表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season6 ― 氷の輪郭 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜Season6 ― 氷の輪郭 ―
9/14

第9章 朝の余韻 ― 涙のグラス ―

朝は、昨日の涙を責めない。

夜明けの光が、静かにガラス越しに差し込んでいた。

オフィスの空気はまだ冷たく、

コーヒーの香りだけが、そこにぬくもりを運んでくる。


青葉澪あおばみおは、昨夜の雨の名残を感じながら、

ゆっくりとモニターを立ち上げた。

まぶたが少しだけ重い。

鏡を見れば、泣いたあとの名残がうっすらと残っている。


――でも、もう隠さなくてもいい。

そう思える朝だった。


「おはようございます。」

静かな声に顔を上げると、不破ふわがコーヒーを二つ手にして立っていた。


「眠れませんでしたか?」

「……ええ、少しね。」


みおの前に置かれたカップから、薄く湯気が立ちのぼる。

その表面に、淡い光が反射して揺れた。

まるで、昨夜の涙がまだそこに浮かんでいるみたいだった。


不破は何も言わず、ただその揺れを見つめていた。

そして、静かに微笑む。


「……いい朝ですね。」

「そうね。昨日よりは、少しだけ。」


ほんの一瞬、澪の頬がゆるんだ。

それは強がりでも演技でもない、

誰かに見せてもいい“本当の顔”だった。


オフィスの窓の外では、

夜の雨を吸い込んだ街が、光を返すように輝いていた。

昨日までの涙の跡が、

いまは“生きている証”のようにきらめいていた。

涙の余韻は、

未来へ進むための静かな力になる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ