表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/27

第23話 桃子ちゃんパワー

 れいんどろっぷすに着くまでの道のりは、うきうきわくわくで、スキップしそうになる衝動を必死で抑えていた。

 俺ははっきり言って、何を話していたかも覚えていない。きっととりとめのないことをべらべらと話していたと思う。桃子ちゃんは、相槌を打ったり、笑ったりしていた。それだけでも、ものすごく嬉しかった。


 れいんどろっぷすのドアを開けると、母さんが元気よく桃子ちゃんを出迎えた。

「桃子ちゃん、いらっしゃい。風邪もう、大丈夫?」

「はい。もうすっかり」

「そう良かった。聖、ずっと桃子ちゃんに会えなくて、しょげてたから」

「母さん!何言ってんだよ」


「あら、駄目だった?ばらしちゃ」

「…う。まあ、そうなんだけどさ」

 なんだよ。母さんにもそういうの、ばればれだったのか。


 俺は桃子ちゃんの手を取って、2階に上がった。

「ヒーターつけるね」

 俺は先に入り、ヒーターをつけた。

 桃子ちゃんは、部屋に入り、上着を脱いだ。それから、注意深く歩きながらベッドに座った。


 あ、そっか。床にいろんなもの散らばってた。

「ごめん、散らかってて」

 慌てて、床にある参考書やら問題集を、どかした。

「聖君、勉強で疲れてるんじゃないかと思ってたけど、すごく元気そうだね」

 桃子ちゃんがそう言ってきた。


「だから、桃子ちゃんに会えてるから元気なんだって」

 そう言って、俺は桃子ちゃんの横に座り、

「今日、会えることだけを励みに、頑張ってたよ、俺」

と正直に言った。そして、桃子ちゃんにキスをして、ぎゅうって抱きしめた。

「ああ、桃子ちゃんだ~~~」

 う、嬉しすぎる!桃子ちゃんの匂い、ぬくもり、全部が嬉しい。


「すげ、会いたかった」

 そう言って、もう一回抱きしめると、桃子ちゃんも俺を抱きしめてくれた。ぎゅ!その腕の力がめっちゃ嬉しい。

「桃子ちゃん、今日…いい?」

 思わず、俺は甘えてそんなことを聞いた。


「え?でででも、下にお母さんいるよ」

「店にいるから、聞こえないし大丈夫」

「お、お父さんは?」

「今日出かけてる」

「杏樹ちゃんは?」

「部活」


「クロは?」

 クロ?クロのことまで、気にするの?

「店すいてるし、店にいるよ」

「……」

「駄目なの?駄目ならいいんだ。こうしてるだけでも」

「……」 

 桃子ちゃんは黙っている。


 ぎゅう。桃子ちゃんの俺を抱きしめる腕に、力が入った。

「聖君」

「え?」

「いいよ」

「え?」

「大丈夫…」

「ほんと?」

「うん」


 俺は、めちゃくちゃ嬉しくなって、すぐに押し倒してしまった。

 どれだけ、我慢してたかな。桃子ちゃんを抱きしめること。桃子ちゃんのぬくもりも、キスも。

 キスをすると桃子ちゃんは、俺を色っぽい目で見つめてきた。ああ、この目。ずっと夢の中で、見ていたよ。


 桃子ちゃんの服を脱がして、キスをして、抱きしめて、その頃ようやく気づいた。やけに、今日は桃子ちゃんがはっきりと見えることに。あ、電気つけっぱなし。

 だけど、桃子ちゃんも気にする様子もないし、そのままにしておいた。


 体の線、前よりも女らしくなった。桃子ちゃんはどんどん、どんどん大人に成長してるんだな。

 胸は真っ白だ。だけど、ほんのり赤くなってるのがわかる。

 今までは、すげえ可愛いだった。でも今日は、すげえ綺麗だ。


 こんなに綺麗だったかな。こんなに桃子ちゃんは女らしかったっけ?やべえ。毎回、毎回、桃子ちゃんは違う顔を見せてくる。そのたびに俺、惚れちゃってるんじゃないの?


 桃子ちゃんはぼ~って宙を見ている。目線を追ってみると、俺の部屋に貼ってあるイルカや海の写真を見ているようだ。そういえば、最近、写真が増えたんだっけ。癒されたくて海の写真を、貼ったりしたんだ。


 俺は桃子ちゃんにキスをして、桃子ちゃんの胸に顔をうずめた。すげえあったかいし、いい匂いがする。ああ、桃子ちゃんだ。

「もう少し、こうしてていい?」

 俺が聞くと、

「うん」

って、桃子ちゃんは静かにうなづいた。

「なんか落ち着く」

「え?」

「心臓の音や、桃子ちゃんのぬくもり、落ち着く」

「そう?」


 桃子ちゃんが俺の髪をなでてきた。されるがままにしていたけど、だんだんとくすぐったくなってきた。

「桃子ちゃん、くすぐったいよ」

 俺は体を起こして、腕枕をした。


「髪、伸びたね」

「俺?」

「うん」

「そういえば、しばらく切ってないもんな~~」

「サラサラだよね」

「俺?」


「うん、羨ましいな」

「桃子ちゃんの癖毛だって、可愛いよ。俺、好きだよ」

「ありがと…」

 桃子ちゃんの髪を、指に絡めてみると、くるくると巻きついてくる感じがした。面白いな、これ。


「……、海の写真増えたね」

「さっき、見てた?」

「うん」

 やっぱりそうか。

「海にいる気分になると、落ち着くから。本当は、この部屋、真っ青に塗りたいくらい」

「え?」


「今、カーテンモスグリーンだけど、濃いブルーでもいいな」

「海の中にいるみたいで?」

「うん。モスグリーンは、母さんの趣味なんだ。中学の時、このカーテンにして、そのまま変えてないから」

「それまでは?」

「空のブルーに白の雲の模様のカーテンだったよ」

「へえ。それもいいね」


 そう言うと、桃子ちゃんは俺の顔をじっと見つめてきた。その目がまた、色っぽくてドキドキする。

「あ!!」

「え?!」

 突然、桃子ちゃんが声をあげた。


「何?」

「で…」

「で?」

「電気…」

「ああ。つけっぱなしだったね。忘れてた、消すの」

 そう言うと、桃子ちゃんは顔を真っ赤にさせた。


「今、そんなに真っ赤になっても、遅いって、桃子ちゃん。それに、もういいじゃん?」

「い、いいって?」

「そんなに恥ずかしがらなくても」

「は、恥ずかしいよ~~。まだまだ、恥ずかしいもん」

 桃子ちゃんはそう言うと、そそくさと布団にもぐりこんだ。


「あ、俺も入れてよ」

 俺も布団にもぐりこんだ。

「桃子ちゃん、でもさ」

「え?」

「いや、いい。やっぱり」

 こんなこと言ってもな…。


「何?」

「いいって」

「気になる」

 う~~ん、言っちゃおうかな。じゃあ…。


「あのさ。恥ずかしがってるけど、でもいつも、その」

「え?」

「無抵抗になっちゃうでしょ?」

「え?う、うん」

「そんときは、けっこう大丈夫みたいだよ」


「何が?」

 何がって…。

「裸、見られてても」

「え?!!!」

「なんか、いっつも色っぽい目で、俺のこと見てるだけだし」

「え?え?え?」


「だから、全然見られても平気なんだなって思って、今日、電気消さなかったけど」

「平気じゃない!」

「そうかな~」

「全然平気じゃない!」

「でも、さっきまで電気がついてることにも、気づかなかったんでしょ?」

「う…」

 桃子ちゃんは言葉に詰まっていた。


「桃子ちゃんって、色白いからかな」

「え?」

「ほくろ、けっこうあるよね」

 そう言うと、さらに桃子ちゃんは真っ赤になった。そしてぐるっと後ろを向いてしまった。


 っていうリアクションをとるだろうなって思って、わざとこんなことを言う俺ってどうよ。なんて思いながらも、俺は後ろから桃子ちゃんに抱きついた。

「もう少し、こうやっていようね」

 そう言って、桃子ちゃんの肩にキスをしたり、髪にキスをした。

「ああ~~。桃子ちゃんだ」


 めっちゃ嬉しい!

「わ~~。やっと、抱きしめられた」 

「え?」

「ずっと、夢でしか抱けなかったから」

「夢?そんな夢見てた?」

「見てた。毎日、見てた」


 俺はまた、桃子ちゃんを抱きしめた。

「あとちょっとで、受験も終わるけど、どうにか、頑張れそうだ」

「え?」

「桃子ちゃんから、パワーもらえたから」

「ほんと?」

「うん!」

 やっぱり、桃子ちゃんパワーは偉大だよ。まじで俺はそう感じていた。




 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ