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剣と愛の果てに  作者: 芳賀さこ
第六章 新たな仲間
60/201

術師 フィリカ

新キャラ登場です。

「えーっと、この薬草とお肉頂戴!!」

 ツインテールの女の子が蜂蜜色の髪を揺らしながら元気よく市場で走り回って買い物をしている。

「フィリカ、これも持っていきな」

「有り難う、おばさん」

 この店の常連なのかもぎたての野菜をおまけしてもらい、愛らしい笑顔で受け取る彼女の名前はフィリカ・エヴァローズ。この村に住んでいる十七歳の少女だ。

「あの患者さんの具合はどうだい?」

 フィリカは形のいい顎に手を添えて唸った。

「うーん。峠は越えたから意識が戻れば大丈夫だよ」

「そうかい。あの人もあんたに救われるなんて運がいいよ。足りない物があったら言っておくれ。父ちゃんに届けさせるから」

「了解!!」

 明るく答えて店の女将に手を振ると小走りで家路に着いた。

 村外れにある森の中に一軒だけあるログハウスが彼女の自宅兼診療所だ。得意な医術で村人の暮らしを支えながら一人暮らしをしている。

 先程買った物をテーブルに置いたフィリカは、奥の部屋で寝ている患者の様子を見に行った。

「そろそろ目を覚ましてもいいんだけど……」

 その人物は傷だらけだが顔立ちは美しい。白い肌にブランデー色の髪。

 そう、崖から転落して死んだと思われたアリシアだった。

 落下する際に幸いにも何度が崖に生えていた木の枝にぶつかったため地面からの直撃を免れて、沢に流れ着いたところへ薬草を探しに来ていたフィリカに助けられたのだ。

「それにしても綺麗な人だなあ」

 同性のフィリカから見てもうっとりする美しい寝顔に想像が膨らむ。どんな声でしゃべるのだろうか。瞳は何色だろうか。

 久々の訪問者に興味は尽きない。

 だが、ここは平和そのものだが重傷のアリシアを見ていると自分の知らない所で戦いが起きているという現実に心が痛んだ。


 出口を探して闇を彷徨う。混沌とした夢を繰り返してアリシアは意識を取り戻した。ぼんやりとした視界に映ったのは見知らぬ部屋の風景だ。

「あっ、気が付いた?」

 ドアが開くと元気のよい声が飛び込んできた。

 おもむろに上体を起こすと眩暈と頭痛に顔が歪んだアリシアをフィリカが支える。

「……ここは?」

「私の家よ。あなたの名前は?」

 まだ意識が定まっていないのか間が空いたが、やがて口を開いた。

「アリシア……。アリシア・シャムロック」

 フィリカはほっとした様子で大きな菫色の瞳でアリシアを優しく見つめている。

「ここに来る前のことを覚えている?」

 ここに来る前……。

 自身を助けようと必死に手を伸ばす漆黒の剣士と黒髪を靡かせた女剣士に向けて放った波動。

 忘れもしないロザヴィとシオンそして自身の忌まわしい記憶が激しい頭痛となってアリシアを襲った。

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