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剣と愛の果てに  作者: 芳賀さこ
第八章 新たなる想い
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『鋼鉄のガトル』 その2

「何故ここに?」

「宮仕えはつまらん。俺よりも強い奴はいないし、暇潰しに猛獣狩りをしているってわけだ。それよりお前さんこそどうした?」

 自由奔放で雇われ師団長のガトルとは違い、アリシアは由緒あるオマスティアの騎士団長である。まさかこんな山中で出会うとは彼の方が驚いた。

「事情があって今は国を離れているわ」

 アリシアが寂しげに微笑むとガトルは髪をかきむしった。

「苦労したんだな。それはそうとこれから何処へ行くつもりだ」

 すっかり二人だけの会話に憮然としているシオンにフィリカが身を寄せる。

「お姉様とあいつって特別な関係だったのかな?」

 その台詞にシオンは思いっ切り眉をしかめた。

「そう思うか?」

「だって楽しそうにしゃべっているよ」

「俺にも楽しそうにしゃべるぞ」

 すると、フィリカが意地悪い笑みを浮かべて「妬いてるの?」と言ってきた。

 確かに心中は穏やかではない。一般人ならともかく相手は剣士で一度はその名を耳にしている。しかも、自分と歳は変わらない。容姿はそこそこだが、強い者に惹かれるアリシアは問題ではないはずだ。

「特に当てはないけど」

「だったら俺の所へ来い。泊めてやるよ」

 これにはフィリカが口を尖らす。

「ええっ!! 私、やだよ!!」

「そうか。夜は猛獣がそこら中をうろうろするんだがなあ」

 ガトルが落とした視線を追うと、足元に横たわっている巨大な猛獣がいたので身震いした。

「せ、せっかくだから泊めてもらおうよ」

 アリシアの背に隠れたフィリカにシオンが溜息をついた。

 アリシアとフィリカが賛成しているのなら自分一人が反対しても仕方がない。

 シオンは上機嫌のガトルと二人で猛獣を担いで山を下りる羽目となった。


 山を下りて一見の料理店に着くと、ガトルは裏口へ回るよう指示した。戸をノックしたまではよかったが力加減を誤って分厚い扉をぶち破ったのにはシオンも目を丸くする。

 その爆音に店の奥から料理長が慌てた様子で駆け付けた。

「おい、ガトル!! これで何回目だ!? 少しは学習しろ!!」

「そう怒るな。こいつで勘弁してくれ」

 罰悪く頭を掻きながらガトルが体を開けて猛獣を見せると、料理長の機嫌が一気に直った。

 この猛獣の肉は身が程良い霜降りで、非情に美味だが凶暴なのでなかなか手に入らない逸品なのである。おまけに遭遇する確率も低いので、今回は本当にツイていたとガトルは満足気に彼に説明している。

 料理長はわざとらしく咳払いをして「今度から気をつけろ」と言うだけに留まった。

 それにしても、と料理長がガトルの周りを見渡す。

「ここ数日で随分と連れが増えたな」

 シオン、アリシア、フィリカはそれぞれ顔を見合わせた。


 

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