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ループ構造の破壊と脱出、そして……

 ライカの爆発が、精神世界のループ構造を破壊した。王の漆黒の瘴気が、瞬く間に薄れていく。リンの視界が、これまで見たことのない光に包まれた。それは、白く、温かい光。耳には、遠くで、子供たちの遊ぶ声が、現実のものとして聞こえてくる。鼻腔をくすぐるのは、消毒液の匂いと、微かな埃の匂い。

 リンは、病室のベッドの上で、ゆっくりと目を開いた。そこには、見慣れた天井、白いシーツ、そして窓から差し込む、柔らかい陽光。 「……私……戻って……来た……?」 リンの目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。それは、無限のループから解放された、安堵の涙だった。

 その時、リンの心の中に、優しい声が響いた。 「リン……無事で……よかった……」 それは、99の人格たちの、統合された声だった。

 しかし、その声の中に、微かな違和感があった。何か、大切なものが、欠けているような感覚。リンは、心の中で、全ての人格たちに語りかけた。 「みんな……ありがとう……本当に……」

 その瞬間、リンの脳裏に、ある人格の姿が浮かんだ。No.05セツナ。しかし、その姿は、まるで霧のように曖昧で、輪郭がぼやけている。彼女の声も、遠く、か細い。 「リン……私……なんだか……眠い……」

「セツナ!? どうしたの!?」 リンは、心の中で叫んだ。彼女の記憶の中のセツナは、いつも冷静で、理論的だった。しかし、今のセツナは、まるで意識が薄れていくかのように、曖昧だった。

「ごめんね……リン……私……少し……休む……」 セツナの声が、さらに遠ざかっていく。そして、彼女の存在は、リンの意識の中から、完全に消え去った。

「セツナ……セツナ!!!」 リンは、心の中で、必死に呼びかけた。しかし、セツナからの返事は、二度と戻らなかった。ループは破壊された。しかし、その代償として、大切な人格の一人、セツナの記憶が、リンの中から失われたのだ。それは、リンの心に、深い喪失感を刻みつけた。久留米の空が、いつの間にか曇り空に変わっていた。

 王の宣言

 その時、リンの意識の奥底に、再び、王の威圧的な声が響き渡った。 「ほう……ループを……破壊したか……見事である……」 王の声は、これまでになく、明確な響きを持っていた。そこには、怒りや憎しみだけでなく、微かな「愉悦」すら感じられた。

「王……! あなたは……何を……」 リンは、心の中で、王に問いかけた。

「……愚か者め……その程度の遊びで……我を……止められると……思ったか……」 王の声が、精神世界全体に響き渡った。その声は、リンの心を直接揺さぶる。

「次に……我は……貴様の……全ての……人格を……一斉に……喰らい尽くしてくれよう……!」 王の宣言は、リンの心に、凍てつくような恐怖を突きつけた。それは、宣戦布告だった。次の戦いは、これまでのような個別の人格との対峙ではない。王は、リンの中に統合された全ての人格を、一度に、完全に喰らい尽くすつもりなのだ。

「そんな……!」 リンは、絶望に打ちひしがれた。ループは終わった。しかし、本当の戦いは、これから始まるのだ。王の真の目的。そして、失われたセツナの記憶。全てが、これから始まる物語の伏線として、リンの心に重くのしかかった。久留米の空から、冷たい雨が降り始めた。



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