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孤狼
己の手の平から鮮明な赤が零れ落ちた。腕の中には愛したはずの女が転がっていた。
「うあああああああ!」まただ。まただ。やはり僕には人を愛することなんてできないのだ。咽び泣きながら血肉を啜る。美味い、美味い、美味い。妖艶な香りが脳をおかしくさせる。僕は気づいていた。自らの顔も赤く染っている事を。そうだ。興奮が止まらないのだ。咀嚼する度に快感を味わい、身体に刻み込む。気がついたらそれはとうとう心臓だけになっていた。それを壊れないように優しく持ち上げ、つるん、と喉に通す。
「ああ、ごめんな、本当に好きだったんだ。」そこに居たはずの彼女に話しかける。
「でも、一緒になれて嬉しいよね。」口角が自然と上がる。ふふ、あはは。口から笑いが止まらない。満月に爪を伸ばし掴み取る。
「僕は、狼男だ。」その瞳から液体が零れ落ちることを知らずに呟いた。
「愛してる。」




