初恋 その2
「大丈夫ですか?」
声がしたので目を開けると少女がシオンの顔を覗き込んでいる。
「これくらい平気だ」
と見栄を張る気力もなくただ見つめるしかないシオンに、少女は持っていたハンカチを取り出して額に溢れる汗を拭い始めた。
「ひどい汗。足を怪我をしているのね?」
少女はナイフで自分のスカートの裾を細長く切り裂き包帯代わりにシオンの足の傷より若干上をきつく縛る。
「待ってて。お水持ってくるから」
ブランデー色の髪を揺らして小走りに去っていく少女を見送ると少しは気持ちが落ち着いてきた。
きつく縛られた際に痛みで顔が歪んだがこれで止血出来ると彼女の処置に感謝する。
しばらくして、約束通り少女は大きなバスケットを抱えて戻ってきた。どうやら持ってきたのは水だけではないようだ。
小さな白い手で一生懸命傷の手当てをする彼女をぼんやりとした視界で眺めていると目が合った。
髪と同じブランデー色の大きな瞳に透き通る白い頬、ふっくらとした薔薇色の唇は幼いながらも美しい容姿にシオンは一瞬で心を奪われた。
一通り処置が済んで一安心したのか少女から笑みが漏れる。
「お薬飲んでしばらく安静にしていればだいぶ楽になると思うわ」
まだ声を出すのも辛いので小さく頷くと彼女は横に座ると日傘を差してシオンに日陰を作ってやった。日差しが強い日中は大変有り難い。
少女はバスケットの中から水差しとコップを取り出して注ぐとシオンに手渡した。
上体を辛そうに起こす彼の背中をそっと支えて震える手に自らの手を添えて薬を飲ませる。
やがて、薬が効いてきたのか安堵感からなのか睡魔が襲ってきたのを察したのか彼女が微笑んで言った。
「私が傍にいるから休んでて」
シオンは安心したのか眠りに落ちた。
どのくらい眠っていたのか目が覚めると約束通り彼女はシオンの傍らにいた。しかも、動く太陽に合わせて絶えず日傘で彼が日陰になるよう調節しながら。
かなり即効性のある薬で発熱による倦怠感と疼いていた左足の痛みが和らいでいる。
シオンに気付いてまたコップに注いだ水を飲ませてくれる彼女の白い手を握り締めて渇いた喉を一気に潤した。
「有り難う。お陰で助かったよ」
「元気になってよかった」
美しい微笑みが更にシオンの胸を熱くする。
「あなたは剣士?」
「まだ修行の身だから剣士じゃないさ」
「じゃあ私と同じね」
「同じって君も剣士なのかい?」
答える代りにはにかんで頷く彼女を凝視した。
このしなやかな細い身体に誰が剣士だと想像しようか。
-顔はともかく、足とかかなり太いかも……。
自然と目線は少女の足元へと移動する。包帯の代わりにとスカートの裾を裂いた所から覗いた白く細い脚は、少年には刺激が強過ぎるアングルで思わず生唾を飲み込んだ。




