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ガーディアン  作者: 閃天
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第二十一話 大地とグラットリバー

 鈍い音が科学室裏から聞こえる。重々しい鈍い音。それに遅れ、何かが地面に倒れる音も聞こえてきた。複数の不良達が地面に横たわり、その中心にブレスレットをした少年が立つ。息一つ乱れず、軽く右腕を回す。すでに残ったのは二人。武中と不良一味のボス中山。その二人を睨みつける少年は、聊かつまらなそうに欠伸をする。それに対し、ブレスレットの水晶がオレンジの光を放つ。


『真剣にやれ。逃げられんぞ』

「うるせぇーな。正体は掴んだんだ。逃げられても、また捕まえりゃいいだろ」

『はぁ〜っ。これだから、お前とは組みたくないんだ』

「おい! それが、主人に対する言葉遣いか?」


 不満そうにブレスレットを見据える少年に、水晶が光また声がする。


『あ〜っ。うるさい、うるさい。どうしてこうも、俺の適合者は変わり者ばかりかな……』

「そりゃ、お前が変わり者だからだろ?」

『人を変人呼ばわりか!』

「変人を変人と言って何が悪い? あっ、そっか。お前人じゃないか」

『大地! てめぇ!』

「んだ! やんのか! グラットリバー!」


 急に口喧嘩を始める二人。そんな二人は気付いていない。すでに武中と中山がいなくなっている事に。そして、今の光景が何を意味するかを――。

 そんな口喧嘩をして数分後、足音と声が曲がり角の方から聞こえてくる。それに気付いたのはグラットリバーで、それと同時に武中と中山のいない事にも気付く。


『しまった! 奴らがいないぞ!』

「なっ! まぁいいや。しょうがない、行くか」

『そうもいかんみたいだぞ』

「ンッ?」


 その言葉に振り返る大地。その視界に守と彩の二人の姿が映る。彩は横たわる理穂を抱え込み大地の方を真っ直ぐに見据え、守は首から提げたフロードスクウェアを右手に握る。その目には力が篭っており、大地を睨みつけていた。その目に不服そうに顔を顰める大地は、静かに体を守達の方に向ける。そんな大地に守は問う。


「お前がやったのか?」

「そうだ。それがどうかしたか?」

「ならお前が!」

『待て! 守、こいつは、サポートアームズを持ってるぞ!』


 守の右手の中からフロードスクウェアの声が聞こえる。その声に彩は思い出した様に「あっ!」と、声を上げる。その声に驚いた守はすぐに振り向く。その目は聊か迷惑そうな目で、その目に彩は慌てながら叫ぶ。


「あんた! 黒木 大地!」

『オヤオヤ。そう言うあなたは、水島家のお嬢様。何故、あなたがこちらに?』


 グラットリバーが口を挟むと、大地が笑みを浮かべる。不思議そうな顔をする守は、大地と彩を交互に指差す。何が何だか分からず、頭が混乱する守は、「ハフ〜ッ」と変な声を出しながら目を回した。そんな守に呆れた様なため息を吐くフロードスクウェア。こいつは何をやっているんだと、言わんばかりに視線を送る。その視線に守も気付き「はっ!」と、小さな声を上げ大地の方を見る。


「誰だか知らないが、いくらなんでもこれはやりすぎだ!」

『守! 俺達、一度こいつに会ってるぞ!』

「うえっ! う、嘘だ! 俺はこんな奴に――!」


 大地の腕に煌くブレスレットに、守も気付いた。それは、以前何処かで見た事がある。それが、どこでなのか思い出す為、記憶をたどる守は、暫し瞼を閉じ眉間にシワを寄せる。「ムムムッ」と、難しそうな声を出す守に、フロードスクウェアが呆れた様に言う。


『お前が助けてやった眼鏡の男がいただろ! 忘れたのか?』

「はは〜ん。そう言えば居たな……。でも、こんな奴じゃなかったぞ?」

『ンな事分かってるさ! だが、あのブレスレットは間違いなくあいつのだ』

「奪われたとか?」

『それは無いだろ。あいつ喋ってるんだから』

「はっ! そ、そうか!」


 驚いた様な声を上げる。呆れた様に『ハハハ……』と、笑うフロードスクウェアはため息をもらした。真剣な表情をする彩は、胸元にチラつくウィンクロードを握った。視線をぶつけ合う彩と大地の二人に、グラットリバーが含み笑いをしながら言う。


『二人して、何をそんなに見詰め合ってるんだ?』

「グラットリバー……。別に見詰め合ってるんじゃない。これは、睨み合ってるんだ」

『睨み合ってるねぇ……。どっちも一緒だろ?』

「意味が違うだろ? 意味が」

『どうでもいいが、そろそろそこを通してほしいのですが? 水島家のお嬢様とその付き人』


 相変わらず、嫌味な口調のグラットリバー。それに対し、フロードスクウェアが反論する。


『人を馬鹿にしやがって! 守! 斬れ!』

「いや……。それ、犯罪なっちゃいますから……」

『でも、こいつらがこの人達を、こんなにしたんだぞ!』

「まぁ、そうだけどさぁ……」


 右手で頭を掻き複雑そうな表情を見せる守は、振り返り彩の方を見る。怖い顔をしている彩に、言葉をかける事も出来ず守は渋々大地の方に顔を向ける。こっちはこっちで、全く守を相手にしていない様子で、彩を睨み返している。そんな二人の間に板ばさみにされている守は、何処か複雑な心境だった。そんな守を他所に、大地と彩が言葉を交わす。


「あんたがどうしてここに居るのよ!」

「何でって……なぁ」

『この町に鬼獣の気配を感じて来た。それだけだ』


 生意気な口調のグラットリバーに、殺意を覚える彩だが、そこは堪え拳を震わせる。それに気付いた大地に、口元に笑みを浮かべ更に言葉を続ける。


「いや〜っ。しかし、こんなにも鬼獣が野放しになってるとはねぇ」

「なっ! ふざけんな! こっちはこっちで忙しいのよ!」

『その割りに、そっちのガーディアンもお嬢様のサポートアームズも、随分と能力値が低いじゃないですか。特に、そっちのガーディアンは最低だね』

『んだと! ふざけんな! 誰が最低だ!』

『お前だ。お・ま・え』


 馬鹿にする様にそう言うグラットリバーに、『ウガアアアッ!』と、声を張り上げフロードスクウェアが暴れだす。フロードスクウェアを握る守の右手は小刻みに奮える。それを必死で抑える守は、「アバレルナ!」と、なぜか片言で叫んでいた。そんな守とフロードスクウェアを見据える大地は、鼻で笑い馬鹿にする様に言い放つ。


「ガーディアンが、サポートアームズもろくに管理できないとは、情けないねぇ」

「フロードスクウェアは物じゃない。管理とか言うな」

「ほ〜っ。言うじゃないか。そうでなきゃな。流石は火のガーディアン」


 笑みを見せそう言う大地。それに対し、守は目を細めて、「今のは馬鹿にされてたのかな?」と呟くと、『当たり前だ』と、フロードスクウェアが答えた。「だよな」と、小さく呟く守は額に青筋を立てる。怒りを滲ませる守に気付いたのか、グラットリバーが言い放つ。


『やめとけよ。喧嘩じゃ大地にゃ勝てねぇ。って言うか、掠りもしねぇよ』

『なら、俺を具現化しろ! 守! 八つ裂きにしてやる!』


 その言葉に守の怒りはスーッと引く。何をムキになっていたんだろう。と、思う守は静かに息を吐き落ち着きを取り戻す。


「あ〜っ。もうやめましょう。サポートアームズを持っていると、言う事は君もガーディアンか、封術師って事でしょ? 仲間内でもめてもねぇ」

「もし、俺がこれを奪ったのだとしたら?」

「それは無いでしょ。サポートアームズは適合者にしか使えないはずだし、それに、あんた悪い人には見えないからさ」


 感心した様な表情を見せる大地だったが、軽く笑みを浮かべると、「人を見た目で判断するのは、よくないぞ」という。大地を睨む彩も「そうよ! あいつは!」と、叫ぶがすぐ守に言葉を止められた。


「それより、ここに居る人たちをそのままにするのは良くない。君には責任を持って彼らの手当てをしてもら……」


 振り返った守だったが、そこには誰もいなかった。唖然とする守に対し、胸元でブラブラと揺れるフロードスクウェアが、『素晴らしい演説だが、あいつならとっくに逃げたぞ』と、告げた。眉間にシワを寄せる守は、微かに瞼を震わせ「フガアアアアッ!」と、大声を轟かせた。

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