第12話 めっちゃ幸せ
本能が勝った。でも、心の奥底で理性が、かぼそい声で言ってる。
「いいのか?」
「桃子ちゃんを傷つけないのか?」
「早過ぎないのか?」
「桃子ちゃんを泣かせないのか?」
そんな言葉を全部、否定する。
「いいんだ」
「いいんだ」
「いいんだ」
何回も頭の中で、そう言ってる俺。
ほとんど無意識にキスをして、抱きしめて、首筋にまでキスをして、桃子ちゃんが俺の髪を優しくなでてきて、我に返った。
え?
それに俺を優しく、抱きしめている。
目を見ると、色っぽいんだけど、優しい目だ。俺のことをじっと見て、髪をなでる。
うわ!!!
桃子ちゃん、全然、抵抗してないんだ。それに体も全然、硬直してない。
桃子ちゃんは、覚悟を決めたの?もしかして、観念しちゃったの?俺のものになるって…。それで、俺に全部を預けてるの?任せてるの?
桃子ちゃんの目は、熱いし、優しい。
桃子ちゃんにキスをした。俺の背中に回してた、桃子ちゃんの手がだんだんと力が抜けていって、とうとうすとんと、ベッドに滑り落ちた。
桃子ちゃんの体、全部、力抜けてる。思い切り、俺に任せてるのがわかる。
桃子ちゃんの鼓動が伝わる。ドキ、ドキ…。その鼓動に俺の鼓動まで早くなる。
桃子ちゃん、そういえば、貧弱な体で恥ずかしいって言ってたっけ。どこが?全然だ。すごい女らしいよ。
色がめちゃ白い。その白さにドキドキする。白いからか、ほくろが際立つ。
それに、柔らかい。女の子ってこんなに柔らかいの?おや?杏樹はそんなことないぞ。あいつの場合は骨太だから?それか筋肉か?
肩の線も細い。腕も細い。指も細い。それに足も、足首まで細い。
……。ああ、やばい。
桃子ちゃんの全部が、めちゃくちゃ可愛いじゃん!!!!!
桃子ちゃん…、もう、俺のものなんだ…。
なんか、胸の奥で、すんごく喜んでる俺がいる。やった~~って、世界中に叫びたいんだけど、これまた、理性がそれを抑えてる。
桃子ちゃんに腕枕をして、桃子ちゃんの髪をなで、顔をじっと見た。
桃子ちゃんも、俺をまた、色っぽい目で見つめ返してくる。
俺、今、すげえ満たされてる。嬉しくて幸せで、胸がいっぱいだ。
そんな気持ちで桃子ちゃんを見ていると、桃子ちゃんは俺を見つめながら、ぼ~~ってしていた。
あ、今、絶対意識どっかに飛んでる。
「大丈夫?」
「え?」
「なんか、意識どっかに行ってない?」
「うん、行ってるかも」
「まじで?大丈夫?」
「大丈夫じゃない」
え?大丈夫じゃないって、どういうこと?
「聖君が、好き」
わ。いきなり、そんなこと言う?意識どっかに行って、大変だったんじゃないの?
「聖君が、大好き」
「うん」
わ~~。俺、顔真っ赤だ、きっと。
「どうしよう」
え?何が?何がどうしようなの?
「聖君のことが、大好きすぎて、どうしよう」
「へ?」
大好きすぎ…?
「聖君、かっこよすぎる」
桃子ちゃんは俺に、抱きついて、そう言ってきた。わ~~~~!
「桃子ちゃん、何それ?わけわかんないんだけど」
なんなんだ。かっこよすぎるってのは。
「いいの、わかんなくても」
桃子ちゃんはまだ、俺の胸に顔をうずめていて、ぎゅって抱きついていた。
桃子ちゃんから、こういうことをしてくるのってあまりないから、今、俺かなり、照れくさい。
「うん、また俺に惚れちゃったってのは、なんとなくわかった」
そんなことを、照れ隠しで言ってみた。
「でも、それなら俺も…」
桃子ちゃんの髪をなで、それから、頬に手をあて、顔をあげてキスをした。
ああ、やばいな、俺。今までみたいなそっとするキスなんかできない。キスをしただけで、桃子ちゃんが愛しくって、嬉しくって、なかなかキスをやめられない。
でも、桃子ちゃんもまったく、抵抗しない。
「桃子ちゃん、もう俺のものなんだ」
抵抗せずにいる桃子ちゃんも、俺のことぎゅって抱きしめてくる桃子ちゃんも、それを実感させてくれて、俺はめっちゃ幸せを感じてる。
「俺、まじで嬉しい」
そう言って、俺は桃子ちゃんを抱きしめた。
桃子ちゃんは、甘い香りがする。
あったかくって、柔らかくって、俺はものすごく優しい気持ちに包まれる。
「大好きだよ」
桃子ちゃんの耳にキスをして、そうささやいた。
桃子ちゃんは、くすぐったそうに、体をよじっていた。あ、そっか。耳、弱いんだっけ。
桃子ちゃんの全部が可愛くて、全部が愛しい。大好きだよなんて言葉では、それが言い表せない。
ずっとこのまま、抱き合っていたいな。桃子ちゃんのぬくもりを感じながら。
でも、そういうわけにはいかないんだ。
俺は、時計を気にして、それから、桃子ちゃんにお母さんやお父さんが帰ってこないかを聞いてみた。帰って来て、この状況だったら、めっちゃやばいもんな。
でも、お母さんとひまわりちゃんは、おばあちゃんちに行っていて、帰ってくるのは10時になるだろうと言い、お父さんは12時頃だと言う。
俺はほっとした。まだ、桃子ちゃんとこうして、抱き合っていられる。
俺は自分でも驚いていた。
何がって、桃子ちゃんにめちゃくちゃ、癒されてることだ。
さっきから、胸があったかくって、ほっとしていて、満たされてて、こんな幸せを感じたことはないってくらいだ。
桃子ちゃんのぬくもりをこうやって、じかに肌で感じるだけで、ものすごい安心感がある。
時間も何もかもが、ゆるゆるとしていて、今までとはまったく違う次元にいるみたいだ。
俺と桃子ちゃんの周りだけ、甘い、ゆるゆるな時が流れているんじゃなかろうか。
フワ…。時々、桃子ちゃんが俺の胸に、顔を押し付けてくる。それがめちゃ、くすぐったい。
桃子ちゃんに腕枕をしたまま、話をした。話をしてる間も、時々顔に胸をうずめてくる。
それから、時々俺を上目遣いで見る。その目がめちゃ、可愛い。
話しながらそっと、桃子ちゃんの鼻筋を指でなぞった。それからほっぺたも、あごも。桃子ちゃんはされるがままになっていた。
唇にも触れてみた。桃子ちゃんは、話をやめて、黙り込んだ。それからじっと、俺の顔を見つめてくる。
「こうやって、時々桃子ちゃんを抱いてもいい?」
俺がそう聞くと、桃子ちゃんはいいよって言ってくれた。
それから、また俺の胸に顔をうずめる。恥ずかしくて顔を隠してるのかな?
「なんで?」
「え?」
顔をうずめながら、桃子ちゃんが聞いてきた。
「さっきから、時々そうやって、俺の胸に顔をうずめてる。どうして?」
「だって、聖君の鼓動が聞こえるし、あったかいし、幸せなんだもん」
ああ。そっか。幸せを満喫してたのか!
「桃子ちゃん。俺も、すげえ幸せ」
桃子ちゃんをぎゅって抱きしめた。力いっぱい抱きしめた。
でも、桃子ちゃんが苦しくなるかもって、力をゆるめて、
「ごめん、苦しかった?」
と聞いてみた。そうしたら、桃子ちゃんは胸に顔をうずめたまま、
「ううん。すごく幸せだった」
と、ささやいた。
ああ!俺、天に昇ってるね、今。確実に天国にいるよ!!!