0日目 無職の決意
初めまして翔太です。 浪人生活の気晴らしに小説を書いてみました。不定期で投稿するので気が向いたら読んでみてください。
「お前クビな」
そう言われた瞬間俺は頭が真っ白になった。
10年も身を粉にして働いてきた会社なのに終わりはなんともあっさりしたものだった。
営業成績も決して目立って良かったというわけではなかったが最近では重大な案件も任され、少なくともでは中の上だったはずだ。
「なんでクビなんですか?」
と、俺は言った、というより身体全体に言わせられた。
「うーん、10年間働いてきた君には感謝してるけどね、ウチの会社は数年前から不景気で人件費を削除しなきゃいけないからこうするしかなかったんだよ。」と社長は目を逸らしながらドスの効いた声で言った。
「わかりました。」と俺は言った。「いきなりクビは酷くないですか」とか全力で粘ればあと一か月はここに入れたはずだ。だが俺がその選択をしなかったのはそれは単なる先延ばしで、その間になんだかんだ大好きだった会社が嫌いになってしまうのが怖かったからだ。俺はその場を後にして近くのトイレに逃げ込んだ。家に帰っても自分が惨めになるだけとわかっていたからだ。とにかく今は何も考えたくないその先のことも、今のことも。
1時間後、大きな笑い声で目が覚めた。どうやら体全体の力が抜け、眠ってしまったようだ。社長とその幹部が何か話している。「いやぁ〜社長も悪いですね。自分の友達の佐藤くんをを入社させるために、花森くんをクビにするなんて。でもなんで営業成績のいい彼をクビに?」と幹部が言った。「彼は無駄に勘が鋭いからな。万が一俺が佐藤から金をもらって入社させてることに気づいたら彼、生真面目だし本部の方に報告するに違いないからね。あらかじめ手を打ったまでよ。」と、社長が言った。
俺は怒りで手が震えていた。初めて他社から契約を勝ち取って言われた「君は才能あるなぁ、ずっとこの会社に居てくれよ」という言葉は表面だけの軽薄な言葉だったのだ。その言葉を自信にして10年間身を粉にして働いてきた自分を社長は所詮道具としか思っていなかったのだ。この事実は今まで社長を尊敬してきた俺にとって大いなるショックを与え、どうにかして社長を地の底に突き落としたいと考えさせた。そこで俺は一つ妙案を思いついた。「俺が世界に通ずるインフルエンサーになって全世界に社長の悪行をばら撒こう。そして社長を一歩も外に出られなくしてやろう。」俺は一つ深呼吸した。
こうして花森我田 (35)の下克上がはじまる。
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