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勃発

帝国暦294年9月11日 帝国南部都市 ベイヨン


「この街は我が皇女軍が制圧した!!」

「「「をおおおおおおお!!!!」」」

皇女軍は忌まわしい聖十字騎士団の侵攻から手薄な正統帝軍よりいくつかの街を制圧することに成功していた。このベイヨンの街は聖十字騎士団侵攻の際、拠点となっていた街の一つで皇女領侵攻の基点となる街だ。この街を制圧することで事実上、正統帝軍からの侵攻は不可能となった。

「この辺が潮時・・かね?」

「潮時ですね」

高野ヒカルとオリゼはお互い馬にまたがりながら、制圧したばかりのこの街の大通りを数人の兵士を従えながら進んでいた。

「貴族連合はどんな様子なんだい?」

「ええ、スルムン河を挟んでにらみ合いですね。二週間ほど前に攻勢をかけたみたいですが、ものの見事に蹴散らされてしまいましたからね」

「そりゃ、ご愁傷様だ。帝国軍の支援はなかったのかい?」

「申し出はあったみたいですが、貴族側が断ったみたいですね」

「?」

「ああ、ロゼッタ様がもぎ取った南部領で皇女領設立されましたからね。帝国による直轄領の編入を恐れているのでしょう」

「いまや、帝国軍と貴族連合は一体ではないというわけかい・・・いやいや、世の中何があるかわからないね」

ヒカルはやれやれといった感じで首を振る。

「まあ、そこにロゼッタ様の書状攻勢の賜物って感じもしますがね」

帝国宰相府などの文官組織や非主流派の貴族、下級貴族に細やかな配慮や書状などで悪くて中立状態に持ってゆくことに成功していた。むしろ文官組織以外はロゼッタに友好的でさえある。ロゼッタは想像以上の筆まめさと最近、各地の商業ギルドに顔の利き始めた南部商人ギルドの力をフル活用して次々と自陣営へ引き込んでいるのであった。

とある非主流派の貴族には政敵である貴族の情報を求め、あるいは与え、絶妙なさじ加減で配下というよりは同士だという感覚を与え、利ではなく信を結び、あるいは困窮する貴族には資金や物資の支援、領地を持たない下級貴族には東部辺境領や南部皇女領、あるいは皇女軍での士官などを斡旋、着々と貴族層の支持を広げていっていた。(これは帝国東部、南部の深刻な人材不足と下級貴族はある程度、専門的な知識や技術を身に着けていることがあったため)

結果、徐々にではあるがロゼッタ第三皇女の勢力は拡大していったのであった。

「とはいえ、現状じゃ、さすがに帝国軍と正面切って戦うわけにはいかないからね。第二皇子様にゃもう少し頑張ってもらわないとね」

ヒカルが言うように分裂しているとはいえ、正面切って戦うには分が悪すぎた。

「ええ、正統帝軍にはもう余力はないですからね。占領地でもそんなに無体なことはできないでしょうからね」

正面切って戦えないからこそ楯として正統帝軍の存在は皇女軍にとってありがたい。だからこそ目の前には無防備な正統帝軍の勢力範囲が広がっているが攻め込むことができないのだ。

「とりあえずは道路の安全は確保できたんだ。しばらくは落ちた領内の治安の向上かね?」

「そんなところでしょうね」

しかし、時代は決して停滞を許さなかった。なぜなら驚愕の宣言が2つもほぼ同時に行われからだ。それは新たな混乱を帝国、いや、世界に広げた。



帝国暦294年12月18日


その日、ラーム神聖国は実に25年ぶりの降雪に覆われていた。そんな中、実に数か月に及ぶ大議論の結論が出ようとしていた。

「ヴェール帝国に対し、聖戦を発動する!カルナック聖教を信じるすべての国が宣戦布告することを望む。我らラーム神聖国は十字軍の設立を宣言する」

十字軍、それはカルナック聖教を国教とする国の連合軍である。その行為すべてが神の名のもとに許されるとされる。ちなみに正統帝軍もこの動きに呼応し、翌19日には占拠地を神聖ヴェール帝国としてヴェール帝国から独立を宣言した。


しかし、人類社会に激震をもたらした聖戦の発動はそれすら序章に過ぎないことを人々に知らしめるのであった。


物語は少しさかのぼる


帝国暦294年10月20日

ヴェール帝国最大の敵対国 ファランク王国国王マーク3世死去


帝国暦294年11月2日

ファランク王国 新国王 ランデル2世 即位


そして帝国暦294年12月20日

ファランク王国国王 ランデル2世 ヴェール王国第一皇女 アティナ 婚姻を発表。国名をファランク・ヴェール連合とした。


同日、ファランク・ヴェール連合、ラーム神聖国及び十字軍に参加した各国に宣戦布告。

さらにファランク王国、ヴェール帝国の傘下の19ヶ国、同日、宣戦布告。


こうして人類社会を二分する世界初の世界大戦が勃発したのであった。


短くてスイマセン><

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