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因果よ。回れ

「「ゴホッ、ゴホッ」」

二人揃ってせき込みながら天井の崩落が止まっていることに気付いた。辺りが再び静寂を取り戻す。しかし、

すう

ほんの少しの空気が動く。そして激しい土埃の中から一対の翼が姿を現した。徐々に視界が整ってくるとその翼だけでなく全体像もはっきりと姿を現し始める。

「ワイバーン・・・」

飛竜と呼ばれることもある小型ドラゴンの一種である。

ドラゴン 最強のモンスターであり、希少な種族でもある。出会うことも少なければ対峙する機会もほとんどない。そんなレアな体験を二人は二つ同時に体験していた。明らかに相手は敵意むき出しだったのである。

「まさか、ガーディアン!?ドラゴンをガーディアンにするなんて聞いたことがないぞ!?」

そういながら抜刀、機先を制するべく脛に向かって斬撃を繰り出した。

カキン

明らかに金属同士をぶつけあったような音が辺りに響く。刀は全く切り裂けず鱗を一枚傷つけただけだ。

「ヒエン!!」

マイの一声に反応して素早く後方から飛んできた投げナイフをかわす。

「「「ドカーン」」」

マイの投げナイフには炸裂岩が仕掛けられ、ぶつかると同時に炸裂する。しかし、

「き、きいてない・・・・」

マイは驚いて一瞬動きを止めてしまっていた。

『ガアーーー!!』

その隙を逃さず、その巨大な顎で噛み砕かんと突進してきた。

「マイ!!」

竜の牙に囚われようとしたマイを強引に突き飛ばすようにして救いだした。

「うっ!」

「ッ!!」

前者は突き飛ばされたマイの肺の空気が押し出される音、後者はマイを救い出すために左の二の腕を切り裂かれたヒエンのものである。

「あっ!!ヒエン・・・」

「掠り傷だ」

マイの言葉に被せるようにヒエンは言う。一方、切り傷は宿主の期待を裏切るようにどくどくと赤黒い血を吐き出してした。



ちらっと傷口を確認する。想像以上に深いようだ。また、ワイバーンのほうを見る。さっきの攻撃で壁に大穴が開いている。一瞬の思考の末、私は

「マイ、ありったけのナイフを出せ」

「え、どういうー」

「時間を稼ぐ、お前は壁の大穴から脱出しろ」

「でも・・・」

「安心しろ、俺は幸運の女神に愛されているからな」

「でも!」

「行け!!」

私は振り返らず、一直線にワイバーンに突進していた。まず、マイから取り上げた投げナイフをワイバーンの頭にめがけて投げる。ドラゴンとはいえ、所詮は動物である。反射的に顔をそむけてしまう。

「「「ドカーン」」」

頭部が紅蓮の炎に一瞬包まれる。ほんの一瞬、私はワイバーンの視界を塞ぐことに成功した。そして右手の刀を喉元に突きたてるべく渾身の刺突。が、

『ガリ』

ワイバーンは突きを頑丈な牙と強力な筋肉の力で受け止めた。しかし、それは私の予想の範囲内であった。

「これでラストだ!!!」

傷ついた左手に隠し持っていた一本のナイフ。それには炸裂岩がいたが、私はそれをしっかりと握りしめたまま相手の右の眼球に突きつけた。

『ドカン』

「ガアア~~!!!!」

「あ、ああ・・・・」

爆発の後、痛みに吼えるワイバーン。不思議と痛みを感じていない私。見るとワイバーンの右の眼球は跡形もなくそこには真っ赤な液体が大量にあふれている。また、私の左腕は完全に引きちぎれていて半端じゃない量の血液を撒き散らしていた。

(これは、死ぬな)

そんなことを考えながらも右手の刀は離していない。自然と口角が緩む。戦う意思はまるで萎えてはいないだけでなく、楽しいとさえ思うようになっていたからだ。

「さあて、もういち、ど!!?」

気だるくなってきた体を鞭打ちながら刀を構えたその時、すでに感覚のない左手から激痛が走った。

「な、に??!!」

だらんと垂れさがった左腕の先に青く光る物体がまるで生き物に食いつかれているような激痛を伴ってくっついてきた。よく見ると形がやや変形しているものの部屋の真ん中に浮いていたあの正8面体であった。

「いったい、なに!!!!!!」

あまりの激痛に思わず右手の力が緩む。

『カリン』

乾いた音を立てて刀が床に落ちる。が、そんなこと気にしている余裕がない。左腕と正8面体は完全に融合し、その形をどんどん崩しながら左腕を侵食しているようだ。

『キサマガソウダトイウノカ?!』

発音、イントネーションがおかしいが聞き取れる言葉が辺りに響いた。

「だ、れだぁ・・・」

『フフフ、オモシロイ、オモオシロイゾ。ニンゲンヨ』

「!しゃべ、る?ワイバーンが・・・・・」

古から生きているという古代竜ならともかく、小型のドラゴンがしゃべるなんて・・・・ありえない。

『フフフ、インガヨマワレ、ハテシナイホドニオドリクルウガイイ』

2,3度、羽をはばたかせると再び天井に穴を開け去っていく飛竜。目の前から敵がいなくなっていったせいか突然、視界が暗転する。意識を保っていられない。

「ヒエン!!!!」

それは幻聴だったのだろうか?それとも本当に?確かめられないまま私は・・・・・


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