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約束

作者: ワイニスト

 本当に大事なものがあるなら、その手にギュッと掴むことだ。

 それは水のようで。そして砂漠の砂のようだから。

 かけがえのないものはとても重いものだから、

 一番最初に手のひらからこぼれ落ちてしまう。

 それは水のようで。そして砂漠の砂のようだから。


 僕はもう、一度失ってしまった存在だから、

 君のためにできることはこの一言を伝えるだけ。


 それは水のようで、砂漠の砂のようで。

 一番大切なものは、握り締めたと思ったら指の隙間から落ちてゆくのだ、と。

 失ってからでは取り戻せないものはたくさんあるから。

 気がついてからでは、もう手遅れなことが溢れているから。


 それは夢や、希望や、愛や、思いのような形のないモノばかりなんだ。


 ねぇ、後ろを振り向くことに意味なんかないよ。

 それは暗い闇のようで。見たことのない世界の裏側のようだから。

 その足はなにより重たいはずだ。

 だってまず君自身が、望んでいないものじゃないか。

 それは暗い闇のようで。見たことのない世界の裏側のようだから。


 僕はもう一度、絶望を味わった存在だから、

 君のためにできるのは悪い見本をみせることだけ。


 それは暗い闇よりも、世界の裏側を思い描くよりも。

 君がすべき大事なことは、君自身が一番知っているべきだし、

 本当はもう、君のなかにはちゃんとあるんだろう?

 失ってからでは取り戻せないものはたくさんあるから。

 気がついてからでは、もう手遅れなことが溢れているから。


 言いたいことはわかるよ。でも、君は大丈夫。気づいていないのは僕ばかりなんだ。


 約束して欲しい。

 僕は明日、君の前から消えてなくなるけれど、

 それでも君はちゃんとやれるよ。

 だから約束して欲しい。

 泣いたりしないで欲しいんだ。


 本当に大事なものがあるなら、その手にギュッと掴むことだ。

 それは水のようで。そして砂漠の砂のようだから。

 かけがえのないものはとても重いものだから、

 一番最初に手のひらからこぼれ落ちてしまう。

 それは水のようで。そして砂漠の砂のようだから。


 ああ、それが僕であったら――



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― 新着の感想 ―
[良い点]  胸がキュンとなります……。 ともに歩めない未来を託す切なさが、心に迫ります。 『気がついてからでは、もう手遅れなことが溢れているから。』 本当にそうですね。 『僕』は、『君』の背中…
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