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剣と愛の果てに  作者: 芳賀さこ
第八章 新たなる想い
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恋のライバル!?

「この間の肉が丁度食べ頃だ。中で待ってろや」

 料理長が従業員に猛獣を倉庫に運ぶよう指示すると五人がかりでおぼつかない足元で持ち上げて行った。こんな重い物をガトルとシオンの二人で抱えていたのかとフィリカは驚きを隠せない。

 勝手知ったるガトルが店内へ入って行ったので三人も後をついていくと、見慣れない客に注目が集まった。

「ねえ、ガトル。あの男の人は誰?」

「あんたの知り合い?」

 女性達がガトルに話しかけてくる。

「まあ、俺には負けるがな」

「その自信は何処から来るのかしら?」

 呆れた口調の彼女達は笑いながら席を離れて行ったのでガトルはウエイターを呼んだ。

「シオンとやら、イケる口だろ?」

「まあな」

 にやりと笑ったガトルが酒を注文するとやがて、テーブルに特大のジョッキが二つ置かれた。ガトルの特注だとウエイターが苦笑しながら教えてくれた。

「この町では俺と対等に酒が飲める奴がいなくて退屈していたんだ」

 ブランクルで賭けをして文字通り浴びるほど酒を飲んだシオンは思わず顔をしかめる。

 アリシアとフィリカがバイキング方式となっている料理を取りに行ったのを見計らってガトルが声を潜めた。

「ここだけの話だが、俺はアリシアに惚れていてな」 

 突然の告白に酒を飲むシオンの動きが止まる。

「遠征先で出会ったんだがあの凛々しさは今でも忘れられん」

 その場にいなかったシオンでさえ、雄々しい剣士に交じり白馬に跨ったアリシアはまさしく女神であっただろうと想像するに難くない。

「言っておくが、俺の方が先に惚れたんだ」

「へえ」と軽く相槌を打つところをみるとどうやら信じていないらしい。

「それじゃ、勝負と行くか」

「勝負?」

「ああ。アリシアを賭けてな」

 突然の展開にシオンが唖然としていると、料理が乗った皿を片手にアリシア達が戻ってきた。

「二人ともすっかり仲良しになったみたいね」

「お姉様、ちょっと違うみたいだよ……」

 空気が読めるフィリカは、にこやかなアリシアの袖を引っ張って訂正するも鈍感な彼女は全く気付いていない。

「勝ったらアリシアを頂く。負けたら彼女を諦めて部下になる」

「……私がなに?」

 経緯を訊こうとアリシアがシオンとガトルを交互に見たが対峙して相手にしない。

 短い間が空き、シオンが真剣な表情で言った。

「いいだろう。その勝負受けてやる」

「ええっ!?」

 先にフィリカが声を上げたのでタイミングを失ったアリシアは目を丸くするだけだった。

「そうこなくっちゃ面白くないからな」

 ガトルが不敵な笑いでシオンを見やるとシオンもまた口端を上げて応えた。

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