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剣と愛の果てに  作者: 芳賀さこ
第三章 アリシア、立つ
27/201

宣言

 ようやく遠征から戻った剣士達の傷も癒えた頃、アリシアは妹のシナリアに呼ばれてフェザー共々玉座の間へ来ていた。

 既に各大臣達が集まっており、クッソも列中にいたがやはりアリシアと目を合わせようとしない異様な雰囲気に胸騒ぎがした。

 やがて、シナリアが遅れてやってくると無人の王座の横に立った。

「本日、皆に集まってもらったのは国政についてです」

 本題を切り出したシナリアに一同は注目した。

「ご存知の通り、王が病に臥せっており滞っています。これ以上長引けば国の混乱を招き兼ねません」

 もっともだ、と大臣達が頷くとアリシアはますます違和感を覚える。

 いつもと皆の様子が違う……?

「そこで、この問題を打開すべく慣例に倣って私シナリア・シャムロックが代理で取り行うことを提議します」

 彼女の高らかな宣言にエマとフェザー、そしてアリシアは驚愕した。

「尚、この場にいる三分の一の同意があれば決定となります」

 この唐突な提議に皆戸惑うに違いない。

 そう思っていたが、いともあっさり大臣達が同意の挙手をしている光景に、アリシアが抱いていた違和感が次第に形になって現れ始めた。

 実は、シナリアは騎士団が遠征に行っている二カ月間、利権を約束した上で現在の体制に不満を持つ大臣達と手を組んで綿密に事を進めていた。もし、途中でエマなど王側の人間に知れたら全て台無しになるどころか、我が身も危うくなる。それ故、水面下で各大臣に根回しをして舞台を整えていたのだ。

 謀ったな、とフェザーの責めるような鋭い視線に挙手した大臣達は罰悪く顔を背けた。

「半分の同意があったので、只今より私シナリア・シャムロックが王の代理として国政を行います」

 急展開にアリシアは茫然と成行きを見守るしかなかった。

 アリシア自身も当時母イルセがしていたように騎士団に身を置き、王位は放棄していずれはシナリアに継承すると心に決めていた。決めていたが、こうも早く、しかもこちらになんの相談もなく話を進めてしまうとは、まさに青天の霹靂である。

「シナリア、何故わし等に一言の相談もなく……」

「相談? したところであなた方に拒否権はないのですよ、エマ様」

 王の代理であるシナリアの決定に、いくらエバでも口出しは出来ない。

「早急ですが、各大臣も新たに任命します」

 列中からクッソが進み出るとシナリアから預かった書面を読み上げた。その上擦った声は、お世辞にも堂々たるものではなく頼りないものだ。

 次々と各大臣が発表すると王側の者達から溜息が洩れた。何故なら、大半が先程同意したシナリア側の人間だったからである。

 クッソが一呼吸置いてますますか細い声で読み上げる。

「騎士団長、クッソ・ミリオン」

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