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剣と愛の果てに  作者: 芳賀さこ
第二章 過去への帰郷
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開かれた門

アリシアの正体とは!? 城門が開かれた時、全てが明らかになる!?

 騎士団の先導で、ついにシオン達はオマスティアの城下へ足を踏み入れた。アリシアにとっては実に三年振りの帰郷だが表情は依然として冴えない。

「アリシア様だ!!」

「アリシア様がお戻りになったぞ!!」

 馬に跨るアリシアの姿を見つけた人々から歓声が上がった。彼等の歓迎に馬上から軽く手を挙げて応える彼女は堂々たるものだ。

 途中、幼い少女がこちらへ駆け寄ってきたので一同は馬を止めた。

「アリシア様、これを」

 差し出したのは一本の薔薇だった。恐らく急なことで、少女の小遣いでは薔薇一本しか買えなかったのだろう。

 アリシアは馬から降りると笑顔で受け取った。

「ありがとう。とても綺麗な薔薇ね」

 その言葉に嬉しそうに母親の元へ走っていく少女を皆微笑ましく見守っていた。

「優しいな、彼女は」

 シオンの呟きを耳にした中年の剣士が寂しげに笑ってこう言った。

「その優しさが時にやいばとなるのだよ」


 いよいよ、城門が見えてくるとアリシアが振り向いた。

「ここから先はあなたに迷惑を掛けるかも知れない。ここで別れましょう」

 申し訳なさそうに言う彼女にシオンは憮然とした。

「俺はそんなに柔じゃない。だいたい、別れましょうって深い仲でもないだろ?」

 アリシアが小さく笑うと彼も目を細めて微笑んだ。

「開門ー!!」

 剣士の号令で厚い城門が開き、眩い光の中から現れた人影にシオンは息を飲んだ。

「お帰りなさい、お姉様」

 目の前に立っていたのはアリシアに瓜二つの女性だった。

「初めまして、この国の王女シナリアです。驚かれるのも無理ないですわ。私達、双子なんです」

 事実を聞かされてシオンは驚いたが、実の妹を前にしたアリシアの視線は遠くにある。

「お姉様が羨ましいわ。こんな素敵な方とご一緒だったなんて」

 シオンは、自分を品定めする媚びた眼差しに嫌悪感がした。

「お疲れでしょう。城でお休み下さい」

 シナリアに促されて二人が城内へ進んだ時だった。

「久し振りだね」と、アリシアの前に若い剣士が現れた。

「あなたも元気そうね」

 短いやり取りだが、当時深い関係にあったとシオンは二人の表情から読み取った。

 彼の名前はクッソ・ミリオン、騎士団の団長を務めている。気弱で頼りない印象は、威風堂々のシオンとは対照的な人物である。

 クッソは何か話したい様子だったが、シオンがアリシアの肩を抱いて行ってしまったのでそれが叶わなかった。

 残されたクッソは漆黒の剣士を嫉妬と怒りが入り混じった目で睨んでいた。


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