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剣と愛の果てに  作者: 芳賀さこ
第二章 過去への帰郷
13/201

遭遇

ついにオマスティアの剣士達と会うアリシア。皮肉にも本人の意思に反して時間は進む。

 シオンの言葉が答えの全てではないが、アリシアの心は少し軽くなった気がする。

 揺るぎない信条。

 かつてのアリシアもそうだった。あの出来事が起きる前までは……。

 身につけている鈍く輝くいぶし銀の鎧はまるでシオン自身を表しているようで、彼なら自分が抱えている状況を打破してくれるかも知れない。そう信じて意を決したアリシアが彼を呼び止めた。

「シオン、あなたに言うことがあるの」

 やっと話してくれる気になったかと逸る気持ちを抑えてシオンは向き直った。

「私は……」

「アリシア様!!」

 突然、男の声が二人の会話を遮った。振り向くと、鎧姿の剣士達が数人現れたのでシオンはすっと柄に手を添えた。

「やはり、アリシア様でしたか! ラヂュエンでお見掛けして追い掛けてきました」

 実は、アリシアには見覚えがあるこの剣士達が何者か察しがついていた。

 臨戦態勢のシオンに、一人の剣士が前に進み出た。

「突然の無礼、お許し下さい。我々はオマスティア騎士団の者です」

 オマスティアといえば、アリシアと関係がある国の名前である。

「エバ様のめいによりアリシア様を探しておりました」

「エバ様が?」

「はい、直ちに城へお戻り下さい」

 アリシアは思いつめた表情でしばらく立ち竦んでしまった。彼女が読んでいた手紙の差し出し人はそのエバなのである。旅の途中で一度だけ母国に手紙を送った返事に内政の乱れについて書かれていた。

 すぐにでも駆けつけたいところだが、アリシアにはそうできない事情がある。

「やっぱり私は行けない。エバ様にそうお伝えして」

「我が国の内政危機なので是が非でもお連れせよとのことです」

 騎士団全員の懇願する目に、唇を噛んで己の感情に耐えているアリシアが痛々しかった。

 アリシアが騎士団に属していたという事実はシオンにとっては驚きではなかった。あれだけの腕を持ちながらただの放浪者と思う方が不自然である。

 それにしても、オマスティアの剣士とは恐れ入ったとシオンは髪をかき上げた。

 オマスティアは西に位置しており、東の国出身のシオンはさほど詳しくないが名前だけは聞いたことがある大国だ。

 そして今も尚、剣士の間で語る継がれる武勇伝の偉大な女剣士がいた国。

 確か彼女の名はイルセ、姓は……。

 重大な事実に気付いたシオンははっとしてアリシアを見た。

 アリシアは、澄みきった空を見上げてやがて視線をシオンに戻した。

 なんて哀しい眼をするんだ、アリシア……。

 二人は見つめ合う形となり、ブランデー色の瞳は哀しみで溢れていた。

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