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少女サクラの刀剣日記  作者: 小脇 進(こわき すすむ)
第一部【少女サクラ編】
2/5

第1話「都会暮らしの少女」

ボーン、


ボーン、


ボーン。




みゃあ、


みゃあ、


みゃあ。










ポートタウンの港から、船が出航した。

船のそばで、やかましく海猫が鳴いて飛んでいる。


大都会のポートタウン。


外の世界へ旅立つように、船は港から離れていった。


桟橋に留まっている、鳥が飛び立つ。

そいつは、港から北にある市街地の上空を飛んだ。



街の中心から商圏が広がる。

その様子を鳥はうかがっているようだった。


一本のある通り。

駅へと続くその通り。


一人の少女が駅の方へと走っていた。

駅から出てきた、これから仕事がはじまることを想像している群衆をかき分け、

少女はホームへと駆けていく。



・・・・・・。



鳥はその様子に飽きたのか、

港の方へと引き返して飛んでいった。

少女は走り続けていた。



「ハァ、ハァ、ハァ・・・」



息が切れそう。


朝の通学時、駅のホームにて。

高校生の少女、サクラは電車に乗り遅れまいと急いでいた。


肩を越えて伸びたロングの黒髪。

冬服の厚手のセーラー服に身を包み、

胸元には赤いスカーフを身に着けている。


黒い瞳。

潤んだ瞳。

細く垂れ下がった眉毛。


髪をまとめる、細いリボンの付いたシュシュを身に着け、

それが揺れている。


階段を駆け上がり、ホームから降りてくる乗客をかき分けていった。


その時、

相手の肩にぶつかったけど、黙ってそのままやり過ごそうと思った。

発車しそうな電車に乗り込もうとする。



「おい、ぶつかっておいて立ち去る気かよ!」



まずい。

ぶつかった相手は、サラリーマン風のスーツ姿の男だった。

がんつけられている。


電車は発車してしまった。

ホームを滑り出す。


男はイライラしているようだった。

我慢が出来ずに怒鳴っているのだろうなとサクラは思った。


サクラはおどおどして立ち止まる。

見ると、この男はかなり怖かった。

顔が上げられずに、しっかりと目を見ることが出来なかった。

体は固まったように動けなくなる。



「なんだよ、謝りもしないのか。たくっ、これだから最近の高校生は」



サクラに近寄って、上から目線で大声だった。

かなり怒鳴っている。

男の表情は血管が浮き出そうになるくらい、クワッとした顔なのだろう。


男はくどくどと言い始めた。

最近の高校生はなってない。

そのことがサクラは気になった。

多分、気にくわないことに出くわすと、正さずにはいられない性格なんだろうなと考えた。


いい加減に解放して欲しい。

そう思っていると、胸のあたりがギュッと締め付けられる。

頭の中は真っ白に近くて、神経が緊張状態だった。

耐えられなくて、膝を曲げて床にしゃがむ。



「おい、そうやっていれば済むと思っているのか?」



まだ説教を続けるのか男の口調は早くなり、より強くなっていた。

男は周りのことなど気にしていないかのように、話を続ける。


サクラは床のタイルを見て、聞こえないように重い頭の意識を感じないようにした。



「ちょっとやめなさいよ、悪気があってじゃないんだから」



助かった。

そう思った。

もう辛くて駄目そうだった。

サクラは顔をあげて、視線が上を向く。


制服を着た背の高い女の子が、男に近寄って説教を止めさせた。

男はキョトンとしたが、すぐにこの女の子に言い放つ。



「俺はこいつに話しているんだ。口出しするな、女が」



暴言だった。攻撃的な口調。

それでも女の子は怯んでいなかった。



「ふん、男のくせに女に威張るなんてミットモナイわね」



「なんだと!?」



サクラは二人が口ゲンカを始めたのを見ておろおろする。。

暴言を吐いた男に女の子は反応してやり返した。

男はそれにキレて、発狂し始めた。


ついに女の子の言い方にキレたのか、男は殴りかかった。

こぶしをつくり、大きく振った腕だった。


サクラは驚く。

釘付けになった。


女の子が男を背負って投げた。

男の体が女の子の頭を通過するように、前に飛ばされる。

腕はつかまれ、バンザイのポーズで床にたたきつけられた。


しばらくして、駅員と警官が駆けつけた。

しゃがんでいたサクラは、駅員に声をかけられ、心配される。

「立てますか?」と聞かれて、「はい」と答えた。


※※※


駅の事務室で、警察官に事情聴取される。

一応被害者だからかいくつか質問されて、最後に「被害届を出しますか?」と言われた。


サクラは「別に大丈夫ですので」と言って断った。

小一時間してサクラは解放される。


事務室を出たところでため息をついた。

辛かったのが解放されたのだった。

災難にあったと感じる。


駅の建物を出ると、自分の体が震えているのを感じた。

男が怒鳴っているのを思い出して、怖くなったのだろうか?


サクラは学校へ向かうために駅を離れた。



【続く】

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