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閉鎖空間で読書

作者: きていじん

静かな部屋に二人がページを捲る音だけが響く。

一人は自分、そしてもう一人は向かいあって座っている女だ。

淡々と目の前の未読箱に積まれた本を読み、既読箱に置く。

そして、その作業を僕と目の前の女は昨日から続けており、一昨日からこの部屋から一歩も出ていない。

二人の制服は少し饐えた匂いを発し始め、空腹で目は紙の上を滑るのみで内容は全く頭に入ってこない。

要するに。閉じ込められた。

状況はこうだ。

一昨日、活動と称してただ好きな本を読みふけるだけの謎部活動の定例の、各々中の良い人と何を読んだか等話しつつムニトで盛り上がる会が開催され、その途中、暖房に当てられて少し仮眠を取ろうと思い、突っ伏して寝た。目が覚めたら電気の消えた暗い部屋で、肩にカーディガンがかけられていて、仲の良い女が向かいでつっぷして寝ていて、時刻は午後11時だった。

一瞬冷や汗をかいてドアに手をかけると案の定外側から鍵を閉められていて、少しガチャガチャやった物音で君は起きたらしく。

「おはよう……っつか暗いな。電気つけなよ」

「残念なお知らせと更に残念なお知らせがあるが、どっちから聞きたい?」

「……軽い方からお願いしようか」

「今午後11時」

「……それ以上に残念なお知らせは?」

「月曜日祝日だね!」

「あー……やられた……」

そう。一昨日は金曜。そしてその翌日と翌々日の土日はグラウンドと体育館使用不可で運動系部活がお休み。そして部員達は謎のノリの良さ。

「これはドア破壊か三階のここからノーロープバンジーしか無いね」

「それ誰がやるんだ」

「男の子はお前しか居ないじゃないか」

死ぬのは怖いなぁ、と当たり前の文句を言う僕に、

「じゃー誰か来るまで待つか。最悪火曜までだし。」

と持久戦を提案。

それも良いねーと適当に部員達が持ち込んでいる小説から幾つか取り、未読箱の中に入れる。

「友情、人間失格、絶望系 閉じられた世界、って何でこう暗いものばかり……」

「君もこころとか嵐が丘とかじゃないか。」

「嵐が丘は最後にヒースクリフから取り戻すから良いの」

「あータングラム倒さずに放置するからなぁ悪魔」

君はそーじゃねぇだろ、と呟いて電気をつけようとするが放課後は電気がつかない。

「あれ、つかないんだ」

「そういやつかないんだったな。前に泊まった時もたしかつかなかったし」

とかなんとか会話をし、しょうがないとして机と椅子を寄せて床に寝たのが初日。

そして昨日からひたすら飲まず食わずの読書会がスタートし、目が滑るって本当にあるんだなぁと思い始めたのがその日の午後。

何か無いかと探し、数日前に買って食べなかったビスケット系の簡易食をカバンの底から発見し。

外箱の中に入っている二つの銀紙パッケージの内一つを君に投げると、少し驚いて

「良い物持ってんじゃん。ありがとー助かった」

とか食べながら言い、顔をしかめて

「……これゲロみたいな味するな」

とかなんとか。

人からもらったのに何てこと言いやがる。いやゲロみたいな味するけれども。

とりあえずの食事をし、また同じように寝たのが昨日の夜。

で、今日の朝に

「お前は何か食べるもの持ってないのか」

と聞くと肯定するので、昨日のビスケットのお代を貰ってないねぇげっへっへと言うと

「霞」

って蹴ったおすぞ貴様。

しばらく本を目の前に置いて適当な事を会話した後、君が

「あー聖夜じゃん。性夜性夜。」

性夜連呼すんなや、と言うが壊れた君は止まらず、

「なーんだよーみんなしてあれだろー合体だろー合体してるんだろー変形して合体ー」

人体は変形合体しねぇだろ、と返すと

「何でもいいから私より幸せそうな顔をしている連中は爆発しろ」

「そんなの掃いて捨てるほと居るだろうに」

「まーねー。でも2日も一緒に居るのに手出さない男はアレだね。もうホモだろお前」

手を出したら人生が爆発四散して手を出さなかったらホモ認定で爆発四散か。どーしろと。

僕は寮、君は一人暮らしとかで長期間休日に失踪してもあんまり騒がれない。後々助けが来るかもしれないし来ずに自力脱出かもしれないけど時間なかった。っつか会話(地の文)下手だなぁ俺。

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