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ガーディアン  作者: 閃天
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第十一話 お前は俺のサポートアームズだ! 結成! 最低最弱コンビ

 校舎脇の部室の前。広々としたその場所で、蒼く迸る鬼獣の体が映し出される。

 ここは電灯も無く、暗いため鬼獣の体から放たれる蒼い稲妻が綺麗に煌く。だが、その稲妻は、時折弾けて、部室のガラスを割ったり、近くの木々に直撃して火を舞い上げたりしている。その鬼獣と対峙するのは大きく重量のある剣、フロードスクウェアを両手でしっかり構える守だった。

 流れ吹く風が砂塵を舞い上がらせ、守の前髪を微かに揺らす。恐怖や極度の緊張から、柄を握る手は汗ばみ、額からも汗が流れる。何度と無くこの鬼獣の稲妻を、目の当たりにしているため、中々前に足を踏み込む事の出来ない守は、チラッと、後ろに居る彩の方を見る。その守と目が合う彩は、思い出した様に言う。


「そう言えば、守は鬼獣とまともに戦おう何て思わないでよ!」

「エッ、でも、時間稼ぐんだろう? 戦わないでどうやって時間を稼げと?」

「そこは、自分で考えて」

『待て! 娘! この最強のサポートアームズである俺に戦うなとは、どう言う事だ!』


 怒声を響かせるフロードスクウェアに、迷惑そうな顔をする守。正直、フロードスクウェアの声は大き過ぎる。その為、間近で怒鳴り声を聞く守にとっては、物凄く迷惑だった。そんなフロードスクウェアに反論したのは、やはりウィンクロードだった。やたらと、興奮気味のウィンクロードは、力一杯言い切る。


『黙れ! 何が最強のサポートアームズですか! 私の情報からですと、貴殿のランクはGランク! 最強所か、最弱のサポートアームズなんですよ!』

『な、何を! この俺を馬鹿にするか! 大体、貴様の情報など当てになるものか! あんな鬼獣の気配も読み取れんポンコツが!』


 ウィンクロードの言葉に具現化された体をカタカタ震わせながら、怒鳴り散らすフロードスクウェア。柄を握る守の手に、その振動が伝わり倒れそうになるが、それを必死に堪える。

 一方のウィンクロードも、フロードスクウェアの『ポンコツ』の一言に怒りを露にし、彩の手から離れるかの勢いでフロードスクウェアに言い放つ。


『貴殿の様な、最弱のサポートアームズに、ポンコツを呼ばれる覚えははありません!』

『何だと!』

「まぁまぁ、もう止めよう。喧嘩しても仕方ないし」

『でもな! 守!』


 フロードスクウェアは守に何か言おうとしたが、それを守が制し言葉を続ける。


「フロードスクウェアの気持ちも少しは、分かる。でも、あれはよくないな。理由も聞かずに怒鳴るなんて。水島だって、俺等の事を考えてああ言ってくれたんだし」

『だが、俺は最強の――』

「いや。今は違う。お前は最強のじゃなくて、俺のサポートアームズだ。火野 守の――」


 守はそう言い白い歯を見せ微笑む。その顔が、一瞬フロードスクウェアにはガーディアンマスターの顔に見えた。そして、守の言った『俺のサポートアームズだ』と、言葉が心に響く。以前にも聞いた事のある言葉に胸が高まるのを感じるフロードスクウェアは、頭の中が真っ白になる。その時、地を駆ける音が響く。

 フロードスクウェアに言葉を投げかけていた守は、鬼獣と対峙している事を思い出し視線を前に向けるが、そこに鬼獣の姿はない。両手でフロードスクウェアをしっかり握ったまま、守は辺りを見回す。


「水島。悪い。鬼獣見失っちゃった」

「見失ったじゃない! 上よ! 上!」

「へっ?」


 彩の声で守は顔を上に上げる。すると、漆黒の空に浮んだ丸い月の真ん中で青光りする鬼獣の体がはっきりと確認できた。この瞬間、守の脳裏にとても嫌な考えが過ぎる。そう、あの鬼獣がこのまま急降下したらどうしようかと。防ぐには、フロードスクウェアを上段に構えなければならない。だが、フロードスクウェアは重量で、今の守には相当荷が重かった。


「くっそ〜っ! 重たいぞ〜!」


 そう叫びながら、力を振り絞りフロードスクウェアを振り上げる守。頭上に掲げられる柄を握る両手。フロードスクウェアの刃は、守の背中を見据え剣先は地面を見据える。その光景は、上段構えと言うよりも、完全に振り上げただけの状態。もしフロードスクウェアを振るタイミングがズレれば、守は稲妻を体で受け止める事になる。そうなれば、確実に死を意味する。


「フロードスクウェア。死んだらごめん」

『何を、縁起の悪い事を。大体、折角お前のサポートアームズになったのに、お前に死なれちゃ困る』

「そうですな。それじゃあ、いっちょ見せてやりますか! 戦闘初心者のガーディアンと力を失った最弱のサポートアームズの最低最弱コンビの意地を」

『最低最弱か。まぁ、それもいいだろう』


 守が笑みを浮かべる。と、同時に稲光が辺りを青白く包み込み、鬼獣が勢いよく守目掛けて急降下する。歯を食い縛る守は力一杯フロードスクウェアを振り下ろす。振り下ろされたフロードスクウェアの鋭き刃が、急降下してくる鬼獣に一直線に向っていく。だが、鬼獣の体に刃が触れる事は無く、鬼獣を取り巻く稲妻に刃が弾かれ守の体ごと吹き飛ばされた。地面に鬼獣の爪が鋭く突き刺さり轟音を轟かす。これらの事は、ほんの一瞬の出来事で、彩には何が起こったのか分からなかった。

 ただ、稲妻が守に向って落ち、それに向って守がフロードスクウェアを振り下ろす。そこまで、目で追えたがその直後、轟音が響き地面が砕け散り辺りを土煙が包み込んだ。砕けた地面の破片が、彩の足元まで飛んで着ており、彩はニ・三後退り叫ぶ。


「エッ……。そんな……。ま、守が……守が……」

『お、落ち着いてください! まだ、守殿が死んだとは――!』


 土煙が風で消し飛び、そこには砕けた地面と堂々と四本の足で立ち尽くす鬼獣の姿だった。黒く焦げた地面から、黒煙が薄ら上り守の姿は確認できない。衝撃の光景に、思わず、ウィンクロードを落として、両手で鼻と口を覆う彩。薄ら涙が滲む彩は大きな声で叫ぶ。


「マモルーッ!」


 その叫び声に、何処からか「何、叫んでるんですか?」と、のん気な守の声が聞えた。我が耳を疑う彩は、涙を拭うと辺りを軽く見回す。すると、地面を何かが抉った様な跡があり、それは、鬼獣の今居る場所から真っ直ぐ続いている。もしや、思う彩はその跡の先に目をやる。すると、暗くて見えなかったが、大木の根元の方に微かに人の影が見える。立ち上がりこちらに向ってくる影は、やはり守で衣服が少しこげていた。


「はひ〜っ。死ぬかと思った。マジで」

「コッチは、死んじゃったかと思って、泣いちゃったじゃない!」

「いや〜っ。意外に死なないもんですな。アハハハハハッ!」


 大笑いする守と、守が生きていた事に安心して笑みを零す彩。完全に、鬼獣の事など忘れている様だった。そんな二人の姿に鬼獣は怒りを覚えたのか、体を取り巻く雷撃をぶつけ合うと、アチコチに雷撃と飛ばす。流石にこれでは笑っているわけにも行かず、彩はウィンクロードを手に取り叫ぶ。


「すっかり、忘れてた。それじゃあ、守。もう一度時間稼いで、封印準備するから!」

「ふへ〜っ。またですか……。って、言うか水島さんは、今まで何してたんですか?」

「う・る・さ・い〜っ! いいから、時間稼ぎしなさい!」


 彩の声に思わず「はい!」と、返事をしてしまった守は、足早に鬼獣の前に立ちフロードスクウェアを構える。なぜ、ああも守が女に弱いのかフロードスクウェアは気になった。これも、女には優しくと言う守の信念なのだろうと、自分で答えを出したフロードスクウェアは守に言う。


『さて、もう一度最低最弱コンビの意地を見せるか』

「そうですね〜っ。でも、あれ、物凄く怒ってません?」

『ンッ?』


 守に言われ、フロードスクウェアも鬼獣を確認する。歯を力強く噛み締め、牙をむき出しにしながら放電する鬼獣の姿に、微かに半笑いするフロードスクウェアは『悪い。今回、お前死ぬかもな』と、小声で呟く。守には聞き取れず、「へっ? 何? 何?」と、フロードスクウェアに何度も聞き返したが、フロードスクウェアは何も言わない。それが、更に守の心に恐怖を生んだ。

 どうも。一週間ぶり登場の崎浜秀です。今回のガーディアンは如何だったでしょう? 楽しんでもらえているのなら、光栄です。それでは、早速次回予告に……。


【次回予告】

 鬼獣にもう一度立ち向かう最低最弱コンビ。守とフロードスクウェア。

 悪戦苦闘の中、遂に鬼獣を封印しようとする。だが、その最中に気付く。鬼獣の体の異変に。

 次回『鬼獣封印 残された罪悪感(仮)』を、お届けしたいと思います。


 すんません。こんな変な次回予告。必要ないんじゃないかって思ったら、メッセージください。そしたら、止めようと思ってるんで……。

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