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ガーディアン  作者: 閃天
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第九話 スクープある所 報道部あり

 静かに流れる風が、砂塵を舞い上げる。未だ、地面からは黒煙が立ち上り、近くにそびえる木々は、所々火の手が上がり空に火の粉を舞い上がらせる。そして、それはすぐさま騒ぎの元凶となる。それも当然。こんな清々しく晴れた日に落雷。しかも、それが電力室を直撃し木々が燃える。こうなれば、誰だって大騒ぎする。騒ぎに気付いた守は、すぐさまフロードスクウェアをネックレスに戻し茂みの中へと飛び込んだ。

 すると、すぐ足音が響き、カメラのシャッター音が聞える。報道部の連中だろう。報道部とは、取り合えず校内で起きた事件や面白い事を新聞にするという、スクープ大好き生徒が集まって出来た部活動なのだ。一部では『人のプライベートを新聞に載せるなど問題だ!』と、言う声も上がるが、殆どの生徒がそれを楽しみにしているため、辞めさせられないといったのが現状だ。


「フフフフフッ! これは、特ダネよ! 明日のトップはこれよ!」


 妙に気合を入れる女子生徒は、現状の様子を素早くカメラのシャッターを押し写真に収める。大きな二重の目を眼鏡の下から輝かし、長く伸びた髪は頭の後ろでたくし上げ、前髪は邪魔にならない様に可愛らしいピンで留められている。激しく動き回る彼女は、何度もスカートをはためかせ、幾度と無く下着が見えそうになる。

 そんな彼女の後ろに立つあんまりやる気の無い女子生徒。髪は長めで、それを二つに分けお下げにしている。眠そうに欠伸をし目を細める彼女は、屈み込み右手に持ったカメラのレンズで、目の前で激しく動き回る女子生徒のスカートの下を写す。幾度と無くシャッターを切り、スカートからチラリと見える下着を何枚もカメラに収める。


「――理穂。部長がこんなのトップに使ってくれますか?」


 やる気の無さそうな声でそう言う女子生徒は、欠伸をして眠そうに目を擦る。


「何を言ってるの! 若菜! 部長がダメと言っても、記事をすり替えてトップにするのよ!」


 自信満々にそう言う理穂と呼ばれた女子生徒。目を輝かせ、いや、眼鏡を輝かせ胸の前には力強く握り締めた左拳が。だが、理穂の企む大きな野望はもろくも崩れ去る。背後に現れた男によって。


「あれ〜? 理穂く〜ん。今、何て言ったのかな? 僕の聞き違いじゃなきゃ、記事をすり替えるって聞えたけど? どう言う事かな?」


 その声に固まる理穂は、引き攣った表情を浮かべ、恐る恐る後ろを振り返る。そこには、細々とした目で優しく微笑みを浮かべる男の姿。背丈は高く、顔立ちも良い。いかにも爽やか系と言った感じの男に向って、理穂は叫ぶ。


「ぶ、ぶぶぶ、部長! どどどどどうしてここに!」

「事件の匂いを嗅ぎつけて?」

「流石は部長。まるで犬の様ですね」


 やる気の無さそうな声でそう言う若菜は、理穂の足元に屈み込み堂々とスカートの下をカメラに収める。それに気付く理穂は、スカートを押さえ「何してるのよ!」と、怒鳴った。軽い身のこなしで理穂から離れた若菜は、はっきりと映し出された理穂の下着を見ながら呟く。


「う〜ん。まぁ、マニアには高値で売れるかも」

「ちょ、ちょっと! マニアにはって、どう言う事よ!」

「怒る所が違う気がするよ。理穂君」


 軽い乗りのコントを繰り広げる報道部を、茂みの中から窺う守は困った様に目を細める。このままでは、鬼獣が現れた時に戦う事が出来ないからだ。報道部の三人に被害が及ぶ事もあるが、一番の理由は――。もし報道部の前で戦ってしまえば、それが絶対に明日の校内新聞の記事になってしまうからだ。それだけは、避けねばならぬと、策を練る守に、フロードスクウェアが真剣な声で言い放つ。


『まずいぞ! 鬼獣があの三人の方に近付いてる』

「そう言われてもですね。今、ここで戦っちゃまずいでしょ?」

『そんな事言ってる場合か!』

「いやいや。そんな事じゃないって。大切な事だぞ」

『あのな……。ガーディアンの仕事は鬼獣を倒す事だぞ! 分かってるのか?』


 その言葉に、少し考え込む守は、「フム」と、小さく声を出すと、軽く頷きフロードスクウェアを具現化する。いつもながら、フロードスクウェアの重さに倒れそうになり、何とか踏み止まる守は、奥歯を噛み締め息を止めた。それは、フロードスクウェアを具現化した時、思わずふらつき、茂みを揺らしてしまったからだ。もちろん、その物音に報道部の三人が気付かないわけ無く、


「何、今、あそこで何か動いたわ! これは、事件の匂いがするわ!」

「う〜ん。そうだね。何気に漂うこの匂いは、確かに事件の匂い……」

「アタシには、焦げ匂いしか漂ってこないのですが?」

「フフフフフッ! 特ダネをこのカメラでおさめて見せるわ!」


 素早くコッチに向って走ってくる理穂の姿が、茂みの中からでも見えた。まずいと、思った守はすぐさまフロードスクウェアを元に戻し、身を縮こませる。雑に茂みが掻き分けられ、バッと視界が明るくなる。そして、俯く守の頭の上で声が響く。


「な〜に、蹲っちゃってるの? 一年二組 火野 守」

「ウッ……。何故、フルネームで……」

「当然、報道部ですから、何でも知ってるわ! それで、ここで何をしているの?」

「イヤ……。落雷の現場を見に……」


 そう言って、苦笑いを浮かべる守は、優しく微笑む理穂と目が合う。その時、守の胸の位置からフロードスクウェアが叫ぶ。


『来るぞ! 伏せろ!』

「へッ!」

「イッ!」


 稲光が辺りを包み込む。眩い光に報道部部長も若菜も目を閉じた。当然、守の目の前にいる理穂も目を伏せた。その瞬間、体を茂みに引き込まれ、目を閉じても明るかった筈の瞼の下が、暗がりになる。驚いた拍子に、理穂は思わずシャッターを押し、シャッター音が鳴るが、それは雷鳴とほぼ同時になったため誰も気付かなかった。もちろん、シャッターを押した張本人も。地面に落雷が落ち、轟音が響く。岩を砕き破片が辺りに飛び散った。

 辺りが静まり理穂は目を開く。茂みのすぐ傍から黒煙が上がり、丁度、理穂の立っていた位置に雷が落ちたと思われる。そんな理穂の体の上に覆いかぶさる様な形で、守がうつ伏せになっていた。体を起こした守は、「ふ〜っ」と、息を吐き理穂の方を見つめる。すると、理穂が少し怒った表情を守に向けていた。そして、守は気付く。右手のやわらかい感触に。と、その時、茂みを掻き分け部長と若菜がやってきた。


「大丈――ブッ! な、何してるんだ!」

「これは、スクープです! まさか、落雷騒ぎにまぎれて、茂みの中で!」

「ちょ、ちょっと! 待って、ちが――」


 理穂が焦りながら若菜にそう言うが、時既に遅く、カメラはシャッター音を響かせていた。驚いた様子の部長は、顔を真っ赤にし、「特ダネだ〜」と、言いながら茂みから去り行く。理穂は追い駆けようとするが、未だに守が上に乗ってるため追う事が出来ない。


「理穂がこんなひ弱そうな子に襲われる何て! キャハッ!」

「キャハッ! じゃない! って、あんたも、いつまで人の胸触ってんのよ!」


 強烈な平手打ちが守の頬を往復した。


「うが〜っ! いって〜っ」

「ドサクサにまぎれて、人の胸触っておいて、何言ってんのよ!」


 そう言い放ち理穂は頬を膨らましその場を後にした。真っ赤に手の平のあとが残る両頬を擦る守は、蹲り薄らと涙を浮かべる。フロードスクウェアはそんな守の顔を見ながら呆れながら言う。


『お前……。ドサクサにまぎれて変な事するなよ』

「お前まで、そんな事言うか……」


 追い討ちを掛けられ、ショックで守は立ち直る事が出来なかった。もう、俺の人生は終ったと。そして、この事が確実に明日の校内新聞に載ると言う事に。

 ご無沙汰してます。崎浜秀です。先週の水曜日ぶりです。

 今日は次回予告なんぞをやってみよう! 何て張り切ってたんですが、必要? 何て、考えました。必要かどうかは、暫くやってみての読者の皆様の反応を見てから考えたいと思います。

 それでは、早速、次回予告を!

【次回予告】

 やってきました夜の学校! 走る蒼い光と二つの黒い影。

 初めて明かされる守の通う高校名(これ、あんまり関係なくねぇ?)。

 昼間のショックから立ち直れない守は、久々頭をフル回転! 計算。計算。また計算! 

 守の頭で出される最悪の答え。それを解決する為、導き出されるその答えは一体――!



 と、まぁ、こんな感じです。何か……ビミョーな予告……。取り合えず、来週のガーディアンもよろしくお願いします。

 って、言うか予告必要ないかと……(笑)

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