第1話 またピンチ!
永遠のラブストーリー 恋人編の途中ではありますが、こちらの作品を書き出しちゃいました。
ちょっと本編はブレイク。
ブレイクタイムのつもりで、番外編を軽く読んでくださいませ。
なんだ、聖君の方はこんなだったのね~~、てな感じで。
久しぶり。ほんと、久しぶり。俺の窮地に陥ったストーリーから、けっこう日にちがたった。
その後、また、なんだか今、俺、ピンチだ。
好きな子が実は妹で、父さんが実は血がつながってなかったという事実を知り、ピンチに陥ってから早1年が過ぎた。
あれからどうなったかっていうと、菜摘とは、すっかり仲のいい兄妹でいるし、菜摘は俺の親友の葉一と付き合ってる。
基樹は蘭ちゃんと別れちまった。それからはずっと、一人身。本人は受験生だし、恋はおあずけで、大学行ったら彼女を作るんだと、張り切ってるような、寂しいような、そんな毎日を送っている。
だけど、俺は知ってる。あいつは実は、蘭ちゃんのことをまだ、ひきずってる。
でも蘭ちゃんは、もう彼氏がいる。
女の子の方が、切り替えが早いんだろうか。
かもしれない。
俺なんてふられたら、やばいだろうな。もしかすると一生、ひきずってるかもしれない。うじうじいじいじと。
なにせ、それだけ惚れちゃってる。自分でもやばいって思う。最近特にだ。
俺は受験生だ。でも、勉強もまじで手につかない。
なぜって?彼女を失うのが怖いからだ。
ああ、情けない。情けなさ過ぎる。
ずっと俺、その彼女に、俺のこと信じてとか、もっと彼女なんだって自覚してとか言ってたんだ。なのに今は、自分の方が自信をなくしてるし、失うのが怖くて、どうにもならない状態に居る。
それだけ、好きになりすぎてるのかな、俺。
はじめはさ、キスしても驚かれたり、固まっちゃったり、抱きしめても、手で押されたり、はねのけられたりするのも、みんな、緊張してるからとか、恥ずかしいからなんだろうなって思ってたんだ。でもそれが、付き合って、1年にもなってまだそうだと、さすがに俺もだんだんと、自信がなくなってくるよ。
葉一に聞いてみた。菜摘はどうかって。そうしたら、菜摘は菜摘で、葉一のこと怖がってるみたいで、進展もしないし、そうそうキスもできないんだって、やっぱりあいつはあいつなりに、悩んでるみたいだった。
本人に聞いてみたらとも言われた。だけど、聞けない。聞いたところで言うんだろうか?俺のことが嫌なんだとか、そういうこと。
それとも、俺が怖いんだろうか。
だけど、前に「怖くない」って言ってた。夏に俺の部屋に来た時、思わず胸を触っちゃって、その時思い切り駄目って言われて。
理由は、胸が小さいのがばれたくないからってことだった。
その時には、そんな理由?それで嫌がるなんて可愛いな、なんて思ったんだ。
だけど、それもだんだんと日がたつにつれ、本当にそれが本当の理由だったの?って疑問すら湧いてくる。
勉強が手につかない。
今すぐに会いたいって思ってる。
それは、俺だけ?
声だって聞きたい。でも、電話もなかな向こうからかけてこない。
俺の勉強を邪魔したくないって配慮からだろうけど、ほんとにそれだけ?
会いたいって言ったらどうするかな。
今すぐにでも会いたいって言ったら…。
そんなことを思っていたからか、とんでもない夢を見た。彼女が俺から去っていく夢だ。誰だか知らないやつと腕を組んで、歩いていった。
嘘だろ。なんで他のやつと腕組んでるんだよ。それになんで俺から、去っていくんだよ。
去っていってから、後悔した。もっとしっかりとそばにいたら良かったとか、俺のものにしておけば良かったとか。
夢の中で俺は泣いていた。
ものすごい悲しみだった。果てしなく底もないような穴が、心の中に開き、どうしようもない虚無感と、苦しみと、絶望に俺は覆われていた。
何もする気が起きない。ただただ、俺は俺を責め、後悔ばかりしている。取り返しのつかないことをしてしまったと、暗く、重たい気持ちで夢の中で泣いていた。
はっと目が覚めた。まじで、夢で良かったって、ものすごいため息が出た。すぐに彼女にメールをした。なんでメールしたんだろうか。とにかくこれは夢であって、現実では彼女は俺のそばにいてくれてるはずだと、それを確認したかったのかもしれない。
>桃子ちゃんが離れていく夢見た。
すぐに返信が来た。あ、返信が来たってことは、やっぱり遠くに行ってしまったのは、夢での出来事だ。
桃子ちゃんは、俺がそんな夢を見て、夢の中で泣いてたってことを冗談で言ってるのかと思ったらしい。
だけど、俺が変だってことは察したみたいだ。何かあったの?ってメールが来た。
ある。大有りだ。今、俺、かなり変だ。だけど、つい、大丈夫ってメールを送っちまった。
塾に行き、昼休み、昼飯を食っても、味がなんだかわからない。
>今、昼ごはん食べて、そのあとちょっとのんびりしてる。
なんてことのないメールを、桃子ちゃんに送った。なんでもいい。返事がほしい。
>私は、おばあちゃんちに来てるよ。
そうなんだ。今、おばあちゃんの家にいるのか。ああ、どうせなら、ここまで来てほしいくらいだ。
>そうなんだ。いいな。
そうメールをしてからまたすぐに、
>俺も会いたいな、桃子ちゃんに。
とメールを送った。
ああ、やばい。一回そんなことを書いたら、止まらなくなった。
>すげ~~会いたい。今すぐに会いたい。
そして、帰りに桃子ちゃんの家に寄ることにした。
桃子ちゃんはすぐに、いいよとか、会いたいってメールをくれなかった。塾の帰りで疲れてないかって、気を使ってくれてたけど、もしかして、会いたいとは思わないのかななんて、そんな疑問がまた湧いてくる。
やばい。暗い。暗すぎる。俺、こんなに暗いやつだっけ?
もっと楽天的だったよな。あ、そっか。そうだ。一回悩みだすと、止まらなくなるんだよな。
どうにも気になってしまって、そればっかり考えてしまうから、勉強が手につかないんだ。
桃子ちゃんの家に着いた。
お母さんが玄関のドアを開け、俺を通してくれた。
「桃子なら、自分の部屋よ。今、幹男君といる」
幹男と?幹男ってのは、桃子ちゃんの従兄弟だ。前に会ったことがあるけど、ちょっと俺に対して、いい印象を持っていなかったようで、そういうのがひしひしと伝わってきたっけ。
でも、なんだかしんないけど、そのあと俺、気に入られたらしい。
その幹男が、桃子ちゃんの部屋にいるの?
なんで、部屋?二人きりってこと?やばい。変なことばっかり、頭の中で考えてる。もしかして、幹男が来るから、俺に来てほしくなかった?
もしかして、桃子ちゃんの気持ちは幹男に傾いてる?
そんなわけがないと否定しながら、気持ちを必死で保ちながら、2階に上がった。桃子ちゃんの部屋はドアが開いていた。話し声が聞こえるけど、ぼそぼそと言っていて、内容はわからない。
そっと中を覗いた。ドアが開いてるんだから、覗いたっていいってことだよな。
っていうか、俺、桃子ちゃんの彼氏だよ。そんな気を使う必要ないだろ?二人の間に何かあるわけもないんだし。
いや、何もあってほしくない。そんな願いまで出てくる。
「?!!!」
部屋の中を見た。そして目に入ってきた光景は、ベッドの上で、座ったまま、抱きあってる二人の姿だった。
まじかよ。
なんだよ、これ?!!!!