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剣と愛の果てに  作者: 芳賀さこ
第三章 アリシア、立つ
36/201

終結

やっと過去にピリオドを打つアリシア。シオンに対する気持ちに変化はあるのでしょうか。

 アリシアとシオンの私闘は、城の内部に思わぬ効果をもたらした。 

 剣士としての凄まじさに慄いたのか、シナリア側の官僚が以前に比べて協力的になってきたのだ。

 動機はどうであれ改革もやり易くなったとアリシアはシオンに感謝する。

 シオンはというと、クッソが自ら騎士団長の座を降りたと知らされた剣士達が、我先にと剣の相手を申し込んできたので当分は退屈しなくて済みそうだ。

 そして、締めはやはりフェザーとのひと勝負なのだが、これがなかなか骨が折れる。シャムロック母子が絶大な信頼を寄せているだけあって腕が立つ上、駆け引きが上手い。そんな彼と対戦していると、ふと自身の師を彷彿させる。

 元気にしているだろうか。



 財政の目途がようやく立ち、城内も落ち着きを取り戻しつつあった。

 まだ序章に過ぎずしばらくは混乱も続くだろうが、その内立て直してくれるに違いないとアリシアは願う。

「これで私の役目は済みました」

 アリシアは膨大な書類にサインをし終えるとペンを置いたので、横で古文書を読んでいたエバが顔を上げた。

「国の一大事とはいえ、後始末をさせて済まなかったのう」

 三年前にアリシアを救えなかったことを未だに悔んでいるエバを気遣うように笑顔で首を横に振った。

「逃げ出したのは私の方ですから、このくらいは当然です」

 椅子から立ち上がり窓を開けると、爽やかな風が部屋を駆け巡った。疲弊しきった頭に心地よい。

 視線を下ろすと、偶然にも庭園を歩いているシオンと目が合った。

 いつものように片手を上げる彼にアリシアも手を振って応える。

 ここに来て一カ月近くになるが、彼の周りには剣士、侍女、役人など職種は様々な人が集まってくる。既にこの城の住人かと思わせる様子にアリシアはつい失笑した。

 そんな彼女が珍しく、エバが目を丸くする。

 アリシアが去った後も、過去を引きずって暮らしているのではないかと気が気ではなかった。たまに便りが届くが、「大丈夫」だの「元気にやっている」だの在り来たりな文面ばかりで少しも近況が見えてこないので心配は限界に達していたのだ。

 三年ぶりに会ったアリシアは以前より雰囲気が変わった気がした。変わったというより、イルセが存命だった頃の明るいアリシアに戻ったと言った方がいいのかも知れない。

「このまま、ここにいてはくれぬか?」

 エバの申し出にアリシアは少し困った顔をした。

「三年前の処罰を気にしているのなら大丈夫じゃ。おぬしを呼び戻す際に不問とし、王女としての復権も果たしておる」

「色々な国を旅をしてきたことが今回とても役に立ちました。ですから、もっと学ぶためにまた旅に出ようと思うんです。それに……」

 間が空いた後に遠い目をしたアリシアが静かに言った。

「色々な人と会ってみたい。シオンと出逢ったように」


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