばっかりに…
「つか、やるにしても、バックアップがいるなぁ…」
「ん?」
俺は予備弾倉と共に、なぜかアンチマテリアルライフルを渡される。
つうか、これウチの技術部の試作のやつじゃねぇか…表に出して大丈夫なのか?
「そいつ本部に届けといてくれ。正規軍の方…ちょっとおはなしが…」
そういいながら離れていく大将の背中を眺めながら、俺はため息をつく。
「やれやれ…これから面白くなりそうだ」